Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2014-01-01から1年間の記事一覧

山積みのトラック

目の前には荷物を積んだトラック。缶詰、瓶詰、箱詰が荷台に山盛りになっている。「安いよ、安いよ。ねえ、買ってよ」路上販売なのか、女の子に声をかけられた。おいしそうな果物の缶詰が目についた。「ええと、この缶詰はいくら?」「それより、こっちのが…

曲がりホーム

列車に乗るため、地下道を急いでいる。有名な女優と一緒にいるらしいのだが 自分が彼女であるような気もする。どうも曖昧だ。突然の腹痛に襲われた彼女あるいは自分は しばらく階段の途中で斜めになって休む。そのため列車に乗り遅れてしまった。それでも次…

浮気者

さむいさむいと 寄り添えば ぬくいぬくいと 肌も寄せ すきよすきよと 口を吸う ほんにおまえは 浮気者 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった!元「koebu」yayaさんが演じてくださった! Cheater It's cold Stick together It's warm Also bring…

泉よ 泉

泉よ 泉 こんこんと 湧き出で止まぬ 清き水 くたびれ果てたる旅人の 喉をうるおし そこにあれ 元「koebu」kyouさんと元「koebu」Robin247さんが競演! Spring Spring Spring spring Clean water that doesn't stop When it springs up Moisturizes the tired…

いつか終わる

始まりあらば、終わりあり。何事も、いつか終わる。終わりが来る。それは遠い先の話か すぐ目の前の現実か。いや。すでに 終わってないとも限らない。それを認めるか否かの問題に過ぎぬかも。気持ちに従い、無理しても どうせ得より損ばかり。まあ、そんなも…

総員に告ぐ

総員に告ぐ。撤退せよ。すみやかに撤退せよ。繰り返し、総員に告ぐ。撤退せよ。すみやかに撤退せよ。なんびとたりとも この地に留まってはならぬ。なんびとたりとも この地を振り返ってはならぬ。総員に告ぐ。あえて総員に告ぐ。勇気は不要、見栄は邪魔。過…

僕たちの情景

君は自転車に乗って 僕は走ったり歩いたりして 楽しそうに喋ったり笑ったりしながら ふたり共通の目的地を目指して進んでいる。とても微笑ましい情景ではあるけれど じつはあのふたり、僕たちでないかもしれない。たとえば、あの少女は君ではなくて さらに、…

マンモスの坂道

布団に入ったものの眠れずにウトウトしていたら 真夜中、地響きとともに妙な音が聞こえてきた。住んでるマンションの前は急な坂道なのだが そこを何か非常に重いものが通過している気配。大型トラックが通る音とはとても思えない。たとえようのない変な音だ…

形に残そう

素敵なことを見つけたら 忘れないうちに形に残そう。だって 素敵なことは そんなにポンポン生まれない。消えてしまったら 跡形もない。記憶だって いつか消える。それにそれに その素敵なことは もう二度と生まれそうもないような すっごく貴重な すっごく素…

ふたり

彼はビョーキであって 彼女もビョーキであって ふたりは 同病相憐れむの図 なのであって 恋人とか そんな生ぬるい関係 ではなくて ふたりは 互いの糞便を喰い合うほどの仲 なのであって 互いを苛(さいな)み 互いを辱(はずかし)め 互いを傷つけ合うしかなくて…

革命はなかった

我々は互いを「同志」と呼び合い、革命の機会を狙っていた。ただし、血なまぐさい政治革命ではない。産業革命やIT革命でもなく ましてや宗教改革ではあり得ない。たとえるなら、ルネッサンスに近いだろうか。既存文化を破壊する軽率な文化大革命ではなく 文…

ボタンの掛け違い

まず最初にボタンを掛け違えてしまった。「そこじゃないってば」さらにボタンを掛ける途中でもボタンを掛け違えてしまった。「違うってば。ここよ」だいたい、もともとボタンの数とボタン穴の数が等しくなかった。「あんた、そっちの趣味があるの?」しかも…

筏の家

諸事情から陸地に家を建てられず 池と呼ぶべきか迷うような湖に家を浮かべた。太くて長い丸太を並べ 縦横二段に縛った大きな筏(いかだ)の上に 犬小屋に見えなくもない小さな家を建てたのだ。風に流されて岸から離れ過ぎないよう また、逆にあまり岸に近づ…

別の私

「ひとつ問いたいのだが」「なんでしょうか?」「私でないのではないのなら、それは私か?」「あなたでしょう」「ところが、そうとも限らんのだ」「たとえば?」「この私ではなく、別の私かもしれない」「でも、あなたであることは同じでしょ?」「しかし、…

人を動かす

人を動かすに説教は下の下なり そちらへ動きたくさせるが上策 密なる間柄なればともかく 赤の他人ならばなおさら 捨て置かば人は安きへと流れ 苦痛より遠ざからんとす この節理に物申しても詮なし 自作自演。 Move PeoplePreaching is a bad way to move peo…

誰かいる

宇宙人がいるとかいないとか話題になるが 論理的に考えて、いるのが自然だと思う。少なくとも、天の川銀河には地球があり、地球人がいる。この天の川銀河に相当する銀河は宇宙に無数にある。「観測可能な宇宙には少なくとも1700億個の銀河がある」と天文学者…

言わぬが花

「言うも花、言わぬも花。 同じ花なら、言うてまえ」というわけで 皆さん勝手に喋ったり書いたりするわけです。でも 「雄弁は銀。沈黙は金」とか申します。「いくらなんでも、そんなことまでおっしゃらなくても」などと注意したくなります。たとえ独り言だと…

キャンディ

キャンディという名の 女の子 キャンディみたいに 甘くて かわいい 女の子 売っていたら 買いたいな 袋やぶって あけちゃって 指につまんで なめたいな なめたいな キャンディという名の 女の子 キャンディみたいに キラキラ輝く 女の子 見ているだけでは つ…

パンドラの箱

パンドラの箱あけた 誰あけた? おいらがあけた パンパン ドラドラ ドラドラ パン 大変だ! どうしよう? あんなのや こんなのが 出てくるぞ! パンパン ドラドラ パンパン パン 希望・・・・ 自作自演。Pandora's BoxPandora's box openedWho opened it?I opene…

主の祈り

天高く馬肥ゆるも春遠からじ、近くば寄って我らが父よ。ねがわくは女郎花おみなえしを藤袴ふじばかまと呼ばせたまえ。四国八十八ヶ所の霊場れいじょうを順拝させたまえ。ころもの天ぷらになるごとく ちりめんじゃこになさせたまえ。我らの日々の糧(かて)を非…

甘ったるい

やり切れん。もう我慢できん。甘い、甘い。甘ったるい。とにかくヘドが出るほど甘ったるい! ベチャベチャして ヌルヌルして 口の端からダラダラ垂れるわ 手にベタベタくっつくわ 服は汚れるし 床も壁も天井まできたなくて そのうち虫まで這いまわるので 気…

狂気の世界

彼は狂犬病と呼ばれていた。彼は自分の妻を未婚の母と呼び 自分の息子を幼な妻、娘を幼なじみと呼び 自分の両親をビタミンA、ビタミンBと呼んでいた。彼はナマコに関する研究論文を学術誌に投稿した。ナマコは外敵から攻撃を受けると肛門から内臓器官を排出…

変態の世界

彼は変態と呼ばれていた。彼は自分の妻を変態女と呼び 自分の息子を変態息子、娘を変態娘と呼び 自分の両親を変変態ジジイ、変態ババアと呼んでいた。ここに 変態の定義がある。同性同士が仲良くするのは変態である。ペットの動物と仲良くするのは変態である…

天才の世界

彼は天才と呼ばれていた。彼は自分の妻を天才の妻と呼び 自分の息子を天才の息子、娘を天才の娘と呼び 自分の両親を天才の父、天才の母と呼んでいた。クルマを運転すれば天才ドライバーと呼ばれ 事故を起こすと「さすが天才は過激だ」などと褒められた。道を…

白痴の世界

彼はウマウマと呼ばれていた。彼は自分の妻をウマウマと呼び 自分の息子をウマウマ、娘をウマウマと呼び 自分の両親をウマウマ、ウマウマと呼んでいた。「ウマウマ」「ウマウマ」「ウマウマウマウマウマウマ」「ウマウマウマウマ、ウマウマウマウマ」「ウマ…

不良の世界

彼は不良と呼ばれていた。彼は自分の妻を不良女房と呼び 自分の息子を不良のガキ、娘を不良のスケと呼び 自分の両親を不良おやじ、不良おふくろと呼んでいた。派出所の警察官は不良おまわりと呼ばれ 総理大臣は不良首相と呼ばれ 一般人は不良市民とか不良国…

美術室

放課後の校舎、美術室にて 美術部の部員たちが絵を描いている。モデルはブルータスだかなんだかの石膏胸像。ただし、そのままの単純な構図では創作意欲が湧かない。そのため、全員による協議の末、副部長の意見が採用されて 1年生女子と抱き合わせの形にロ…

聖夜の曲

聖夜の君たちのために ささやかなピアノ曲を贈ろう。クリスチャンでもなんでもないから 三位一体(さんみいったい)とかよくわからないけど 聖霊と呼ばれるものについては なんとなく音楽に近いような気がするな。八百万(やおよろず)の雑多な神々おわしま…

耳からウニ

耳からウニが出てきた。膿ではない。馬でもない。鬼でもなければ国でもない。ましてや富士の高嶺に降るウンコでは決してあり得ない。(もっともウニの身の方なので似てなくもない)そういう意味ではウニ程度で済んだことに感謝すべきだろう。何が言いたいの…

袋の鼠

飼っていた鼠を一匹、紙袋に入れたまま 駐輪場の自転車の前カゴの中に置き忘れてしまった。曇りか、まだしも雪でも降れば良かったのだろう。真冬に晴れたものだから、昨夜はひどく冷え込んだ。翌朝、紙袋の中で、鼠は凍死していた。もうカチカチで、完全に凍…