Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2022-01-01から1年間の記事一覧

最大の問題

二酸化炭素は地球温暖化の原因ではない。熱エネルギーを運ぶ媒体の一つに過ぎずない。最大の問題は熱源である。発電所、工場、冷暖房設備、家電製品、自動車。熱源なくして文化的な生活は成り立たない。熱源を増やしながら二酸化炭素を減らしても無意味。世…

水の力

屋外でなにかを集めていたのだ。小石とか木片みたいな小物を。そして、それらを誰かに差し出す。すると、野球のボールが一個こぼれ落ちた。それは傾いた地面を転がり、石段で弾む。それから道端の小川の手前で止まった。小川は近くの住宅の玄関から始まって…

小さな本

図書館みたいな場所。棚の上に山積みされた本の中から一冊だけ持ち帰ることが許されているらしい。物色するものの、欲しい本が見つからない。とりあえず英文の小さな本を手に取る。そこへ知人女性が現れ、同じように物色する。彼女は英語が好きだったはず。…

ルールの犬

そこそこ高い建物の上から見下ろしている。この建物の住人であろう人々と一頭の犬の姿がある。ある制定されたばかりのルールによってこの犬を殺さなければならなくなったようだ。むごい話である。それがわかっているのか、犬の表情も悲しそうだ。無慈悲な殺…

ヘビの開き

なんとなくホテルの一室。思い出せない何かを探していた。水に濡れたクモの寄せ集めみたいな塊がある。黒い脚みたいなのがもぞもぞ動く。それをよく見ようと近づく。頭から頬にかけて硬いものに触れた。ヘビの開きとでも呼べそうな黒い干物。どうも変なのば…

粘土の模型

粘土でこしらえた共同住宅の模型がある。これを囲んで住人たちが相談している。「これはまずいですよね」地下部分に水で浸食された空洞がある。その部分を住人の代表者が秘かに修正し政府の届け出機関に虚偽報告をしたらしい。それを容認するべきか弾劾する…

手首のシール

夜中に屋外で深呼吸をしている。暑いのか、上半身は裸。なぜか両手首にシールが貼ってある。バーコードやキャッシュカードみたいな感じ。違和感はない。生活する上で必要な処置なのだろう。同じく上半身裸の男が近くで深呼吸を始めた。目配せするので見ると…

一行名言集 第五集

つまらんは罪 おろかなるは罰 人間関係 ほとんど信用がすべて 規則や法律 最低限にとどめておけ 探し物は 要らなくなった頃に見つかる やりたいことと やれることは違う 速さや強さでなく 健全さ これ見よがしに太るなかれ 続けていると わかってくることあ…

三匹のヘビ

最初は会社オフィスにいたような気がする。それから箱を抱えて帰宅したのだ。箱の中には黒くて細長い三匹のヘビ。テーブルから腕を伝って肩や頭の上を這う。小さいこともあり、動きがコミカルでかわいらしい。しかし我ながら、どういうつもりかと思う。これ…

ペッパー水球

市営プールで仲間と遊んでいる。誰かが合成紙で三角柱のボールを作り それで水球の真似事みたいなことを始めた。ボールは水面に落ちた直後に微妙な動きをする。まるで生き物のような面白い動きだ。「ペッパー! ペッパー!」嬉しくなって、そんな歓声をあげ…

半分の自転車

自転車を半分に分解した。サドルのある半分を地面に立てて乗る。残りの半分には友人が乗った。どこにも行かない。というか、どこにも行けない。僕たちは顔を見合わす。どちらもなにも言わない。 Half BicycleI disassembled the bicycle in half.I ride with…

あそこの工場

ある特殊な文化団体の会長から誘われた。あそこの工場で一緒に働こう、と。断る理由はない。颯爽と向かう。工場は2か所あって、通常はA工場。今回はB工場とのこと。水曜と金曜はそういうことになっているそうだ。ところが、それは思い違いだったらしい。そん…

かぞえうた

ひとつ、ひとりよがりというけれど。ふたつ、ふざけてみたいだけ。みっつ、みっともなくたって。よっつ、よごれていたってかまわない。いつつ、いつまでつづくやら。むっつ、むりしているだけね。ななつ、ないてるわけじゃない。やっつ、やっぱりつかれたわ…

さびしい帰り道

陽は深く沈んでしまった。紺色の空に影絵の山並みが浮かぶ。その切れ目を貫いて道が延びている。風に撫でられ、揺れる稲穂の黒い波。灯台の灯りか、点滅する弓張り月。前方に小さな人影が見える。煙のような灰色のシルエット。地面を這う影法師が手招きする…

犯された街

飛び散った脳髄を踏まずに街へは入れない。つぶれた眼球から伸びる神経線維の蛇の群。浮浪者は火だるま踊り。笑顔が焼肉になる。うまそうに煮えた胎児は病院からの支給品。銃声が響く。撃ち落された電気仕掛けの月。紳士と淑女のダンス。裸の下半身が哀しい…

おかしな子

おかしな子だった。服装も顔も頭も、みんな。「もしも人間に天敵がいないとすれば」彼女は主張する。「人間の天敵は人間である」やはりおかしなことを考えている。「もしも人間に生きる権利があるなら」彼女は続ける。「人間には死ぬ義務もある」みんなから…

いやらし草

思わせぶりな観葉植物。真夜中、ピンクの花が咲く。甘ったるく切ない香り。枕もとに置いて眠ると夢を見る。ショッキングピンクの唇の女。緑色の下着を脱いで誘惑する。「いらっしゃい。待っていたのよ」これは夢だ、とあなたは気づく。でも、すぐに目覚めた…

差別会議

どうやら人種差別に関する国際会議のようだ。アイヌ人らしき男が発言する。「おれに対してできることを、あんたら 今ここでやってみな」それでおれは昔習った護身術を仕掛けようとする。すると、黒人の出席者が反対した。「やめろ。その技は国際的に認められ…

漠然とした不安

おや、不安なのかな。今、君は安心したいんだね。でも、残念ながら安心できる状況ではない。人と人工物が増え過ぎたのだ。宣戦布告されたわけではない。経済破綻の予兆があるわけでもない。それでも予告なく災いは起こるものだ。第一、安心していたら対応が…

頑固者

世の中には頭の固い奴がいる。いわゆる頑固者。どんなに説得を試みても己の考えを改めるつもりなし。腹が立って殴りたくなるが 地位や権力があると脅しも効かん。それでもなんとかせにゃならん。放っておいたら大変なことになるから。実行できるかどうかはと…

最新コピー機

デザイン事務所で働いている。納期が迫っているのか、あわただしい。大掛かりな最新コピー機を使う上司の男。「縦横比が4対5の割合で拡大するとしたら この円は楕円になっちゃうのかな」そう問われたので返事する。「図形はそのままで隙間が拡がるだけでし…

一億円扇子

遺産相続の件で知人一家がもめている。「扇子(せんす)が一本一億円」などと奥さんが嘆(なげ)く。差し障りあるので深くはかかわらない方針だが 一般論として気にかかる。過去の遺産が現在および将来に活かされないとすれば旧来の血縁関係なども抜本的に改…

潜水艦「桜」

我々は工作員。敵の潜水艦を爆破せんとしている。あと少しというところで敵兵に見つかってしまった。ここで重要なのが、命がけであるということ。手段や作戦うんぬんではない。地面を掘って潜水艦を埋め、桜の木を植える。こうすりゃ、そのうち花が咲くかも…

虜囚

おれは捕虜。ここは敵国の収容所内にある研究室。複雑な構造の装置を作っている。これを完成させた国が戦争に勝てそう。なのにおれは嬉々として敵国の開発にいそしむ。ある部品に別のある部品を組み込む。たとえるなら、肺に気管枝を突っ込む感じ。その原理…

特殊任務

我々3人は特殊任務をおびて現地に降り立った。空港の敷地内で風土病の予防措置をとる。顔面に白いクリームを塗るのである。リーダーの顔に指で塗って透明になるまで伸ばす。リーダーもおれの顔に同じ処置をする。もう一人は女だったような気がする。慣れて…

コンバットごっこ

夜、工事中の道路を歩いていた。広い車道を渡りたいが、機材や道具が邪魔をする。さながら戦場のようでもある。その時、どこか遠くで爆発音がした。「チェックメイトキング2、チェックメイトキング2、 こちらホワイトルーク、どうぞ」ひとり、コンバットご…

出入り業者

どこぞの会社事務所にお邪魔している。まずドアを開けて向こう側に出る。それから近くの別のドアを通って元の部屋へ戻る。そこの壁にある設備を使わせてもらうつもり。ただし、そのためには一旦外に出なければならない。それでドアを開けて向こう側に出た。…

宮殿の少年

ここは王様のいる宮殿という噂だ。なのに、どこにも王様はいない。おれは裸で寝室に入る。ベッドに寝ていた裸の少年を起こしてからかう。彼は坊主頭で、全身の筋肉が漫画のように動く。他に選択肢のない運命と諦めているようだ。おれにも他に思い浮かぶ選択…

パンのシュート

石炭ストーブのある教室にいる。パンをボールに見立て、バスケットボールのシュートをしよう、と同級生たちに提案する。他に名乗り出る者がいないのでおれがパンのシュートを試みることになる。ところが、いざシュートしようとすると異国の留学生らがストー…

抗争

おれたちはギャングどもと派閥争いしていた。やつらは暴力で、おれたちは説得で。やつらは不意打ちのように棒で頭を叩きやがる。株や債券などを安く仕入れる情報を奪うつもりのようだ。命を取られる危険性もあるわけだがあいつらに従うくらいなら死んだ方が…