Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

黒い粉

喫茶店の調理場に友人たちがたむろしている。なんとなくコーヒーを飲みたくなる。灯りをつけ、インスタントの粉をカップに移す。それを待っていたかのように誰かつぶやく。「ああ、おれも飲みたかったんだ」そいつの分を先に作ってやろうか、という気になる…

漏電してる

まず、そもそもの前提として ピンポンダッシュで起こされてからまた寝たのだ。それに、階上の住人の生活音が耳障りだったり 仕切りの引き戸の開閉が途中で止まったり。住宅だけでなく、自分のからだにしてもあちこちに不具合が目立ち始めていた。それから記…

変な外人

変な外人の家にお邪魔した記憶がある。自転車に乗った帰り道の途中、ある店に寄った。ありふれた住宅の前で古本屋をやっている。なにやら家の中から老人の話し声が聞こえる。変な外人が流暢に説明してくれた。「あれは、ここの爺さんが近所の人たちに 無声映…

レースへの参戦

勤めている会社は中小企業である。それがなぜかクルマのレースに参戦した。運営には莫大な費用がかかる。勝ち続けても採算があるとは思えない。実際のところ、負け続けているらしい。まあ、そりゃそうだろう。費用について具体的な数字を同僚から聞く。「と…

楽しませよ

突如、講堂に壮麗なる演奏が鳴り響く。同時に室内照明が点滅する。異常事態が発生した模様。学会に参加していた人々、騒然とする。外国語が交わされるため、推測するしかない。どうやら、いわゆる神の啓示。大きなテーブルにスポットライトが当てられた。こ…

ウサギと一緒

どこかへ行こうとしていたのだ。山だったか、その途中にある神社だったか どうも忘れてしまった。ともかく、そちらの方角へ行くには 右まわりと左まわりのふたつの道がある。ただし、川の土手や水田があるためにとても歩きにくいが、真ん中を行く道もある。…

電源を切る

実家に帰省していた。そろそろ出かける時間だ。使っていた家電の電源をリモコンで切る。いくつもあるので次々と切る。だが、たくさんあるので切りきれない。いけない。もう時間がない。残りの作業は母にやってもらおう。リモコンスイッチを手渡すが、心もと…

駅前の鳩

郊外の駅前ロータリーのようである。高架橋の階段から下りてすぐ横の縁石の上に ひとりの若い女が腰かけている。女は妙な動きをしながら喋っている。「ああ、だめよ。鳩がたくさん飛んじゃうわ」ここからではよく見えないが、衣類や持ち物に隠れ 尻の下に男…

神の声

学校の部室を連想させる狭い部屋。放送部か声劇部ではなかろうか。なぜなら、ひとり台本を読みながら録音中。やがて仲間の部員たちが入室してきた。そのまま録音の作業を続ける。途中、「神の国」と読むべきところを 「神の声」と朗読してしまう。つい「やり…

後輩の彼

後輩の彼について考えていたのだった。短命と思われた彼も、いつしか結婚して とうとう子どもまで生まれたそうだ。その彼が半分ほどオカマを掘られたとか。 しかも掘ったのが自分かもしれないという。そんなことを考え続けたせいか まるで既成事実のようにな…

クルママネソウ

やばい捜査の対象になっているとかで 自分のクルマを路上駐車させている知人がいた。そのうち同じ道路での路上駐車が増えてしまい どれが自分のクルマか迷うようになったとか。なんだか変な話だな、とは思ったものの、案外 無暗に真似するやつは多いのかもし…

ふるやのもり

下宿に友人が遊びに来ていた。大学時代、映画研究会に所属。そこにいたサークル仲間を連想させる。詩に興味あることを公言していた男だった。友人は他愛ない会話を長々続ける。なかなか帰ってくれない。逃げるように部屋を出ると、そこは廊下。外は暴風雨ら…

掃除の依頼

知り合いのおばさんから頼まれたのだ。公民館みたいな建物の中を掃除して欲しい、と。それで、一緒にやろうと友人を誘ったのだが そいつは約束の時刻になっても来ない。仕方ないので、ひとりでやる。なにやら竹の棒がたくさん転がっている。先っちょのない竹…

犬の目覚まし

犬の鳴き声で目覚めた。起きると、裏庭との境のところに犬がいる。隣の家で飼ってる小犬だ。吠える感じがないので、かわいらしい。それにしても、なんか変だ。 サッシの網入りガラス戸はどこへ行ったのだ。見ると、小犬の背後、裏庭の地面に倒れている。突風…

名人戦

雑然とした部屋。待合室のようである。その証拠のように 囲碁の名人と将棋の名人の姿がある。手持ち無沙汰からであろう、 それぞれの名人から試合を挑まれる。「よし。いいだろう」どちらとも快く引き受ける。囲碁と将棋の二面打ち指し。こういうのを一度や…

しきたり場所

さる季節を意味する場所において どこぞの海または山を意味する力士が優勝した。なので当然のように土俵上にて これより表彰式が行われようとしている。ところが、優勝した力士は着物を着ている。浴衣でも羽織でもなく、いわゆる町人風情の着物。どうやら優…

アリの非常食

その若者には特殊能力がある。ある論理ゲームの第一人者なのだ。誤りに気づいたら、誤りを誤りと認め 適切に改める能力、と呼べるかもしれない。ある印象的なエピソードがある。若者は大量に徘徊するアリの群をかき集め その黒いぞわぞわしたものを片手でつ…

鳥の木

誰かに何かを言われて 僕はそこから帰るつもりだった。そこは湿原のようなところ。ボートのような滑るものに乗っていた。そして、鳥の木を見つけた。真っ青な空を背景に 真っ青な水面から木が生えていた。細くて黒い枝だけの木なのだけれど まるで葉のように…

煙キノコの曲芸

やればできる、ということはある。今、会場から引きあげてきたばかり。そこでさんざん曲芸を見せびらかしてきた。そしたら、お嬢ちゃんがついてきて 「真似してもうまくできない」って嘆くんだな、これが。「ここには道具もないからできないよ」そう断っても…

組み込み理論

中学校の前の通りを歩いていたら 中学生がぞろぞろ出てきた。いや、中学生みたいなのが出てきたから そこが中学校なんだ、と思ったのだ。あとで気づいたが、ちょうど時期的に 卒業式だったのかもしれない。「楽しい三年間でした」なんて棒読みみたいに誰か言…

ごうざい

お寺のような建物の中にいる。観光なのか参拝なのかよくわからない。 順番が巡り、棚の前に座る。正座ではなく、背もたれに座った形。ただし、足を前に伸ばした感覚はない。小さな仏像が棚の上にいくつか置かれてある。各人が各様に拝む対象なのだろう。その…

かまびすしい

ネットでメールだったか 未知の女の子とコメントのやり取りをしていた。二者択一の問い合わせをしているのに 相手は悩んでしまって、文章も混乱気味。「とにかく、よろしくお願いします」そのように締めくくられても困るだけだ。いつのまにか原発施設か米軍…

窮地の気配

妙齢の女性と一緒に飲んでハシゴして その帰り道のようなのだ。別れ際に潤んだ目で彼女が言う。「今日はとっても楽しかったわ。じゃあ、またね」そして挨拶みたいに、僕の股間を片手でつかむ。ああ、そんな大胆な。なかなかの快感が走り抜ける。じつは、ちょ…

恥ずかしい芸能人

歌手でもあるところの甘いマスクの芸能人が あるバラエティ番組で折り紙を披露している。ヨットの帆のような形を目指しているらしい。詳細は不明であるが、その折り紙によって ある特殊な幻覚効果が得られるそうだ。ただし、彼は正しい折り方を会得していな…

卓球の試合

校舎の廊下を歩いている。すると、おれは学生。そんな気がする。苦手な教師でもいたのか、立ち止まる。そして、今来た廊下を引き返す。丁字路を曲がり、階段を見かけたが 上ったか、または下ったかの記憶はない。やがて広い講堂のような場所に出る。ここは上…

閉まらずのドア

トイレの個室に入って閉めたつもりなのに ふと見ると、ドアが少し開いている。すぐ外は廊下、歩く人の姿も見える。丸出しの尻を知人女性に見られてしまった。彼女の悲鳴、あわててドアを閉める。ところが気づくと、やはりドアは開いている。「あなた、なにし…

撮影会

パソコン画面に向かい、動画ソフトで編集している。ネッ友から許可得てダウンロードした音声に 手持ちファイルの画像を適当に選んで当てはめる。こんな毎日やってる作業、メモするまでもない。ましてや作品にはなるまい。そう考えていたら、続いて撮影会の場…

カエルのパズル

いくつか動物がいる。これら動物は種類によって 動ける方向やパターンが異なる。いわば将棋やチェスの駒のようなもの。たとえば一匹のカエルがいて こいつはチェスのナイトの動きと同じらしい。迷路の袋小路みたいな場所で、仲間と組み 敵将を今まさに詰まさ…

母の死

実家の老母が亡くなった。歩行困難が進行し、隣の市に住む兄夫婦が世話していた。施設入居を拒み、訪問介護を受けながら雪国で独居。設置された動作センサーに反応ないため、異常発見。玄関は施錠され、最初に近所の駐在さんが勝手口から侵入。浴室の湯を張…