Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2010-10-18から1日間の記事一覧

花火

君が花火を見たいというからふたり高台に登ったんだ。花火なんか見たくなかったけどじつはたくらみがあったから。君を花火を見る君を見たくて。君は浴衣姿裾が風になびくはず。夜空の花火は君の頬を照らすだろう。無邪気な横顔を七色に染め白痴みたいに手を…

影踏み

影はなんでも知っている。ひっそり隠れた耳たぶ。観察する切れ長の目。ほくそ笑む薄い唇。影を葬ることは誰にもできない。昼間どんなに明るくても影は皮膚の内側にも潜むから。「ほら、影を踏んだぞ!」息を切らして男の子が叫ぶ。「嘘よ。踏まれてないわ」…

冷たい雨の夜に

冷たい雨の夜に 君と もつれ合って階段を降りる 「脇腹にナイフが刺さっているわ」ふたり 思わず笑ってしまう 見えないはずの流れ星が 君のサングラスを 斜めに横切る 「願い事、かなったね」ふたり なんとなく黙ってしまう 遠く近い雷鳴 あれは 銃声に違い…