Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

耳からウニ

耳からウニが出てきた。膿ではない。馬でもない。鬼でもなければ国でもない。ましてや富士の高嶺に降るウンコでは決してあり得ない。(もっともウニの身の方なので似てなくもない)そういう意味ではウニ程度で済んだことに感謝すべきだろう。何が言いたいの…

袋の鼠

飼っていた鼠を一匹、紙袋に入れたまま 駐輪場の自転車の前カゴの中に置き忘れてしまった。曇りか、まだしも雪でも降れば良かったのだろう。真冬に晴れたものだから、昨夜はひどく冷え込んだ。翌朝、紙袋の中で、鼠は凍死していた。もうカチカチで、完全に凍…

押しかけ女房

玄関チャイムが鳴った。訪問セールスなら断るつもりで、ドア越しに尋ねる。「なんでしょうか?」「押しかけ女房です」若い女の声。聞き違いかと思い、ドアスコープから覗く。逆光でよく見えない。ドアを開ける。なかなかの美人が立っていた。「おはようござ…

予告ホームラン

おれはバッターボックスに立った。2ストライク。ピッチャーを睨みつける。そろそろ予告しておくか。おもむろに右手を腰に当てると おれは左腕をゆっくり伸ばし、バットの先で 外野観覧席の最上段の辺りを威厳を持ってさし示す。観衆からの歓声と怒声の嵐。…

魚の降る日

今日は魚が降ってる。メダカほどの小魚がほとんどだが たまにタイやヒラメ、カツオなんかも降ってくる。庭に出て、池に落ちたサンマを三尾ほど拾う。地面に落ちたやつより損傷が少ない。それに、丸ごと煮るだけのサンマ料理なら簡単だ。とりあえず水道水でよ…

ニュース速報

たった今入ったばかりのニュース速報です。正確な日時は不明ですが どこかで事件または事故が発生した模様です。ただし、詳しいことはまだわかっておりません。なので、引き続き続報をお待ちください。以上、最新のニュース速報でした。 元「koebu」ロンチー…

豚のシッポ

彼は若くてハンサムで 頭が良くて仕事もできる。だけど 彼の尻には 豚のシッポが生えている。彼は女の子にモテる。女の人にも男の人にもモテる。それなのに あまり深い仲になることはない。そのわけは 彼の尻に燦然さんぜんと 豚のシッポが生えているから。…

犬の鼻

会社の同じ部署にいる後輩は 皆から「犬の鼻」と呼ばれている。彼は嗅覚が異常に鋭いのだ。「今朝も立ち食いの天ぷらソバっすか」挨拶代わりに朝食を当てる。「あの二人、できてますよ」社内恋愛や不倫は必ずばれる。「先輩、病院に行った方がいいっすよ」潜…

猫の耳

彼女の耳は、猫の耳。 欲望の声 つまり、相手の本音が聞こえます。「腹へった」「ああ、眠りたい」「ふん。どうもつまらん」「なんかいいことが起こらんかな」「おっ。かわいい猫耳の子がこっち見てる」ただし あんまり難しい声は聞こえません。だって所詮、…

熊の手

彼女は一見、ごく普通のお嬢さん。清楚な印象を与える顔立ちで 立ち居振る舞い言動なんかも、そんな感じ。ところが、彼女の右手は毛深くて 指が太くて短くて、しかも爪が異様に長く鋭い。つまり、そう。まるで熊の手みたいなのだ。毛を抜いても、すぐ生える…

芋虫と毛虫

芋虫と毛虫が出会いました。「おい、芋虫」「なんだ、毛虫」「おまえ、毛がないな」「そりゃ、おいら芋虫だもん」「おれは毛があるぞ」「そりゃ、あんた毛虫だもん」「そういうもんか」「そういうもんさ」「おまえ、将来なんになるんだ?」「わからんけど、…

恋がわからない

わからない。僕には恋がわからない。恋に悩み続ける君の気持ちが わからない。人に限らず 好きなものは手に入れる。手に入らないものなら 想い浮かべる。上下左右 角度を変えて 想い浮かべる。逆さにしたり 裏返したり あれやこれやと 想い浮かべる。余計な…

所有のゆくえ

「あの女は俺のものだ」と男が言う時、実体のないルールや関係を主張しているものと思われる。その主張が周囲に受け入れられるなら問題ないが 受け入れられない場合、実体ないので所有するのは難しい。そのため、説得なら口数、実力行使なら武力に訴えるなど…

ためらい

相手を信用できないが あいにく他に相手がいない。不完全ではあるが どうせ完全にはできない。ためらいつつも 妥協と諦めの頃合いを見計らう。近頃、そんなのばっか。 同名の短い器楽曲をBGMに、自作自演。 HesitationI can't trust the other person, but u…

宝の山

宝の山にいながら その価値を知らなければ ゴミの山に埋もれているのと同じ。どんなことでも意識できるのに そんなことしか意識しようとしないのは まさに、宝の山の持ち腐れではあるまいか。 自作自演。 Treasure MountainIf you are in the treasure mount…

言っても無駄

あんな人に あんな事する人に 何を言っても無駄なのだ。生まれが悲惨だったのか 育った環境が悪かったのか そんなの 知らないし 興味もないが たとえそうであるにせよ それとこれとは 別問題。まったく聞く耳持たず そこから一歩も出ようとせず いつまでも …

病弱夫人

彼女は美しき人妻。笑顔が素敵。ただし、病弱。強い刺激にめまいする。直射日光は天敵で 外出なんぞ、もってのほか。帽子かぶって、サングラスして 日傘さしても耐えられない。日がな一日、家の中。それでも不安はつきなくて。料理は危険、火に刃物。掃除も…

幽霊屋敷

昼間そこは空地なのだが 夜になると古めかしい洋館が建っている。「なるほど、幽霊屋敷か」私は感心しながら玄関扉のノッカーを叩く。しばらくすると扉が開き 執事らしき暗い顔の男が現れる。「ようこそ、いらっしゃいませ」私はホッとする。 どうやら歓迎さ…

雨音の拍手

雨音は 拍手に似ている。 または その逆か。 しめやかな雨も 雷ともなう 激しい雨も どちらも それなり よいものだ。 ひさしの下で 聞くにせよ コンサートホール または 子宮の中 羊水に漂い 聞くにせよ あの全空間に意識が満たされる感覚は 思わず拍手した…

クサノコ採り

目覚めたのちに思い出している。僕はクサノコ採りをしていたのだ。遠征から帰ってみると、車道は渋滞していた。 クルマを追い越しながら縫うように歩いて進む。ゴルフ場を連想させるエリアに戻れば 誰もかれもがクサノコ採りに余念がない。クサノコは吹き出…

馬の首

今は昔、東北のさる城下町。夜中に若い女が行方知れずになる または惨殺されるという事件が相次いだ。さらに事件前後、馬のいななきが聞こえた あるいは馬の首が火の玉のように闇夜を走り抜けた などと言う多数の目撃談が番所に寄せられた。ある夜、腕に覚え…

牛の首

堪えがたい臭気を焦がすかのように 太いロウソクが灯っている。闇に浮かぶ一頭の牛の横顔が眼前に見える。どうやらここは夜の牛小屋。あなたは日本刀を振りかざしている。古風な野武士のような姿である。あなたは目の前の牛の首を斬り落とすつもりでいる。あ…

お隣のニワトリ

実家に入り、母に言う。「お隣のニワトリ、うるさいね」すると、母は言い返す。「あれはゴエンドンさんとこのニワトリだよ」屋号で言われてもよくわからない。だが、お隣の屋号でないことだけはわかる。「違うんじゃないかな」「おまえ、あれがゴエンドンさ…

灰色ウサギ

水の入ったバケツを兄の家に届けて帰ると 実家には父が帰宅していた。「風呂に入りたいな」独り言のように父がつぶやく。あなたの望みは叶えてやりたいが、あいにく バケツ一杯の水なかりせば風呂に入ることかなわず。「わかりました。すぐ戻ります」そう言…

便利は不便

「クルマは便利だ」などと言うが、迷信だと思う。免許証と駐車場は必要だし、ガソリン代もかかり 手続きやメンテナンスも手間。また、たとえクルマAの乗員が便利だと感じても 歩行者やクルマBの乗員にとってAの存在は 邪魔で危険で迷惑でしかない。そして…

電気工事士

胸騒ぎがして急いで帰宅する。キッチンで男が電気工事をしていた。見覚えのない男だ。壁の電灯スイッチのカバーを外している。ドライバーで作業している状況と服装からして 電気工事士であることが推測される。「いやいや、どもども、すみません」などと謝っ…

テナントのあるフロア

そのフロアには複数の売り場区画があり ジャンルに応じたテナントが配置されている。ただし、フロアのジャンルは不明。あるいは複数ジャンルであるかもしれない。少なくとも薬や化粧品を売る店はある。なぜなら、その店に彼女が出勤してきたから。私は、その…

西洋ネズミ考

かの西洋ネズミについて かくも吾輩が考えてしまうのは 先ほど夢に見てしまったからであり決してあやつめが有名であるからではない。 吾輩にはさほどかわいいとも思えぬが 愛らしく感じる女子が多いらしく キャーキャー騒がれておる事 いまいましくも存じて…