Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

悪い子はいらん

悪い子は邪魔だな。迷惑だし、役に立たんから、いらん。そんな悪い子は、学校の校舎になってもらおう。うん、それしかあるまいて。こっそり連絡しておくとな、ある指定された日に 政府の役人か、政府の委託会社の怖そうな社員がな 黒くて丈夫な装甲車に乗っ…

耳鳴り

セミが鳴く セミが鳴く 夏でもないのに セミが鳴く ミン ミン ミン ミン ミミン ミン 朝から晩まで ミン ミン ミン ミン 鳴く 鳴く 鳴く 鳴く ミン ミン ミン ミン 鳴く 鳴く セミが セミが鳴く 耳の奥に 頭の中に ミン ミン ミン ミン ミミン ミン 元「koeb…

聞き違い

不思議な現象があるものだ。僕が「好き」と言うと 彼女には「きらい」と聞こえるらしい。調べてみたら、なるほど そういう聞き違いやすい発音があるのだそうだ。たとえば、人によって「トッタノカヨ」が「エーアイアイ」に聞こえる。または、犬の鳴き声「ワ…

黒いバス

これが夢なのか実体験なのか、不明。 ただ、私のもっとも古い記憶のようなのだ。 まだ赤ん坊の私が這いながら 積み上げられた俵の小山を登っている。実家の前から続く細い坂道を下って 大きな道にぶつかる丁字路のところ。前方から黒い小さなバスが現れ こち…

墓は建てるな

お盆になる。帰省せにゃならぬ。先祖の墓がある。墓参りせにゃならぬ。横断歩道があるから そこを渡らねばならぬ、みたいに。たとえ車道にクルマの影も形も見えずとも横断歩道と信号機あらば 世間の目が気になって信号を無視してまで渡りにくい。世間の目な…

けもの道

けもの道に迷ったあげく 青年はけものになってしまった。爪を立て、牙をむき、血に飢えた眼。笑顔を忘れ、優しさは微塵もない。青年には恋人がいたが 彼女が手紙を出しても返信はない。消息の途絶えた青年を探して やがて彼女もけもの道に分け入った。しかし…

ゲレンデ

いつの間にかスキー靴とスキーを履いて 真っ白なゲレンデの上に立っている。 さっきまで資産家の青年と列車に乗っていたはず。高校の同級生でもあった彼の姿は、今はない。 先に滑り降りてしまったのかもしれない。だとすれば、いかにも彼らしい。追いかける…

銀行強盗

殺風景なビルの一室。 若い男女二人組の強盗がバッグを放り投げて目配せする。 女は拳銃を持っている。 手をあげろ、とは言わない。きっと面倒臭いのだろう。 缶詰の詰まったバッグを抱え 二人組は盗難車に乗り込む。 遠くまで逃げるのだ。 どうせ追っては来…

分別ある分別を

人間は同質でもなければ平等でもない。だから、関係する相手を分類せにゃならぬ。実際、それぞれ人は、それぞれの経験や心情により それぞれの基準で相手を区別しているはず。好きな人がいて嫌いな人がいる。役立つ人がいて迷惑な人がいる。老若男女、貧富の…

海へ行こう

ふと思い出した。 (そうだ、忘れていた。 夏になったら海へ行くのだった) 趣味のスライドショー動画制作のため 海の風景写真を撮りに行くと もう冬のうちから決めていたのだ。 これまで川や池の画像で誤魔化していたが どうにも我慢ならないものがあった。…

交差点の女

人混みを縫うように歩き続けていた。ここがどこらへんなのか判然としない。交差点で信号灯の色が変わるのを待つ。横断歩道の向こう側の女と視線が合った。見知らぬ美しき他人であった。大切な瞬間が訪れたような気がした。このまま別れたら必ず後悔する。し…

見つからない

突然の夕立ちで町が流されたみたいになった。ダンス発表会を見物するため、傘をさして家を出たが 道路が川みたいになり、途中で断念。全身びしょ濡れになって帰宅した。すぐに裸になってシャワーを浴びる。キッチンペーパーで溺れた靴を拭き、脱水を試みる。…

学校の七不思議

学校の怪談にまつわる話なんだけど 僕が通う学校にも七不思議があるんだ。真夜中になると、グラウンドの真ん中に 戦前の旧校舎が建っているのが見える。とか 昔のブルマー姿の女子生徒の腰から下だけが 渡り廊下を歩いていた。とか 目を閉じて段数を数えなが…

妖怪しりとり

とても人間とは思えない奴がやって来て 変なことを言う。「しりとりをしよう」「は?」わけがわからない。「は、じゃない。 しよう、だから、最後は、う、だ。 う」「う・・・・浮かばない」「命までは取らんから安心しな」「な・・・・何者ですか?」「考えろ、自分…

荒野のうそつき

土煙の舞う荒野 血の色に染まる夕陽 不毛の大地を這う ふたつの長い影 ふたりのガンマンは どちらも名うてのうそつきだった。どちらがよりうそつきかを競い これから決闘が始まろうとしていた。負けた者は死あるのみ。「おれはうそをついたことがないぞ」「…

不安な音

近頃、ジェット機の音なのか ミサイルが飛来するような音がやたらするな。などと思っていたら、本当にそれらしき爆発音がした。あわてて窓を開ける。かなり遠いが、黒煙が上がっている。(戦争か?!)そんな話、聞いてないぞ。テレビないので、パソコンを立ち…

氷の子

目も口も 耳も髪も 手も足も 肉も骨も脳も肺も心臓も なにからなにまで みんなみんな 氷でできた氷の子 時も凍える冬の夜 月の光 屈折すれば星の光 にじんで壊れ歪み輝く街の夜景 あやしく綺麗に映します きっと電飾のゆらめきは この子を駄目にするでしょう…

氷の帆船

オーロラゆれる空の下 果てなく広がる氷の海原 その凍った海の真ん中に 氷の帆船(はんせん) 浮かぶとか 氷の帆船を見た者 凍えて必ず死ぬ 凍えて死んだ者 氷の帆船の船員となる 氷の帆船の船員 重い氷の鎖につながれる 氷の鎖を切断すること けっして亡者に…

声援が聞こえる

休日のお昼近く、近所の運動公園から声援が聞こえる。おそらくサッカーの試合でもやってるのだろう。それとも陸上大会か。あるいは運動会かもしらんが、なんでもいい。スポーツ観戦に興味はない。どれもこれも似たり寄ったり。写真を撮る楽しみも減退気味だ…

黒い雪

君がいなければ 僕は光を失う 凍えるほどの 冷たさと寂しさ 真っ暗な冬の夜に 真っ黒な雪の降る 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった! 元「koebu」宏美(ろみりん)さんが演じてくださった!「さとる文庫 2号館」もぐらさんが演じてくださっ…

美人の漬物

美人はいたみやすい。長期保存するため、恋人を漬物にすることにした。まずは「漬物」でWeb検索。塩、しょう油、みそ、酢、酒かす、からし、ぬか、・・・・ 漬け込み材料色々あれど 彼女にふさわしいのはなんだろう? しょっぱいのやすっぱいのや ぬか臭いのはい…

迷惑な騒音

掘削機で岩盤を蹴散らされるみたいに起こされた。ものすごい騒音だった。近所で土木工事でもやっているのだろう。寝ぼけ眼で時計を見る。非常識な時間帯とは言えない。しかし、うるさい。とても眠っていられない。顔を洗って歯を磨いてトイレに入る。出して…

川のほとり

ひとり、川のほとりにたたずんでいると 川上から賢者が流れてきた。「助けてさしあげましょうか?」私がたずねると 賢者はそっけなく 「わしのことはかまわんでくれ」そのまま川下へ流されていった。しばらくすると 今度は愚者が流れてきた。「助けてやろう…

鳴り響く

未開地に 民族の太鼓 鳴り響く ドム ドム ドム ドドム ドム ナイフで延長 生命線 ギリ ギリ ギギリ ギギリ ギリ 胃壁のポリープ つまんじゃえ グニュ グニョ グニョニョ グニュニュニュニュ 股関節とか はずしましょ グギギ グギギ グギギッギ お口の端から …

小人の群

小人の群に襲われた。逃げても逃げても追い迫る。からだ小さいくせに足はめっぽう速い。ゾロゾロゾロゾロ、無数の足。ペタペタペタペタ、無数の手。ニヤニヤニヤニヤ、無数の顔。蹴散らしても蹴散らしても、キリがない。踏みつぶしても踏みつぶしても、くた…

身体検査の日

本日、学校で身体検査がある。身長や体重はいい。胸囲や座高もかまわない。血圧もいいだろう。視力や聴力も大事だ。検尿も血液検査も仕方ない。しかし、あれは困る。あれは恥ずかしい。個室で下着も脱がされて検査される。つまり、裸にされるわけだ。男子の…

ころんだ

おとうさんが ころんだ おかあさんが ころんだ おにいさんが ころんだ おねえさんが ころんだ とうとう ぼくも ころんだ もうすぐ いもうとも ころぶ だから おまえも ころぶだろ みんな みんな ころぶだろ だるまさんが ころばした 自作自演。Fell DownDad …

詰将棋

有名かどうかは知らない。高名なるプロ棋士が考案した詰将棋である。さして難しくもない。でも、よくできていると思う。ピタゴラスの定理の証明にアインシュタインが使ったとされる直角三角形の直角の頂点から対辺に垂直に下ろしただけの補助線。これもまた…

スパイの告白

おれはスパイだ。当然ながら任務は極秘である。昔はスパイ道具なるものを山ほど持ち歩いていたが 今は改造した携帯端末ひとつあれば十分。盗聴、盗撮、傍受、解析、連絡、なんでもござれ。身軽なものだ。鍵の開け方、爆弾の作り方、スマートな殺し方なんかも…

混血児

学校へ行きたくありません。同級生にいじめられるから。友だちなんかひとりもいません。みんな、私を軽蔑するのです。血が汚れている、と言うのです。私の血が不純だ、と。泣いたって誰も同情してくれません。涙も汚れているはずだ、なんて言われます。くや…