Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の指

僕の小指が 小人の枕 だったらいいな僕の薬指が 君の傷口を 塞いだらいいな僕の中指が 世界の真ん中 だったらいいな僕の人差し指が レーザーポインター だったらいいな僕の親指が たまに叱ってくれたら いいな自作自演音声をイーグルフェロモンさんがアレン…

「死」の考察

「死は私と関係ない。 私がいるうちは死んでおらず、死んでしまえば私はいないから」悟ったように昔の賢人は語ったが、はたして本当だろうか。「死」と「私=(イコール)生」は、さような小賢しい理屈通りきれいに分離されているものだろうか。年々老い、若さ…

「無」の考察

誰しも「無」を意識することはできない。もし「無」を意識したとすれば、意識されたことにより それはすでに「無」のままではあり得ないから。意識された「無」は 意識される内容もないのに意識されてしまった形式としての「有」である。いやむしろ、内容の…

水面をめくる方法

水面をめくるにはコツがいるんだ。まず、いかにもめくるような態度で水面に近づいてはいけない。察しのいい水面に用心されてしまうから。「ちょっと手を洗おうかな」そんな独り言をつぶやきながら、しかし静かに水面に近寄る。両手を水に半分ほど入れて親指…

霧の向こう側

ここからでは見えないけれど この霧の向こう側には 何かがあって 誰かがいて その証拠のように ときどき物音が聞え まるで呼びかけるような やさしそうな人の声さえ届く。その声に返事をすればいいのだけれど 相手の表情が霧で見えなくて つい返事するのをた…

ミズタマリ

ミズタマリ ハ キライイジワル バカリ スル コドモ ミタイ デオイテキボリ ニ サレタ コドモ ミタイ デイツマデモ ナキヤマナイ コドモ ミタイ デ元「koebu」yayaさんが演じてくださった!PuddleI do not like a puddleIt seems like a child who only makes…

風に乗って

青い風に乗って僕が行くと白い風に乗って君が来てぶつかったら水色になってもうどこにも風は吹いていないのです。元「koebu」makotoさんが演じてくださった!On the WindOn a blue windWhen I goOn a white windAs you cameAfter collidingBecome light blue…

打ち明け話

じつはあたし、人形なんです。その証拠に、ほら、肘も膝も球体関節。顎なんて、生まれたときから外れてるわ。背中には扉があっておなかには引き出しまであるの。頭の中は恥ずかしいもので一杯でときどきこぼれちゃって困っちゃう。お洋服はたくさんあるけど…

根も茎も 葉も芽もあれど 花はただ 花として花 虫が寄ろうが 寄るまいが 花ゆえに 咲き 花ゆえに 散る元「koebu」相模さんが演じてくださった!元「koebu」108(イレハ)さんが演じてくださった! FlowersEven though roots, stems, Leaves and buds are prese…

星のしずく

夜空を見上げる あなたの瞳を まだ子どもだった私が なんだか悪いこと してるみたいに こっそりと 見上げていたら 流れ星がひとつ 流れ星がふたつ 流れ星がみっつ それからあなたは 願い事をするように そっと目を 閉じてしまった 「ゆっくり生きる」haruさ…

糸の切れる

なにせ 糸なんだから 切れることもある けれど 糸なんだから 結べないこともない ただし どうにも もつれたる糸の やるせなき 哀しみ 元「koebu」makotoさんが演じてくださった!元「koebu」SAIさんが演じてくださった! Thread Breaks Something may cut Be…

魔法の部屋

あなたは魔法使いです。どんな魔法も使えます。どんな願いも叶います。ただし、魔法の使える範囲は この魔法の部屋の中だけ。一歩でも外に出てしまったら たちまち魔法は消えてしまいます。たとえば、魔法の杖の一振りで 地球を粉々にすることさえできるので…

刺繍の糸

あなたの肌にわたしの針と糸で刺繍をほどこすとしたらどんな絵柄がふさわしいでしょう?白っぽいうす色の糸ではきっと赤く染まってしまいますね。すぐに臙脂(えんじ)にかわりそのうち汚れてなんともいやな色になりそう。だったらはじめから黒い糸で縫いまし…

精霊の森

ねばつく粘菌の小川をまたいで マイマイハタオリの仕事の邪魔をしないように 私はそおっと精霊の森に忍び込んだ。日の光はセロファンの木の葉に濾過され 不思議な色に空気を染め オチムシャグモの大きな巣を虹色に輝かせていた。モライツグミの乞う声があち…

夏の終わり

蝉が落ちて セミガオチテ 歩道に落ちて ホドウニオチテ 腹を見せて ハラヲミセテ 天を仰ぎ見て テンヲアオギミテ ジジジジ 鳴いて じじじじ ナイテ バタバタ もがいて ばたばた モガイテ やがて静かになって ヤガテシズカニナッテ もう動くこともなくなって …

見知らぬ町で

見知らぬ町で女の子を拾った。もちろん、見知らぬ女の子だった。「拾ってくれて、ありがとう」知らんぷりするには、もったいない笑顔だった。「なんでまた、こんなとこに落ちてたのかね?」「あたし、捨てられたの」「誰に?」「いろんな人に」なるほど、あ…

深い眠り

目覚めたら、そこはまだ夢の中だった。会う人会う人、みんな同じ顔に見える。というか、どいつもこいつも顔がなかった。目も鼻も口も耳もない。 鶏卵のような白い顔ばかりだ。現実であるはずがなかった。痛くなかろうから無駄だと思ったが 他に目覚める方法…

途切れた叫び

月明かりはなく街灯もまばらな夜の帰り道。暗い闇の底に靴音が響く。靴音は真後ろから聞える。着実に抜け目なく近づいてくる。もう手が届きそうなほど近い。「ひひひひひひひひ」男の不気味な笑い声とともに私は背後から首を絞められた。「きゃああああああ…

美女の料理法

まず、新鮮な美女を用意します。化粧が濃かったり、服装が派手なものは避けましょう。眼が死んでいたり、口が悪いのもいただけません。もし暴れるようなら、平手打ちをくれてやりましょう。衣類および装身具を丁寧に取り除き、虚飾を洗い落としたら まずは三…

Dala Dala

おぞましき紅蓮(ぐれん)の炎や百目(ひゃくめ)なる蝋(ろう)の縁(ふち)より 滴(したた)り落つる 熱き涎(よだれ)のそこもとに なべて朱(あけ)に染まりし 夜もすがら 絡(から)まる縄(なわ)の 罠(わな)に泣け だらりだらだら だらだらり だらだらだらり だらりだ…

みだれ髪

みどりなす くろかみよ ぬばたまの やみにとけのけぞりて ふりみだし うなだれて ぬれそぼつ元「koebu」琳音(りんね)さんが演じてくださった! 「note」yayaさんが演じてくださった!Disturbed HairGlossy black hairMelt in the pitch-black darknessDesp…

月の雫

星空のシャンデリア湖のワイングラスそして絞り立ての月の雫元「koebu」はこサンさんが演じてくださった! 「note」yayaさんが演じてくださった!Drop of the MoonStarry sky chandelierLake wine glassAndDrop of the squeeze of the moon

アリの道

休日の朝、台所で歯を磨いていた。 ほとんど洗面所を使わない習慣なのだった。最近、虫歯が増えたような気がする。それに口の中が甘く感じられるのはなぜだ。ぼんやりと白い壁を眺めながら考えていた。その時である。妙なものを発見したのは。台所の壁に黒く…

初恋

名も知らぬほの白き その横顔 凛(りん)として 淡き恋 淡き夢 幼き胸を 痛めたり「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださった!元「koebu」田辺千鶴さんが歌ってくださった!First LoveI do not know a nameVividly whiteThat profileDignifiedFaint lo…

裏返しの姉

夜更けに寝室を覗くと、姉が裏返っていた。あちこち骨が突き出て、内臓が露出していた。「やれやれ。しょうがないな、まったく」裏返った姉は、いくら怒鳴っても聞こえない。両耳とも体の内側に潜ってしまうからだ。口も鼻も内側に潜るので、呼吸が心配にな…

ヴェルレーヌ研究

フランス象徴派の詩人として名高いポール・ヴェルレーヌのいくつかの作品を分析してみたい。 秋の日の ヰ゛オロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し。 鐘の音に 胸ふたぎ 色かえて 涙ぐむ 過ぎし日の おもいでや。 げにわれは うらぶれて ここか…

占いの館

森の奥に古い館があった。ひとりの老婆が住み、占いをするがゆえ 「占いの館」などと呼ばれていた。予言がことごとく的中するという評判で 辺鄙な場所なのになかなか繁盛していた。ある日、ある男がこの古い館を訪れた。玄関の扉を叩いたが、返事はなかった…