Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

ひどい話

怒りを突き刺す

実家に親類が集まっていた。ある道具のことで母が従兄に礼を言う。透明の容器の中に透明の液体が入っている。用途は忘れたが、おれが持参したものだ。「これはおれが買って持ってきたものだよ」だが、母は納得しない。しばらくしてまた蒸し返す。「あれを用…

九連環

仲間のひとりが不良グループに殺された。足の悪い男で、ふくらはぎにピンポン玉が通るほどの穴。その穴に紐と棒をくぐらせて知恵の輪にしていた。仲間の悲しみと怒りが渦巻く。俺たちは不良グループに復讐するつもりだ。「おまらの骨で九連環(チャイニーズリング)…

お客様へ

お客様へ申し上げます。いい加減にしてくださいませ。我々にも限度というものがございます。お立場を笠に着ての強要はご遠慮ください。お立場をなくされた場合、大変恥ずかしい想いをいたします。我々は好き好んでお客様を接待しているわけではございません…

うっちゃり

ものすごく強くて残虐な力士がいた。 なぜか路上で相撲を取っているわけだが その力士は対戦力士を持ち上げてから落とす。 ボールのように地面で弾ませる。 それを何度も何度も繰り返す。 対戦力士の悲鳴と苦悶の表情。 足腰の骨という骨はすべて砕けたはず…

薄皮一枚

害虫を駆除する装置を作ってみた。叩いてつぶす棒である。ただし、まだ調整が済んでない。なのに一匹、もう害虫が姿を現した。ならば、装置を使ってみるしかあるまい。実際、それで叩いてみた。だめだ。完全につぶれない。薄皮一枚はがれただけ。逃げてしま…

大物の末路

階段を囲んだみたいな縦長の旅館。合宿なのか、大勢の若手芸人たちが宿泊中。部屋に突然、大物芸人が入ってきた。かつらを被って、演技なのか酔った様子。「君たち、もっと塩を食べなさい」食卓の鍋の中に白っぽいものを投げ込む。いくらなんでも入れ過ぎだ…

マシンガン

教室らしき部屋の中にガラスの花瓶が並ぶ。我が手にはマシンガン。当然そうするものとして発砲する。派手に砕けて飛び散るガラスの破片。じつに爽快。やれ楽し。室内を破壊し尽くし、隣の部屋へ向かう。ガラスの容器や窓や家具が並んでいる。迷いもせず連続…

庭木の伐採

寝室の窓から近所の幼い女の子が侵入。窓際に置いてあったゴルフボールを拾い上げる。私もそれを検分する。ゴルフボールにしては意外と重い。どうやら開いた窓から転がり込んだらしい。「ボールが見つかって良かったね」外へ戻る女の子を見送る。掃き出し窓…

感染調査

倉庫のような施設に到着した。インフルエンザの感染調査のためらしい。白っぽくて殺風景な部屋に入る。曲がった人の列が三本できている。平行でも直線でもなく、間隔が空いている。分離したばかりの染色体を連想する。診察しているのは白衣を着た白人女医だ…

たかが知れる

おらおら。おまえらに言うておくぞ。たかが知れるんだよ。おまえらのやってるこたあ。そこそこ面白いとしてもだ。結局やってるこたあ、お約束。得意そうにたまご産むニワトリさね。それも無精卵のな。狭いゲージん中、いきっとるだけやんか。想定内。おりこ…

コウモリの糞

診療室または研究室を連想させる白っぽい内装。これから実験を兼ねた食事が始まる。白衣を着た白人女が私の薬を調合する役目。「はい、用意できたわよ」飲み物を用意してくれたようだ。それを飲む前に友人の男が成分を調べてくれた。「コウモリの糞だね」つ…

苦言

誤解されると困るが、あんたらに興味はない。あんたらの話にも興味持てない。熱く語られても鬱陶しいだけだ。あんたらは夢中で語るが、こっちは退屈。どこぞで耳にしたよな話ばっか。こちとら、あんたらより人生長いんだ。似たよな苦労なら、ほとんど経験済…

爆発事故

鉱山のガス爆発事故があったそうだ。または予測されているらしい。共産主義スパイによるテロ行為であろう。国家中枢にまで入り込んでいると言うではないか。そのあったかなかったかわからない爆発事故の対策と処理について頭を悩ませている。読んだばかりの…

溺れかけ女

「誰か助けてー!」川で女が溺れかけていた。通りがかった男が橋の上から川へダイブ。苦労の末、女を救助した。「ありがとうございました」川原に上がった女は感謝の言葉を述べた。「でも、あんなに強く引っ張ったから」女のお気に入りのブラウスが破れてい…

抗議宣言

勝手に決めつけないでくれ。なんで今さら学校へ行かなきゃならんのさ。義務教育なんて、まったく腹が立つ。親の義務であって、子どもにとって権利。子どもの義務ではないはずだ。勝手に押しつけないでくれ。もっと遊びたいのさ。やりたい勉強だけをしたい。…

素敵な息子

頭も性格も悪くてかまわない。とにかく顔の良い男を恋人にする。贅沢は言わない。父親がハンサムなら、その息子だってきっとハンサムになってくれるだろう。誰もがウットリする素敵な息子。幼い彼と仲良く散歩する笑顔の私。そんなスナップ写真が目に浮かぶ…

村の祭り

この村を出よう、と男の子は思った。この村はおかしい。祭りになると村人たちの気が触れる。夜明け前から祭り囃子(ばやし)が村に響き渡る。老若男女、犬猫牛も鶏も踊り出す。酔っ払い、裸で案山子(かかし)と踊り出す。手を取りあって林に入る若い衆と娘…

野草料理

仙人になり、霞(かすみ)を食べて暮らしたかった。だが、仙人になる方法がわからない。それに、町には霞も漂ってない。昔、退職して絵の個展を開いたりしていた頃。しばらく働く必要はない。だが、絵や文章が売れる見込みはない。やがて貯金がなくなるはず…

白い靴下

死んでしまった。殺すつもりなかったのに。ちょっといたずらしたかっただけ。ちょっといじめてみたかっただけ。我慢できなかったんだ。あんまりかわいらしくて。あんまりあどけなくて。もう動かない。もう息さえしない。あんなに暴れたくせに。あんなに泣き…

戯言

狭い道にキチガイ爺じじいがいた。スーパーへの買物の途中だった。「ああ、そうだよ。そのうち領土を盗られるよ」痩せた老人が独り言をつぶやいている。どうやら右翼ヘイトの残党。こういうのは無視するに限る。そいつの横を通り過ぎ、よそ見してたら「キョ…

間引き

上階の住人のいびきがうるさい。同じ部屋なら眠れないレベル。いびきを止める方法はないか?検索して調べてみる。簡単かつ完璧な方法はなさそう。迷惑この上なし。居なくなればいいのに。いっそ死ねばいいのに。間引いてしまえ。いや、マジで。死によって解…

仮想近未来

とうとう未来に追いついた。仮想現実において卓球ができる。汎用ゴーグルと専用ラケットさえあれば世界中の人と卓球の仮想対戦ができるのだ。もちろん人工知能との対戦も可能。こうなったら、もうなんでもありだね。チームを組んで仮想サッカーだってやれる…

とっちめてやる

マンション前の歩道にルール違反のゴミが出された。それも、紙の資源ゴミばかり大量に。決められた曜日に決められた場所に出せばなんの問題もないのに、なぜ無視するのだ。「まったく困ったもんだね」去年亡くなったはずの老母が嘆いている。「そのままにし…

不審者 現る

固定電話が鳴った。「あのですね、今、変な人が来て」古いマンションなので水道を調べたい。と、家の中に入りたがる男が現れたそうだ。なんだ、そいつは?取り急ぎ、現場へ向かう。入室を断られ、階上へ行ったそうな。階段の上から言い争う声。ジャージ姿の…

竹の物指

天井に照明が一つ、他は闇。白色光だが、あまり光量はない。蛍光灯ではなく、発光ダイオードかも。その光に誘われ、一匹の虫が飛んでくる。大きな毛深いハチのよう。なぜかおれは片手に竹の物差を持っている。それを振って虫を叩き落とそうと繰り返し試みる…

軍事演習

軍隊にも文化祭や卒業式があるらしい。あるいは士官学校とか防衛大学の話かも。ともかく軍事演習みたいなイベントがあった。匍匐前進、実弾射撃、戦車への突撃。銃器類が展示され、戦闘機が空を飛ぶ。その男は英雄と呼べる立派な男であった。ところが、突撃…

茶番プレゼン

広い会議室でテーブルを囲みある企画について提案している。私は単独のようだが、お客は数名。他に対抗グループも同席している。私のプレゼンの途中なのになぜか対抗グループのプレゼンが割り込む。お客の質問によって流れが変わったようだ。しばらく彼らの…

あなたがたへ

あなたがたは昔の話ばかりするのですね。よりによって今。けれど、問題は昔ではありません。今この時です。今この時に何をすべきか、です。だから昔の話ではなく、今の話をしましょう。あなたがたが今やっていることはなんですか。いやがらせではありません…

ご乱心

毛だらけ汗まみれの尻を舐めてしまった。その舐めた感触はともかく舐められた感触からして自分の尻に違いない。とんでもない気分。鏡も使わず自分の後頭部が見える。誰のものかわからぬ内臓の温度まで感じられる。「ああ、死んじゃう。理性が死んじゃう」あ…

スプレー缶

同好の仲間たちが集まる部室。スプレー缶を顔へ向けて発射してはならない。そんな話を同好の誰かとしていた。すると、そのうちの一人が「こうするのか?」と実際にスプレー缶をこちらへ向ける。「冗談はよせ。バカ、やめろ」制止させようとするが、そいつは…