Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

スタンプの羅列

いくつにも区画化された部屋があって それぞれに画一化された女の子たちの姿がある。それはスタンプの羅列のようであり、また 浮き彫りにされた切手シートのようでもある。何事か役割を終えた彼女たちは眠るように固まる。先ほどまでの生気を失い、表情も消…

救急車の音

家の前の通りを走り抜ける救急車の天地に鳴り響くサイレンの音で目が覚めた。あんまり驚いたせいか、内容は思い出せないが 見ていた夢から引き剥がされるように起こされた。まだ心臓がバクバクしている。くそっ。救急車の音で死んだら、笑い話にならんぞ。 …

知人たちの店

浅草を連想させる街に知人が店を出すことになった。寿司屋とか焼き鳥屋とかやっていた連中が ソバ屋をやろうとしているのだ。ひとつ冷やかしてやろう、と出かけてみた。文化祭の催しをしている教室のような商店街が続く。途中、いくつか空白はあるものの あ…

そのグループ

そのグループの話題についてグループの構成員は 過剰に反応しなければならない、ことになっている。それがグループの掟であり、絆であり グループのグループたるゆえんなのだそうだ。かくいう私もそのグループの一員である。根も葉もない噂に過ぎないと内心…

汚れた絵

水洗トイレではあるまいか。キッチンの流し台のように感じていたのに その水は汚れているような気がする。それとも、何事か操作を誤って おれが汚してしまったのかもしれない。ともかく、その白い陶器の汚れた水たまりの中に 自筆の手描き絵いく枚かが落ちて…

ここにない

まもなく消え去るサイトについて考えていたのだ。 あのサイトの特殊性についてであったか 他サイトからのサイバー攻撃についてであったか。 窓の外では下校途中の学童らのおしゃべりが聞こえる。 そんなの関係ないと言わんばかり、にぎやかな声。 そのせいか…

川の観察

ひとりで舗装道路を歩いていたら 切れ目があって、そこは川になっていた。そこそこ水は澄み、黄土色の川底が見える。流れが方角を変えるための溜まりになっているのだろう。なんとなく観察してみようかな、という気になり しゃがんで覗いていると、カワニナ…

牧師の妻

共通の知人である女の子について お客さんでもあった老人と話をしている。「彼女の家に入ったことがあるんですよ」自慢話をするみたいな感じで。なぜか彼女の家に僕の伯母が住んでいたことがあり その関係でちょっとだけ入らせてもらったのだ。じつは老人、…

溝のある石像

白いから石灰岩だろうか。それは妙な形の石像なのだった。婦人像らしいが、本体に溝が彫ってある。その半分ほどの部品がスライド式にはまる構造。組み合わせて目立たなければ悪くもないが 明らかに継ぎ目が露骨に見える。どうしてこんな構造にしたのだろう。…

夕暮れ時に踊れない

クルマのない駐車場を連想させる場所。そろそろ夕暮れなのか、あたりは薄暗い。僕たちは流行のダンスの練習中。同じ振り付けの動きを全員でやる。しかし、暗くて他の人の動きが見えない。目が悪いから近づいてもよく見えない。ああ、またか。いやになる。力…

垂れる仏の顔

浴室を連想させる部屋の上階の部屋も浴室で 二階の床でもある天井から顔が垂れてくる。水道の蛇口から垂れんとする水滴のような顔。その両目は仏像のように閉じられていた。その顔の人物が本屋の店主であるような気がする。「これこれこういう本を探している…

列車の屋根の上

おれは列車に乗っている。ただし、車両の屋根の上に寝転んで。さる貴婦人の命令で、そういうことになったのだ。他の乗客ともめごとがあった、という背景はある。どうやら暴力沙汰があったようだ。ともかく、列車の屋根の上は勝手が違う。まず、動力が不明。…

麻紐のバット

有名なプロ野球選手が打席に立っている。仮に彼の名をジローと呼んでおく。ジローはバットを旋盤のように回転させ 先から手元へと丁寧に麻紐を巻きつけている。元野球部だった高校の同級生がピッチャー。仮に彼の名をサブローと呼んでおく。サブローは死球す…

気休めのロープ

その建物にはオモチャなども用意されていて 娯楽施設として楽しめるが、それだけではなかった。区切られた柵を意味するロープを潜って越えると 寝ているたくさんの病人の姿が目につく。重病であることは萎びた果物のような皮膚でわかる。また、掛け布団の下…

奇特な集会所

友人に誘われて訪れたその家はじつに大きいのだった。間口は広く、靴脱ぎからすぐに畳の大広間になっている。この家の持ち主は資産家であるが奇特な方で ここを無料で集会所のように使わせているそうである。出入り自由、子どもから老人までにぎやかだ。ある…

川になる風呂

町会の寄り合いか、それとも同窓会か。 初老の男たちがテーブルを囲んで話し込んでいる。 会議と呼ぶほどでもない。 飲み会みたいな気楽さ。 議長格の男が発言する。 「それじゃ、おまえんちで風呂に入ることにしよう」 「ああ、いいよ」 そいつがうなづく。…

ナニアナ

大声では言えない特典のようなものがあって 僕は社内で無料の食事ができるはずだった。ところが、夢中で仕事しているうちに 掛け時計を見ると、もう二時を過ぎている。外食に出かけなければいけない。誰かに断ってから出かけようとするが どこにも社員の姿が…

読書家グループ

喫茶店のテーブルで話し合っていた。一癖も二癖もあるような男女のグループ。それぞれの目の前には本が置かれてある。読書家の同好会であろうか。 僕を残して数人が席を立ち すぐ横のコの字型のカウンターに並ぶ。それぞれ本をカウンターに並べるように置き …

折りたたむ

敷物のような印象もあるが、それは古い書物のように細紐で綴じられていた。途中で切れそうなほど紐がよじれている。結び目を解きながら端から引き抜こうとする。ここで兄になにか言われたが、忘れてしまった。さて、おれはなにをしているのだ。こんなことし…

壁の狐

凸凹(でこぼこ)した壁のある通り。銭湯の裏庭のようでもある。壁には狐のような目があり、顔がある。木を削ったり紙を貼ったりしての造形らしい。「ああ、そうか。この目と顔には見覚えあるぞ」ひとり興奮していると、初老の男が声をかけてきた。「すごい…

ゴンドワナ海

なにやら短い言葉に対するこだわりだったと思う。ただし、その正確な表記は忘れてしまった。仮にそれが「ゴンドワナ」みたいなものだとする。この最後に漢字ひとつ、仮に「海」を加える。この仮の「ゴンドワナ海」が何かを意味するらしいのだ。「母性」だっ…

広場で公開処刑

そこは公園か遊園地の広場みたいなところ。我々は楽団か芸人の集団みたいなもの。そのグループ名が掲示板の見取り図の上に 立体の木の塊みたいなもので表示されている。「おれなら、名前はこうするな」と その木の塊のいくつかを入れ替えながら仲間に示す。…

イメージ狩り

東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる (石川啄木) 倒壊の 自宅の屋根の 下敷きに われ血まみれで 柿とつぶれる 当事者の 許容範囲は 狭かりし われ叱られて 柿はくされり 君子でも 聖人でも なかりせば われ改めんと 柿もにげだす 韜晦(…

白い膜

ボンドのような白い膜の中を突っ切ったような気がする。それとも、これから突っ切るのだったか。ともかく、これからゴンドラに乗らねばならない。ゲームだったか、ちょっとした訓練だったか。ボタンを押すと移動する仕組みのゴンドラが二つ。 そのどちらかに…

マンガのケンカ

「これから、こいつとケンカする」血のつながらない兄貴が言う。「あんたは強いが、あいつとはやめた方がいい」そう忠告するが、兄貴の決意は変わらない。相手はそれほど強そうでもないが、疑惑がある。右手が機械仕掛けになっているという噂があるのだ。そ…

亀の絵

なぜか亀の絵を描いている。まず白い紙に四角を二つ並べて描く。それぞれを亀の甲羅と頭にするつもり。構図からの下描きならば 使っているのは鉛筆ということだ。普段は下描きせず、鉛筆も使わないのに 不思議なこと。加筆され、いらない線が消され、やがて…

その時

物音がしたような気がした。どなたかいらっしゃったか、と玄関へ行く。すると、玄関の狭いコンクリートの床に誰か寝ている。いや、まるで寝ているように老母が倒れていた。とうとう、その時が来たか。ただし、出血しているような様子はない。私は頭を片手で…

川底の渇き

私は国の指導者みたいな立場なのに 道を外れて涸れた川底みたいなところに降り立つ。コンクリートのところどころに土が溜まり さらに滝があった崖を越えると、荒れ地のようになる。かなり下の方に寝そべる数匹の犬の姿。昼寝しているらしいが、喉が渇いた様…

こえ部への謝辞

私たちはあなたがたに感謝します。音声専門のコミュニティサイト 「こえ部」を立ち上げてくださった事。お題からの声投稿、コメント、フォローなど 親密な相互連絡システムを構築してくださった事。BBS、LIVE、サークル、プレイリスト、ランキングなど 数多…