Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

木枠の中

その男は白髪であるが、ほとんど坊主頭。老人と思われるものの、表情は若い。彼は木枠の中に納まっている。出入り口から壁とドアを外した感じ。大きなボールを腰で一度弾ませ、続いて木枠と頭頂の間に挟んで止める。この一連の流れを三回ほど繰り返す。その…

黄色いサンダル

チャリティ展示ショーなるものが開催された。 おいらの作品も展示されているのだそうだ。それで早速、黄色いサンダルを履いて現地へ向かった。改札を通り抜け、駅ビルの中を進む。途中、芸大の先輩に出会った。「お前の作品は一つしかなかったぞ」そんなはず…

球拾い

どこぞのグラウンドで野球の練習中。隣の敷地からテニスボールが転がってきた。それを拾い、隣の少年に投げ返す。そこに打球が二つ飛んできた。ほぼ同時に左右の素手でキャッチ。女子ピッチャーに投げ返す。彼女の健康そうな体格と笑顔がまぶしい。おれの野…

ほどほどに

おいおい。あんたら、なにやってんだ。健康志向も大概にせいや。下手に長生きしたって迷惑になるばかり。適当に生まれて適当に亡くなりゃいい。それで世間はバランスを保っておる。税金じゃぶじゃぶ使って余計なことすんな。経済を不健康にしてどうするつも…

ケーキ職人

ケーキ屋の女職人がケーキを作れなくなった。詳しくは教えてもらえなかったが どうやら小麦粉アレルギーになったようだ。それで親方に説得され、おれが復帰することになった。しばらくケーキを作ってないから自信ない。そもそも甘い食べ物は苦手である。おれ…

後ろに倒れる

関係者各位を招いて社内で会食の最中。ささやかな表彰式などもあり、お祝いイメージ。おれはイスを後ろに傾けていた。教室なんかで生徒がよくやる、あれ。そして、やりすぎて後ろに倒れてしまった。背中と後頭部が絨毯の床に当たった。かなり大きな音はした…

怒りを突き刺す

実家に親類が集まっていた。ある道具のことで母が従兄に礼を言う。透明の容器の中に透明の液体が入っている。用途は忘れたが、おれが持参したものだ。「これはおれが買って持ってきたものだよ」だが、母は納得しない。しばらくしてまた蒸し返す。「あれを用…

割り箸セット

久しぶりに客から注文が入った。あいにく在庫切れだったので町へ出かける。わざわざ作るなんてとんでもない。手持ちなければ市販品を買うしかあるまいて。昔風の商店街を歩いて探しまわる。納得できる品質の割り箸セットを手に入れた。これを包装して客に発…

下着姿

大学病院みたいな建物の中にいる。しかも裸で廊下に。幸いにも人目がない。教室または倉庫のような部屋に急ぎ戻る。下着を身に着けたところで振り返る。外来患者らしき老人がふたり立っていた。続いてドアが開き、白衣を着た女が入室。なにやら事務的な説明…

電車で干す

電車の中、開かない側の扉の前に立っていた。手持ちの紙バッグの中が気になる。手探りしてハンガーとTシャツを取り出した。物干し竿(ざお)みたいなものが目の上にある。しからばここに干そう、と考えた。ところが、見知らぬ若い女が近寄ってきた。「ちょっ…

滑走路から出題

滑走路みたいに奥行きある場所。前方、少し離れた位置に知る人ぞ知る、ある有名人が立っている。彼は舗装された地面に線分を引いたり数字を書いたりしつつ、何か言いたそう。おいらの隣にいた女の子と目配せなんかしている。それで、なんとなく納得する。は…

電動車イス

病院で診察を受けている。どうやら眼の手術をせねばならんようだ。「データはそろっているので安心してください」女医の遠隔操作でベッドが起き上がり、そのまま電動車イスになった。車輪が勝手に回転して診察室から廊下に出る。自動運転で入院中の病室に戻…

ワープ飛行

ある男が先導する旅の一団に同行する。ワープ飛行の能力を買われたのだ。それほど距離を稼げるわけではないが一瞬にして空間移動できる。小さな山や川くらいなら飛び越せる。ただし、体を冷やしてはいけない。筋肉も飛行距離も縮こまってしまうから。「だっ…

オフで会う

自宅でパソコン画面を操作していた。ネット上の知人女性に合図を送る。「大丈夫かな」オフで会う約束をしていたのだ。すぐに彼女の声。「うん。大丈夫だよ」「それじゃ、うちに来てくれるかな」「いいとも」すぐに玄関のチャイムが鳴った。やたら早い。こん…

トレーの目

人物画の目の部分を描きながら関西の知人女性と対話している。「好意的な手紙ならいくつかもらいましたけど」「でも、好意的と見れば見れなくもない程度だろ」続いて、発泡トレーをカッターで切りながら定規またはしおりのようなものを作り始める。そのうち…

変な目つき

電車に乗って帰宅するつもりになっている。なぜか伯父さん、伯母さんと一緒に。「あんたによく似た顔の人がいるぞ」冗談好きな伯父さんがこっそり教える。針金のように痩せた若い女で、目つきが変。こんな顔に似ていたら愉快になれない。「目を合わせちゃだ…

たとえば

救急車が交差点でアナウンス。「人を殺します。ご注意ください。」聞きまちがい?電話が鳴ったので受話器を取る。「現在、この電話番号は使われておりません」ああ、そう。 For ExampleAn ambulanced announces at an intersection."Kill people. Please be …

問題ない

私の作品は完成している。それはもはや私の問題ではない。それでも問題あるとすれば それはつまり、あなた方の問題なのだ。 No ProblemMy work is complete.It's no longer my problem.If it's still a problem, it's your problem.

天然AI搭載車

老いてわかったことがある。我々は天然AI搭載車に乗っていたのだ。すべて自分で制御していたつもりだったがじつは自分で制御していたのはほんの一部だった。オートマ車とマニュアル車の差どころではない。放っておいたら大変なことになってしまう。座り続け…

スパイ放送

先の世界大戦中の話。ドイツ人スパイがフランスのテレビCMに出演。彼は流暢なフランス語で商品説明をする。影絵のような画面が揺れ動く。戦後になり、再び彼が同じテレビCMに出演。今度は流暢なドイツ語で商品説明。なのに、それを視聴する私には違いがわか…

三人の王女

城の中に三人の王女が幽閉されている。この国の同盟国または属国の人質と思われる。城外には絶対的な立場の王がいる。ゲームのプレイヤーに相当する。城は長方形または直方体になっている。城の中には三角形または三角錐の部屋がある。これら部屋は変形した…

セルフ食堂

知人が経営する食堂で食事。従業員がふたり、客は私の他にいない。豆腐など一皿200円の料理をテーブルに運ぶ。さらに缶ビールもセルフで運ぶ。雑な方法で仕入れたか、缶の表面が傷んでいた。これでは商品になるまい。傷口からビールがこぼれるので、飲みなが…

それはないだろ

旅館の大部屋で眠ったふりをしている。女の子の胸に手が触れているから。近くで別の女の子が妙な動きをしている。どう見ても自慰ではなかろうか。さらに隣では、男女で抱き合っていた。抱かれてる相手はおれが惚れた女だった。信じられない。非常識な男だが…

財布で殴る

歩道に敷かれたゴザの上で寝ていた。周囲には近所の住人たちが座っていた。どうやら村祭りのようだ。車両通行止めの車道を進む踊り手の群が見える。ちゃんと眺めたくなり、上体を起こす。その時、不審な男が近くの荷物を持ち上げた。おれはその荷物を奪う。…

へっちゃら

ぜんぜん大丈夫。あたし、へっちゃら。ちっとも気にしてないよ。だって、最初から期待してないもん。そんなもんだって思ってるもん。そうなの。とっくに諦めてんの。そういうの、あたしには無理。疲れるだけだよ。できないことはしない。やれることをなんと…

異星人の侵略

異星人が地球に潜入したという。我々の理解が及ばないなんらかの方法で若い地球人を異星人に改造してしまうらしい。おれはそれを阻止すべく行動せねばならん立場。アパートの二階の廊下で嘔吐する男の子を横目に見つつ、おれは外に飛び出した。同じアパート…

ドアの内外

狭い個室に入る。ドアを閉め、内鍵をかける。外からドアをノックする音。入っているという意味でノックを返す。すると、女の声がした。「ノックでなくて、声で返事してもらえますか」ためらいつつも自信をもって「入っています」それで女は引き下がったよう…

ダンス三昧

サルサがなにさ マンボでなんぼ ブルースざんす レゲエがすげえ ズンバ サンバ ジルバ ルンバ ツイスト ポルカ マズルカ ジェンカ ジャイブ ワルツ メレンゲ バチャータ パソドブレ ヒップホップ フラダンス ベリーダンス ロックンロール チャールストン ビ…

旧札で支払う

旅館の食堂にてハンバーグを注文した。その料金を旧札で支払わんとする。若いウェイトレスは戸惑う。おそらく生まれて初めて見たのだろう。旧札の価値やら肖像画人物の業績とやらを噛んで砕いて口移しするかのように説明する。なんとか食事を終えて食堂を出…

ドアノブ

「なにしてるのよ。やめなさいよ」「そっちこそ、手を離しなさいったら」ドアを挟んで女がふたり、開ける開けないの攻防をしている。彼女たちがつかんでいるドアノブ、その色も形も男性性器にしか見えない。「おい。やめろよ」つい声をかけてしまった。ふた…