Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

危険は消せない

全体を偏(かたよ)りなく総合的に対処できるかという問題ではないかと思うのだ。起こる可能性は極めて低いながらも実際に起これば危険な物事は山ほどある。いかにも起こりそうな危険ばかり目の敵かたきにして その被害を徹底的にゼロに近づけんとするは 気…

企画の男

立派な企画書を提出する男ありけり。しかしながら、その企画の実現には致命的な欠陥あること、私は知っている。そもそもこの男、借金しておきながら音沙汰なく、まんまと踏み倒した前歴あり。信用ならぬ。相変わらず、無駄によく喋るし。今回も、世間知らず…

なぜか待つ

夜の事務所で待っている。外は暴風雨。この雨が上がるのを待っている。ところが、じつは人を待っていた。残業終え、皆で帰るなら問題ない。自分だけ先に帰るのに抵抗を感じてしまう。誰か来た気配。照明を消しているので、人物が特定できない。あの人だろう…

組織の女

ある組織に 女ありけり いかほどに 男と決闘するも 睦言(むつごと)をば用いん なんとなれば 身代わりに 妹(いも)や弟(おとと)の入りたるを 富士の高嶺に 雪は降りけん 節操もなし 自作自演。 Organized WomanThere is a woman in one organizationTo h…

かりそめに

いついかなる時の かりそめに 虫の音(ね)うるさき 朝ぼらけ なにがなにして なんとやら 寝ても覚めても 手に負えぬ ざわつく心 なだめても そばがら枕 湿っておじゃる ああ やりきれぬ ええ やってられませぬ はるさんが歌ってくださった! In SlightlyAt …

地図にない山奥

地図を見せながら母が説明している。「ここが柳沢で、ここが登塚でしょ」町会かなにかの役員になったらしい。その役目として、地図にもないような山奥へ 確認調査に行かなければならないようだ。とんでもない、と思う。「そんなの、おれがついでにやっておく…

大きな犬

我が家の庭に熊のように大きな犬がいる。ぼんやりした表情、まぬけな顔。しかし、安心はできない。その気になれば、熊のように襲わないとも限らない。たまたま手もとに輪ゴムと箸があった。そうだ。指に輪ゴムを引っかけ、箸を飛ばそう。そうだ、そうだ。パ…

書くな

読んでくれる相手がいなきゃ書けないというのはおかしな話だ。わかってくれる相手がいないから考えないみたいなもの。だいたいだよ。その相手が想定と違っていたら、どうするの? まあいい。さて、なぜか目の前に原稿用紙がある。こう書かねばならん、許さん…

外向きの電車

電車に乗っている。どうやら帰宅の途中らしい。なぜか座席は外向き。車窓へ顔を向けて座っている。ぼんやり考え事。前を見れば、印象に残らない景色が横に流れる。私は思い出す。「ああ。今、電車に乗っているのだ」と。隣の座席には会社の同僚などもいたか…

変換ソフト

ここに変換ソフトがある。まだ明確な実体はない。それに現物をば入れると なにやら変換されて出てくる。たとえば、虚礼の年賀状なんぞは おそれ多い喪中はがきとして出てくる。取扱説明書は遺言書となり 変な女は立派な紳士に生まれ変わる。便利か迷惑か、一…

戦略の参謀

集団が二手に分かれ、体育館の床にしゃがみ 陣取りゲームみたいな遊びをしている。未踏の広い領域がまだ残っておるというのに どうやら敵はまだそれに気づいていないようだ。皆、手もとのやりとりに夢中になっている。「今のうちに手を打っておきたいものだ…

トトロの歌

庭にいて 花壇があって たくさん子どもたちがいて なぜか敷石に印刷しようとして その上をすぐに素足で拭ってしまって まだ早すぎたのでにじんでしまって つまり失敗してしまって その件で年上の男の人から注意されて 不毛な議論なんかしちゃって 途中でいや…

小学校の高校生

おれたちは高校生らしい。なぜか近所の小学校のグラウンドにいて 右往左往する小学生の集団の中に紛れている。ひとりの活発で魅力的な女子小学生がいて 踊るような足取りでおれたちを案内する。帰宅する前に寄るところがあるそうで彼女は途中、いずこへとも…

監視ソフト

彼女は常に監視されている。監視ソフトと監視システムによって。その証拠のように、目の前にあるモニターには彼女に関する行動データがリアルタイムで表示されている。今どこにいて、何を食べ、何を買い どんな服装で、誰と一緒か、すべて筒抜け。遠目ながら…

選べない

僕 または僕たちは なにかを選ばなければいけないのに なにも選べない。出題用紙の または解答用紙の どこかの空欄に それらしく書き込みたいけど うまく書き込めない。笑われる 非難される。軽蔑される 無視される。そうそう望むようにはならないように で…

老朽化

のっそり自分の部屋を出る。下宿の共同流しで歯を磨こうとする。そこへ、階段横の部屋から男が現れ 私に近寄り、ぼそぼそ呟く。「魚の焼ける匂いがしてたまらない。 この換気扇はすぐ交換しなければいけない」なぜかマンションの隣の号室の初老の男だ。現在…

時間割

女の子と男の子が、お医者さんごっこみたいなことをしている。四角なタイルを横に並べたような列があって なんとなく学校で使う時間割を連想させる。その女の子は、その時間割の左端になったら男の子にいじめられるのは仕方ない、と思い込む。その男の子が、…

置き場所

もらったか作ったか、忘れてしまった。ともかく、いわく言い難い変なものである。使える部品と使えない部品が混ざり それらがさらに土砂の中に埋もれている。捨てるわけにもいかないので、とりあえずどこかに置いておかねばならない。実家の庭に亡くなったは…

カラオケの箱

ここはカラオケボックス。あえて照明は控え目、暗いと感じるほど。数人の昔の友人たちとの再会。飲んで、その二次会のような雰囲気。だが、誰も歌おうとしない。せっかくなので、私が適当に選曲。かつて好きだった歌手の曲をいくつか。すると、なぜか歌入り…

ピンクの水着

ある有名人とゆかりあるという ごく普通の一般人が主催したイベントに潜入。水着姿の若い女が右往左往しているところを見ると 美人コンテストの会場であろうか。そこで話しかけて話が弾んだ、といういきさつから その若い女のお宅にお邪魔している。彼女は悩…

滅多にない

友人に誘われ、とある店に入る。経営者でもある中年のおばさんが店番している。なにやら商品は陳列されているものの 統一がなく、なんの店であるか判然としない。店内の客は少ない。先客がひとりくらいか。「その本の通りになることは滅多にないね」ボソリと…

お好み対局

数人の仲間と旅館に泊った。その中に史上最年少プロ棋士の中学生がいた。彼は折り畳み式の将棋セットを持っている。しかもテーブルの向かいに座っている。せっかくだから対局できないか、と頼んでみる。「ええ、いいですよ」笑顔で快諾してもらい、やれ嬉し…

空中楼閣

どこぞの街を歩いている。鉄橋の一部、その端がすぐ近くに見える。しばらく歩き続けていたら同じ鉄橋の反対側の端がすぐ近くに見えてきた。大きな弧を描いて空の彼方まで続く。川や線路を越えてもいないのに、不思議なこと。不思議と言えば、鉄骨の巨大建造…

見積もり

「見積もりを出せ」と客が言う。偉そうに。「そっちこそ、先に仕様を示せ」信頼の背景が見えんぞ。狐とタヌキの騙し合い。これこれ、狐とタヌキに失礼な。利益率、青天井。数値を無視する者、数値に泣く。 自作自演。 Estimate"Get a quote," the customer s…

敵か味方か

私は逃げていた。手続きに失敗したらしい。舗装されてない道を集団で進んでいる。不意に地震に似た感覚。道の先からこちらへ土煙が迫ってくる。よくわからないが、逃げなければ。私は集団から離れ、道を外れる。途中、わらで作られたランドセルを拾う。なの…

お絵描き工房

家内制工業みたいに流れ作業で絵を描いている。知り合いの女がマーカーで着色している。塗り絵をしているような感じ。前工程として絵の具を混ぜる機械が彼女の隣にある。その機械を制御しているのが私と同僚の男。こちらの手違いで、ある色の絵の具を切らし…

ゲーム大会

とある大きなイベント会場にて 複合的なゲーム大会が開催されている。囲碁と将棋の選手権戦を同時にやるらしい。参加する小学生が練習がてら、多面打ち または多面差しみたいなことをやっている。子どもは意欲があり、結構なことだ。節度もあれば、もっと結…

地下室の残業

地下室で仕事をしている。ちょっと前まで使っていた地下室はただでさえ狭い上、余計な物が多かった。今度の地下室は広いだけでなく、まったく物がない。物がないから夢がある、と言えなくもない。そうこうするうちデスクやら器具も増え いかにもオフィスらし…

鉄パイプ

電車に乗っていた。車窓は暗く、夜でないとすれば地下鉄かも。先ほど見たばかりのシーンを思い出す。透明ビニールの球を棒で叩く曲芸。二人組みの美しい芸人姉妹が演じていた。ふと気づく。開いた窓から一本のパイプが覗いている。何気なく手を伸ばす。つか…

神話の定め

古代より伝わる神話である。迎える神と迎えられる神がいた。迎える神は誰かを迎える立場である。迎えられる神は誰かに迎えられる立場である。ただし、迎える神は誰も迎えに行かなかった。そして誰も、迎えられる神を迎えに来なかった。「ああ、そういうもの…