Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

怖い話

変な目つき

電車に乗って帰宅するつもりになっている。なぜか伯父さん、伯母さんと一緒に。「あんたによく似た顔の人がいるぞ」冗談好きな伯父さんがこっそり教える。針金のように痩せた若い女で、目つきが変。こんな顔に似ていたら愉快になれない。「目を合わせちゃだ…

悪い夢

まるで悪い夢のようね、と女は思った。眠っていたところを男に襲われたのだ。寝室は暗く、男の顔さえ見えなかった。あるいは寝室ではなかったのかもしれない。寝室には内鍵をかけておいたはず。少なくともそこはベッドの上ではなかった。男の筋肉は硬くて強…

人を縫う

ぼろクズのような老婆がもの申す。「やれやれ。人を縫うのは大変じゃ」かたわらには、頼まれもののあちこち傷んだ人の山。 Sewing a PersonAn old woman like a rag."Yeah. It's hard to sew people."Beside her, a mountain of people who were injured her…

お化けが出るぞ

霧雨降る中を傘を差して歩きまわっていた。畑や寺の境内を通り過ぎる。アスレチック施設のような困難な道が続く。背後から口うるさい老夫婦が迫ってきた。「お化けが出るぞ。すぐに出るぞ。もう出たか」耳が遠いので大声になるのだろう。幅が狭いため道を譲…

病魔退散

天井から細長くて毛深いものがぶら下がっている。ある種の猿の尻尾のようにも見える。それを見上げる臨月の妊婦。震えながらそれに手を伸ばす。女はそれに喰らいついた。実際、噛み切って飲み込んでいる。それによって病魔を退散させるつもりらしい。自分は…

夜の窓

実家の二階で探し物をしていた。 ただし、何を探していたか忘れてしまった。 夜になり、窓の外は黒い闇。 その窓ガラスに子どもの顔と手が映った。 最初は男の子で、続いて女の子。 どうやって二階の窓辺に立っているのか。 いっこうに逃げる気配がない。 声…

突風の街

オフィス街らしき景観。 どこかへ行くつもりで歩いていた。 なにやら不穏な気配がする。 そして突然の強風。 街路樹の樹冠が一瞬のうちに吹き飛ばされた。 しかも、残った枝に火がくすぶっている。 なんだこれは? ありえない。 悲鳴が聞こえる。群衆が騒ぎ…

殺人注射

社内旅行で泊まった旅館にてクラスター発生。死体のような皮膚の色になった者が数名。言動も怪しく、ほとんどゾンビ。組織の一員として予防接種を受けねばならない。しかし、その予防接種が病原ではないか。白人男性の医師が入室。おもむろに注射器を取り出…

災害の接近

屋外で誰かと話をしていた。見上げれば、ありふれた曇り空。やがて、地平線近くの空の異変に気づく。灰色の雲の下に黒い筋が幾本も見えた。竜巻に似ていた。滝のように降り注ぐスコールの群か。さらに広範囲な火炎も見えた。落雷による山火事か。とんでもな…

ありえない声

浅い眠りから覚めたばかり。自宅の寝室、布団の中にいる。暗いので夜だろう。ただし、まだ目は閉じたまま。そして、女の声がした。「起きなさい」そんな台詞。聴き慣れた声だった。けれど、ありえない声だった。その女はこの世の者でない。つまり、すでに亡…

毒道場

仙術や呪術などを研鑽する道場があった。蠱毒(こどく)のような動物の虐待も行われていたらしい。若い女に毒饅頭を与え、いくつまで耐えられるかそれを調査する試みに参加したことがある。くだんの女は色と形から饅頭を選別する。いずれも毒だが、食い合わ…

森田

おれは疲れていた。気分もすぐれない。毛糸の帽子をかぶり、道端の段差に座っていた。少し離れた場所、似た帽子をかぶった男が立っていた。細くて長身。黒いサングラスを掛けている。「あれは森田じゃないか。切れると危ない奴だ」近くにいた誰かの囁き声が…

物置の幽霊

その学校は古い木造校舎。体育館の正面は壇になっている。向かって壇のすぐ左側は小さな準備室。右側は大きな物置部屋になっている。体育で使うマットや跳び箱などが置いてある。裸電球と小さな窓があるくらい。暗くて、ちょっと怖い。大きな物置部屋の奥に…

交差点の幽霊

行き交うクルマの群をぼんやり眺めていた。交差点では冷たい夜風も交差する。信号待ちにはつらい季節だった。赤と青の手袋をはめ、黄色い毛糸の帽子。両手をあげれば信号機である。それでも寒くて仕方なかった。見ると、足元に花束が飾ってあった。最近、交…

蛇の子

私たちの新婚旅行は国内登山でした。私と妻とは山で知り合ったのです。登山ルートは新婦の希望に従いました。ふたりだけで山小屋に一泊。真夜中、私は目を覚ましました。新妻の苦しそうな声に起こされたのです。あたりは真っ暗で何も見えません。妻は悪夢に…

害虫駆除

田舎の田んぼで稲刈りを手伝っている。なのに、左手でつかんだのは稲でなかった。胎児の形に折れ曲がった大きなトンボ。オニヤンマと思われる。(オニヤンマ、こんなに大きかったっけ?)ともかく、稲に群がる虫を駆除するのが俺の仕事。すでに死んでるオニ…

8人の子ども

知人が録画したビデオを観ている。小学生の遠足のようなイベント。このビデオが学校で話題になったそうだ。登場する子どもの人数が変なのだと。男女8人のグループが目的地を目指す。途中から自分もメンバーの一人になった気分。男の子が何かを見つけて道路…

羽音

部屋の仕切りの向こう側、廊下で物音がする。「バタ、バタ、バタ」夕暮れで暗く、ぼんやり見える。大きな蛾が一匹、床の上で暴れていた。手もとに鋏があった。その刃の部分を逆手につかむ。丸い柄の部分で蛾の背中を押す。少し凹んだが、まだ蛾は動いている…

魚の肉

谷川で釣った魚を持ち帰ろうとしていた。名も知らぬ大きな青白い二匹の魚。「その魚、喰っちゃなんねえ」ひとりの貧相な男が現れた。地元の村人だろうか。「その魚の肉を喰うとな、腹の中で生き返って 内臓を喰い破って出てくるだよ」本当だろうか。まさか。…

ガラスの包丁

オカッパ髪の姉と争っている。それぞれ包丁を持ち、相手の包丁を奪い合うゲーム。あからさまな殺意を姉から感じる。決して遊びではない。今回、たまたま姉から包丁を奪えた。だが、安心できない。それは透明なガラス製なのだ。金属製の包丁と斬り合えば割れ…

立ち塞がり

遺産を分けた兄弟姉妹が実家に集まる、という。それで私も帰郷したらしい。真夜中、勝手知ったる実家の間取り。灯りも点けずに手探りで部屋のドアを開ける。すると、立ち塞がるように人の気配。実際に触れてしまった手や胸の感じからしてすぐ目の前に誰かが…

見えない幽霊

やりたいことが思い浮かばないからといって 眠くもないのに眠ろうとしてはいけない。たとえ読書で目が疲れていたとしても。修学旅行における宿泊施設の夜なのか 大勢の仲間と一緒に広い部屋に寝ていた。眠れず、起きて立ち上がる。同じく眠れない誰かと一緒…

跳び箱

込み入った駅の地下通路にいる。乗り換えの途中、道に迷ったらしい。改札の前に路線図が表示されてあった。まるで円形の迷路のよう。とりあえず、隣駅まで行かねば。ホームと線路のサンドイッチ模様が続く。なぜか草木が生えている。いけない。電車が来た。…

小さな家

老いてしまって どうにもならなくなって 誰かに相談したら 小さな家を紹介されて それは分譲住宅の集落みたいで 月々の支払い額が決められてあって ひな壇みたく斜面に並んで建っていて どの家も小さくて どの家も黒っぽい灰色で まるでそのまま墓地になるみ…

カーテン越し

男三人がひとつ部屋にいる。そのうちの一人がおれ。カーテンで仕切られた区域内においてそれぞれ担当する仕事をこなしているようだ。それにしても、眠い。作業を続けられる状態ではない。椅子に座ったまま休息したいが、眠れない。たとえ布団はなくても、床…

監視ソフト

彼女は常に監視されている。監視ソフトと監視システムによって。その証拠のように、目の前にあるモニターには彼女に関する行動データがリアルタイムで表示されている。今どこにいて、何を食べ、何を買い どんな服装で、誰と一緒か、すべて筒抜け。遠目ながら…

空気感染

新宿駅前を連想させる広場。大勢の群衆が右往左往している。そのうちの一人として歩く。誰かの声がした。「さあ、ご覧なさい」見ると、数人の異様な人物。全身が白っぽい緑色。青銅にチョークの粉をまぶしたよう。編集ソフトで画像加工したみたいな感じ。実…

欄干の上の重心

大きな川の上に架かる橋の欄干の上に立っている。なかなかに高い。なぜか右手を高く上げ足もとから続く棒のようなものを押さえている。目の前、遠くに都市の景観が見える。夕暮れ時であろうか。そこの都市にいるはずの親しい誰かとテレビ電話のようなもので…

無明

ひとり夜道を歩いていた。 妙に暗いな。 街灯、こんなに少なかったっけ? 交差点の近くまで来た。 おかしい。 信号灯が見えない。クルマの通過する音がする。 なにも見えない。 真っ暗闇だ。目を閉じているわけでもない。 危険だ。 引き返そう。やがて景色が…

帰らぬ姉

田舎の姉が行方不明だ、と連絡があった。現在もまだ帰宅していない。そのように新聞だったか雑誌の記事にも載っていた。どうして芸能人みたいに姉が報道されるのだろう。目を閉じて寝ながら不思議に思っていた。ふと気づくと、目の前に姉の姿があった。「な…