Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

君のいない部屋

君のいない部屋はとても広くてとても寒くて一緒に飲む約束のボジョレヌーボ毎年買ったりして三年間待っていたけど結局君は戻らなくてそんなのわかっていたはずなのにそんなのわからないはずないのに君のいないこの部屋がかつて君がいた部屋だったとかつて君…

不死鳥

その身は爛(ただ)れ腐り壊死(え し)し 焼かれ灰となれどもその空蝉(うつせみ)が残せし種々(くさぐさ)わずかなりとも代々(よ よ)の巷(ちまた)に残りせば金色(こんじき)の両翼炎の如く持て上げ意識と呼べる無限の虚空(こくう)に虹を流しつ飛翔(ひしょう)せん …

お花見

うららかな 春の日差し 満開の桜の木の下 浴衣姿の若い女 昼寝中 浴衣の裾 めくれてる 胸もと はだけてる 帯さえ ほどけてる 昼寝にしては いとおかし 酔っぱらい 指さし笑う 唇から 紅が垂れ 腹から 日本刀生え 酔っばらい 土に吐く 女の悲鳴 空を裂く 風に…

水の底

ゆれる影絵は 湖に 浮かぶ小舟の 男と女そろいの浴衣 はだけては ほどけて逃げる 蛇の帯舟べり ゆれて 櫂(かい) はずれ ぬらら ぬるらら 沈みゆくどこまでも ああ どこまでも 深い 深い 水の底 「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださった!元「koebu…

見えない恐怖

ここは大きな橋の上。大きな川が下に流れる。私はその橋の片側の歩道を歩いていた。そう、確かに歩いていた。なのに、なぜか今はバスに乗っている。どうやらこのバス、その気になれば 簡単に乗り降りできるシステムらしい。そして私は立ったまま、バスの窓か…

なぜ

みんな、どうしたの? なぜ そんなことするの? こんなことや あんなことまで するなんて。ああ、ひどい! なぜ そんなことするの? なにもしなくていいのなら なにもしなければいいのに。元「koebu」市川健太さんが演じてくださった! Why? What happened t…

変な顔の少女

図書館で偶然見つけた素敵な少女は とても魅力ある変な顔の持ち主だった。どうしてこんなに変な顔なんだろう。きっと異民族の血が流れているに違いない。イスに腰かけて生意気に細い足を組み 絵本を下敷きにして何か書いていた。こんな時、有名人だったらな…

なげやり

ぼんやりしてたら投げ槍(やり)が頭に刺さっちまった。ふん、どうでもいいや。こんなの引き抜いてあっちに向かって投げてやれ。あっ! いけね。頭の方を投げちまった。元「koebu」キッチマン陰惨さんがアレンジして熱演!LazyWhen I was dim, A javelin stuck…

欲しい

欲しい。今すぐ この子が欲しい。拾った雑誌の グラビア写真を見て そう思った。元「koebu」市川健太さんが演じてくださった! I Want Her I wants her.I want her right now. I saw the gravure photo of the magazine I picked up and thought so.

拒絶

手を差し出しても 受け取ってくれない。足を差し出しても 受け取ってもらえない。胸を差し出しても 受け取ってはくれない。腰を差し出しても 受け取ってはもらえない。頭を差し出しても 受け取ってはくれまい。 命を差し出しても きっと受け取ってはもらえま…

渡り鳥

渡り鳥が飛んでゆく 南の空へ二羽三羽四羽 渡り鳥が飛んでゆく 北の空へ一羽一羽一羽元「koebu」宏美(ろみりん)さんが演じてくださった!Migratory BirdsMigratory birds are flyingTo the south skyTwoThreeFourMigratory bird is flyingTo the north sky…

割れた空

おじいさまからいただいた水晶玉。それを汚しそれを傷つけそれを割れば世界が汚れ世界が傷つき世界が割れてしまう。なんということ! 目覚めたらどこにもない。いったい誰が水晶玉を盗んだの? ああ、もう信じられない。こんなに私の肌は汚れてしまった。あ…

割れないシャボン玉

シャボン玉はきれい 美しい球体 ゆれる虹色模様 宇宙の神秘が 見え隠れする ドウシテコンナニキレイナノ? シャボン玉は軽いけど 空気よりは重い 高く浮き上がることなく すぐに割れてしまう まあ しかし シャボン玉だから しかたない いつまでも割れなかっ…

象牙の塔

いい眺めだ。それはそうであろう。そうでなければならんのだ。この崇高なる象牙の塔を築くだけのため罪なき幾億幾万幾千もの象が 犠牲になったのだから 代償もなく。元「koebu」清華さんが演じてくださった!Ivory TowerIt's a good view.That would be so.I…

真の闇

いびつな形に縛られて その肉太の 朱筆(しゅひつ)の責めの鋭さよ。「ああ、なりませぬ」是非もなし。転がされ 揉まれ、落とされ 踏み潰されて 大粒なみだ こぼれます。「泣くとは笑止(しょうし)。 笑止の障子(しょうじ)の鎖鎌(くさりがま)!」ガマの鳴き声 …

空の向こう

手の届かぬ世界がある ということ それは 哀しみばかりでなく 時には 救いにもなる ということ 子どもみたいに 思いっきり 両手を空へ 伸ばしてみる 元「koebu」清華さんが演じてくださった!元「koebu」相模さんが演じてくださった!「さとる文庫 2号館」…

坂道の家

その家は狭い坂道の途中にある。木立に隠れそうな小さな家。屋根も壁も草に覆われている。玄関の扉は施錠もされず かつて住んでいた家族の靴が残る。二階の窓は暗く閉ざされ そこに幼い姉妹の姿は見えない。うつむいて泣いていた妹、立ちつくしていた姉。ど…

ひび割れる

割れる 割れる ひび割れる 足のカカトが ひび割れる クチビル上下も ひび割れる 雨が降らない 雨降らない どこにも降らない 一滴も 大地が割れる 笑顔が割れる 心はとうに 割れている 日々 ひび ひびび ひび割れる「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてく…

生贄の娘

笛や太鼓が 鳴りやまぬ 祭囃子(まつりばやし)の にぎやかさ火の粉 闇を焦がそうが どうもならん若い衆 いかに踊れど なんもなりゃせんかわいい娘っ子 山神様への 生贄(いけにえ)じゃなんのために 生まれてきたんじゃろあげな器量よしで 皆に好かれとるになし…

明日への祈り

空は高く 海広く 大地は緑 どこまでも どこまでも 人の影なし同名の短い器楽曲をBGMに自作自演。 Prayer for TomorrowThe sky is highThe sea is wideThe earth is greenWhereverWhereverNo people shadow

寝姿

藍色(あいいろ)の東(ひんがし)の空の裳裾(もすそ)より 瞼(まぶた)に切れ目を入れるよう 物憂げな夜明けを装いつ 薄紅(うすくれない)に燃ゆる霧の丸帯(まるおび)は 仕留め損ねた大蛇の如く 山並みを避け 谷底を這い 樹林の陰影と絡まりながら もう二度と逢う…

誰か教えて

わからないことの多くは 調べれば知ることができる。調べてもわからないなら 質問すれば大抵は教えてもらえる。自分で確認できる内容なら その結果が正しいかどうかもわかる。しかしながら どうしても自分で確認できない場合 それが正しいかどうか どうやっ…

君の面影

思い出は 過去の影絵その光源 遥か遠く 君の面影 淡く霞む元「koebu」akitoさんが演じてくださった! Your VisageMemories are past shadow picturesThat light source is far awayYour visage is faintly hazy

恋心

切なさこもれる 胸の内 切り裂いて 取り出して ほら 君に 見せたくもあり 見せたくもなし「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださった! haru123fu.exblog.jp 元「koebu」akitoさんが演じてくださった!「note」yayaさんが演じてくださった! A Heart …

そう言うもの

そう言うものだ と言われてみれば そう言うもので あろうけれども そう言うものは そう言うふうに 言いたくないし 言われたくもない 元「koebu」田辺千鶴さんがアレンジして歌ってくださった! What to Say If you say that, it's what you say, but I don't…

靴下を脱ぐ

靴下を脱ぐのならできれば無地の白い靴下で脱ぐのは無垢な少女であって欲しい。木陰に隠れて覗くとそよ風が遠慮がちに吹いて彼女の柔らかな長い髪をなびかせる。その小さな頭の近くに黄色い蝶でも飛んでいたらなかなか絵になりそうな気がする。ふと少女と視…

大きな瞳

大きな瞳に見つめられている。あたりは深い闇に包まれ、その瞳の他に何も見えない。触れたくなるほど魅力的な瞳。その瞳に吸い込まれてゆく指。指先が瞳の中心に突き刺さり、そのまま手首まで埋まってしまう。さらに腕がズブズブ奥へ入り込む。めりめりと音…

虫の家

どこから入って来るのだろう。いくら調べてもわからないがなぜか家の中に虫がいるのである。それも、うんざりするほどいる。窓から外へ捨てても指先やスリッパでつぷしてもそれこそ息苦しくなるくらい殺虫剤を撒き散らしてもいつの問にか家の中が虫だらけに…

砂漠の行進

静脈と動脈の絡む積乱雲。骨と産業廃棄物よりなる灰色の砂漠。巨大なムカデを連想させる流民の群。その頭と尻尾は砂塵に霞む。ありとあらゆる人種の肌が重なり ありとあらゆる民族の顔が交わる。痛みを伴い、歩みは重く 目は虚ろ、悲しみは深い。「だめ。そ…

ルル

ルルという名の女の子の話だ。 あの頃、僕もまだ男の子だった。 もうルルには二度と会えない。 会えたとしても、もうルルじゃない。 どうして別れてしまったんだろ。 ルルの写真は一枚も残っていない。 だから肖像画を描いてみたりする。 でも、いくら描いて…