Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2013-01-01から1年間の記事一覧

もっともっと

そこまでではなく その先へ もっと遠くまで 届くよう もっと強く もっと高く もっと激しく きりきり舞いに うわずって てんてこ舞いに のけぞって 外枠なんか 取っ払い 内情なんか 気にもせず もっと もっと もっともっと その先へ「ゆっくり生きる」はるさ…

夜が明ける頃

ほのぼのと夜が明ける頃かなたで角(つの)のない鬼の子が生まれこなたで翼なき天の使いが消える。皆、寝ぼけ眼(まなこ)ゆえ気づかれることもなく。 元「koebu」宏美(ろみりん)さんが演じてくださった! When the Evening EndsWhen the night slowly dawnIn …

割れそうな恋

恋がダメになるとか 壊れるとか いろいろ申しますけど じつは恋 もともと割れておるのです。なにかの加減で たまたま くっついているだけ。永久磁石じゃなくて 電磁石。電気流れにゃ ただの石。(逆に流れりゃ 反発だってするかもね)だから恋は儚くて なか…

元気を出して

あなたは私の元気です。私の元気はあなたです。あなたがいる。私がまわる。あなたのまわりを私がまわる。クルクルクルクルまわる私は元気です。クルクルクルクルいつまでもあなたのまわりをまわらせて。 元「koebu」宏美(ろみりん)さんが演じてくださった…

暗く長い廊下

暗く長い廊下の向こうには石炭置き場がある。その当時の学校のストーブは電気でも石油でもなくて 石ころの石炭を燃やしていたのだ。崩れた崖のような黒い石炭の斜面をスコップで掘り 銀色のブリキのバケツに移す。そして、それを教室まで運び ストーブの脇に…

内乱の兆し

たとえば 笑わなくなりたとえば 無口になりたとえば 思い詰める。それは 目でありそれは 唇でありそれは 指である。とても 空しくとても 苦しくとても 痛ましい。「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった! Signs of Civil War For example You st…

氷の彫刻

美しき氷の彫刻。 苦労して彫り上げたそれが無残に壊れたからとて いまさらなに悲しむことあろう。 もともと氷は融けるもの 壊れてしまうもの。 氷を選んだ時点ですでに悲しき。元「koebu」yayaさんが演じてくださった!Ice SculptureBeautiful ice sculptur…

氷の瞳

その瞳に魅入られし者は 凍ってしまうのです。身も心も固まって 蛇に睨(にら)まれた蛙です。ちょっと叩いてご覧なさい。ひびが走って きれいに割れて 落ちて砕けて 目も当てられぬ。それが氷の瞳です。 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった!…

渡れない川

対岸が遠いわけではなく 流れが激しいわけでもない。それなのに渡れない川がある。対岸を眺むれば美しい花が咲いている。誘うように川面(かわも)はキラキラ優しく輝いている。それなのにその川は渡れない。少なくとも今の私には渡れない。今の私にはまだ渡る…

消えぬ想い

消しゴムでは 消えません 修正ペンでも 消えません 紙を貼っても 削ってみても なにをしたって 消せません 消したふりしたって 消えてません なかったことにしようとしても ちゃんと残っているのです あなたが書いて あなたが刻んで あなたが残した わたしの…

氷上の舞

氷の上で舞う君はきっと世界の真ん中にいる。君の視点を中心として世界がクルクルまわり出す。君がジャンプすれば世界は息を呑み君が着地すれば 世界は喜びを取り戻す。世界は君を待っている。そうさ、世界は君の笑顔を待っている! 「宇宙ゆく船」たけだ あ…

ナメクジとカタツムリ

みなさん、こんにちは。よい天気ですね。本日は、これからナメクジとカタツムリが競走するそうですよ。さっそく、スタート! でも、どうしたのでしょう。スタート合図の銃声を聞き逃したのでしょうか。いつまで経っても、どちらも動く気配がありません。あっ…

鳴るは鳴らぬ

ある音が鳴った ということは すなわち 別の音が鳴らなかった ということ。 鳴った音は それなりに美しかったかもしれない。 けれど 鳴らなかった別の音は もっと美しくはなかったか? いや、違う。 どんな音も 鳴らなかったのかもしれない。 音が鳴らなかっ…

友だちはいない

「助けてくれよ」「いやだね」「薄情だな」「その通り」「友だちだろ?」「俺に友だちはいない」「そんな」「いるのは、敵。でなかったら、手(て)下(した)」「この際、手下でいいからさ」「それが手下の態度か」「この通りです。お願いします」「ふん。まあ…

葉の露

好かれていたとは つゆ知らず 手(た)折(お)った草の 葉の露が 濡らした袖(そで)の 染みぞ哀しき元「koebu」yayaさんが演じてくださった! Leaf DewI never knew I was liked by youThe stains of sleeves wet With dew of dead grass leaves Are sad

辿り着けない

どんなに頑張っても どんなに無理をしても どうしても辿り着けない そんな場所がある どんなに泣いても どんなに叫んでも どうしても叶わない そんな願いもある それでも行くのか それでも望むのか 辿り着いて落胆し 叶って失望するかも 知れぬのに 元「koeb…

追いかけっこ

僕たちは長い間なにかを追っていたはずなのに追い着いたのか追い越したのかそれとも逃げられてしまったのかよくわからないままいつのまにか追うことをやめてしまい立ち止まったり戻ったりしてふと気づくとなにかを追うどころかむしろ逆になにかに追われてい…

名残の月

君が名残(なごり)の月なれば 棚(たな)引(び)く雲の絶え絶えに 折りて重ねて裏返し 飛べや真白き紙の鶴元「koebu」清華さんが演じてくださった!「note」yayaさんが演じてくださった!note.com A Remnant of Moon If you are a remnant moon In the endless c…

はやくおいで

はやくおいでと 呼ぶからに はやく行ったば はやすぎただあれもいない なにもない まあるい月さえ ありませぬここはどなたの あそび場じゃ 鬼や天狗の あそび場じゃホーイ ホイ元「koebu」Robin247さんが歌ってくださった! Come Quickly It was too early i…

神殿の巫女

聖なる神殿の中 秘めやかなる祭壇の前で 麗(うるわ)しき巫女(み こ)がひとり泣いていた。彼女は知ってしまったのだ。この身の行く末と この世の行く末を。その時 祭壇の上に 神が光臨(こうりん)された。神はおっしゃられた。「聡明な娘よ。私を見なさい」巫…

過ぎたこと

楽しかったことや 苦しかったこと 悲しかったことや 嬉しかったこと 悔しかったことや 切なかったこと どうにもならなかったことや なんにもならなかったこと あれも これも それも どれも みんな みんな 過ぎたこと とうの昔に 過ぎてしまったこと 元「koeb…

苛立つ

夏の暑さに苛(いら)立(だ)つのではなく 夏の暑さに負ける自分に苛立つ 冬の寒さに苛立つのではなく 冬の寒さに負ける自分に苛立つ なぜそんなに簡単に負けるのか なぜ反撃せずに土俵を割るのか もっと暑い国の人だっているのに もっと寒い国の人だっているの…

みんなの声

それぞれの声は それぞれ違うけど それぞれの声が集まってできる みんなの声は なんだか どれも 似ているような気がする。結局 そういうところに落ち着いちゃうんだ。なんだかとっても さびしいな。 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった!元「…

カボチャの寝言

あっ・・・・ナイフなんか持って・・・・まさか・・・・目玉くりぬいてランタンにするつもりじゃ・・・・ひどい・・・・えっ・・・・違うって・・・・楽器にするの?・・・・弦を張ってシタールとかじゃなくて・・・・お寺の木魚みたいにたたくの・・・・やめてよ・・・・食べ物たたくなんて・・・・そりゃま…

扉は開かれる

呼べど叩けど 開かぬ扉裸踊りで 開くのは パトカの扉じゃ あるまいか あるまいか 同名の短い器楽曲をBGMに、自作自演。 Doors OpenYou can call it But it won't open Isn't it a police car door That opens with naked dance? Isn't it?

朝日の外で

辺鄙(へんぴ)なところにあるためけっして朝の訪れることのない村があってそこでは鶏(にわとり)も時を告げない。そのため突然のように昼が始まり 不意打ちのように昼が終わる。あとはただ眠るしかすることのない漆黒(しっこく)の闇の夜があるばかりである。 …

水辺にて

一匹の蟹が水辺を這っていた。そこに一匹の亀がやってきた。「やあ、カニさん」「やあ、カメさん」そんな挨拶はなかった。これは童話ではないのだから。危険を感じ、蟹は逃げた。あやうく亀に踏み潰されるところだった。「カメさん、足もと見てよ。危ないじ…

運命の吹き溜まり

ようこそ。不幸なる紳士および淑女の皆さん。なにはともあれ 本日はまことにご愁傷様です。あなた方がまずすべきことは すべてに対して諦めることです。 ここは呪われた運命の吹き溜まり。わずかな希望の光さえ届かず どこまでも漆黒の絶望の闇が続くばかり…

象徴としての沼

美しき顔を沼の面(おもて)から突出してはいるものの やはり、どこかありきたりな美しさ。その首から下の隠された大部分はおそらく醜く、不具(ふぐ)不浄(ふじょう)であろうと思われる。なぜそこまで外面(そとづら)を取り繕うのか。いつか沼は涸かれる。…

午後のお茶会

白クマさんの家における 午後のお茶会に招待されたのは 青キツネさん 赤ウサギさん 緑キャベツさん の3名でした。お茶会が始まってすぐに誰かが こっそりと誰かのカップに薬を入れました。全員がお茶を飲み終えると1番目に 緑キャベツさんが殺されました。…