Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ガラス戸の向こう

その部屋がトイレであることに入ってから気づく。トイレであるなら排便せねばなるまい。だが、側面が壁ではない。ガラスの引き戸になっている。外は道路に面し、外国人が外国語で談笑しながら通り過ぎる。外国人だから気づかずに行ってしまったが 同国人なら…

許せない人

繁華街の目抜き通りを通行人として歩いている。テレビのニュース番組の取材であろうか ある男がインタビューを受けている。「あんなことをする奴は絶対に許せませんね」そんなふうに息巻いている。つい最近起きた無差別テロ事件についてであろう。彼のすぐ後…

両手の実験

分解されたモーターを連想させるそれは 不思議な装置だった。手のひらを近づけると動きや形を変える。さらには両手に挟まれると 磁場における砂鉄みたいに緊張して変形する。理屈はわからないが、なかなか興味深い。そんな実験をしているところへ 「どうした…

山中のゴルフ

ゴルフ場とも思えない山の中でゴルフをしている。会社の上司や同僚たち数人で、森の中に打ち込み とんでもない場所にあるゴールを目指す。難コースどころの騒ぎではない。まず、なによりボールを見つけにくい。先輩たちが苦労している姿を見ながら 私も真似…

前後のロール

自宅で使っていた大きな機械が故障してしまった。どんな機械なのか説明しにくいが、その内部に FAXのインクリボンを大きくしたような部品がある。連絡したのか、定期的に巡回しているのか 好都合なことに印刷会社の営業の二人がやってきた。二人は分担して分…

のどかな村

その村はよくわからない場所にあるのだった。ぐるっと山を巡って、トンネルみたいな通路を抜け まったく意外な方向から辿り着くのだ。こんな場所にこんな村、あるはずない。そうは思うものの、実際にこうして 目の前にあるわけだから、どうにも仕方がない。…

細長い記者会見

僕たちはプロではないが、野球チームらしくて 他のチームとの親善試合を終え、記者会見を開いている。だが、カメラを抱えた記者の姿はなく、立ったまま 細長い弧を描いているだけなので、そのマネゴトか。黒人の招待選手の話題となり、彼が前に一歩出て 三振…

続けていてくれた

曲がりくねった山道の途中あたりで 知人が碁会所をやっているという。自分が開いた店は傾いて畳んだが ここで子ども教室として続けていたらしい。その噂の教室に入って、空いてる席に座る。子どもだけでなく老人の姿も見える。ああ、これはなかなかいいな、…

腐女子の不二子ちゃん

不二子ちゃんは 腐女子(ふじょし)でござる 腐った女さ BLビーエル好きさ ブラック・リストに近いけど ベーコン・レタス ありえねえ BLは ボーイズ・ラブ 野郎と野郎が 見つめ合う Oh! Oh! 男同士の恋愛の なにが楽しい 不二子ちゃん ファンタジー とか言うけ…

帰社すると

夜の車道を渡ろうとしている。左右から来そうなクルマは、しかし来ない。渡る向こう側のビルの一階に店がある。店番の老人が今、帰宅するところ。「ああ、今帰るところだな」と思う。「もう誰もいないよね」とこちらから尋ねる。老人は「うん。ただ、鍵は」…

赤い羽根

モヤモヤして、なんだかスッキリしない。いわゆる「赤い羽根の共同募金」について。社会福祉法によって認められた唯一の募金運動。民間社会福祉団体が個々バラバラに募金しないための方策。なるほど。まあ、それはそれで良しとしよう。 しかし問題は、あの赤…

移動カプセル

彼が利用するのは移動装置またはその設備。錠剤を連想させる形状のカプセルの中に入り 狭苦しい座席に数名で乗り込む。服装などからして宇宙船であろうか。またはチューブ状通路の真空移動車両かも。生徒たちとその親たちがペアになっている。移動先でPTAみ…

手水とカミソリ

神社にある手水舎(ちょうずや)のような設備。その手前で私はひっそりしている。年配の夫婦が気づかずに通り過ぎてくれるを願うが やはり叶わない。旦那さんが挨拶なんぞして、水で手を洗う。いや、手で水を洗ったのだったか。ふん、まあいいや。奥さんは、…

進行中の作業

大きな建物、校舎であろうか。せかされるように木造の階段を駆け下りる。文化祭か運動会か、大きなイベントを控え やらねばならないことが多いのだ。階段から廊下に降り立ち、左から旋回する。 階段の裏側の位置に地下へと続く坂道があった。そこへ入る直前…

世話になった人

ここは実家の二階。起きたばかりで頭がぼんやり。家族の誰かとやりとりしてから 思い出せない用を思い出し、客間に入る。そこには世話になった人が寝ているはず。まだ眠っていてくれたらありがたい。残念ながら彼は横になったまま目覚めていた。「ああ、もう…

近づけない家

僕は巻物のような地図帳を手に持って 見知らぬ町並みを独り歩いている。彼女の住所が書かれたメモは胸ポケットにある。こうして気になる知人の家を探し出すのが 僕の趣味だった、という時期があった。娯楽が今ほどない時代のゲーム感覚だったのだろう。だが…

うなだれた犬

ある犬を自転車の荷台に乗せて その家の庭まで僕は運んだのだった。その犬を途中で見つけて通り過ぎて この家の前で庭にいるそっくりな犬を見つけた。それで、わざわざ引き返して連れてきたのだ。はっきり聴き取れなかったが この家の奥さんらしい女性の声が…

お姉さんな上司

彼女はお姉さんみたいな年上の女性。 初めて社員として就職した会社の上司だった。性格は悪かったが、なかなか綺麗な人。 僕は憧れみたいな気持ちを抱いていた。僕たちは向かい合わせのデスクに坐り よくわからない仕事を片づけようとしている。手描きマンガ…

鳥が鳴く

ちょいと疲れたので ちょっと昼寝しようとして ごろんと寝転んだ。 ぼんやり目を閉じていたら 窓の外のすぐ近くで 変な鳥の鳴き声がする。こんなの初めて。しばらく聴いていたら なんとなく「耳掘れ」と聞こえる。どういう意味だろう。しばらく考えていたら …

接待する

滅法偉いという評判の男を接待することになった。つまびらかでないが、大会社の会長だとか 経団連のトップだとか、そういう類の人物らしい。ここは、ファーストフード店みたいな食堂。こんな庶民的な店でいいのだろうか。私の他に若い女もひとり同席していた…

ニートの新田君

ニートの ニートの 新田君 おニューで ニートだ 新田君 横文字 カタカナ 流行はやりもの 新しいものが 大好きさ Hey! 最先端を 行ってるぜ 遊ぶの好きさ 仕事はきらい 働いたら負け かなって思ってる 親におんぶ 社会にだっこ 甘えん坊だね 新田君 だって ほ…

凍った路面

家の前にある道路は坂道。今朝はひどく冷えて路面が凍った。鈍く朝の光を反射して、所々白っぽい。こちらの歩道から向こうの歩道へ行くためには アスファルトの車道を越えなければならない。渡り始めてすぐに滑りそうだな、と気づく。坂道を上りたいが、ここ…

黒い珠

そこは中華料理店または異国風なゲームセンター。卓上の器に黒水晶のような珠が盛られてある。それをすくってタピオカのように口に含む。だが、味はよくわからない。その珠を転がして遊べそうな迷路が近くにあった。竜をあしらった精緻なデザイン。いくつか…

アーミーな訓練

軍隊を連想させるそこは あるいはスポーツジムかもしれない。野郎ばかり、黙々と肉体を鍛えている。ただし、明確な規律があるわけではない。状況に応じてシステムは変化する。さっきまで木の板をバケツリレーしていた。ちょっと場を外して戻ってみたら 人気…

気づきたくない

おれたちは逃げていた。潜在的に抗うものの、顕在的に逃げてしまう。いつからだろう。思い出せなくなった思い出がいくつもある。きっと、思い出すのに飽きたのだ。逃走の途中、ふと気づく。おれたちはある種の利便性ゆえに一緒にいるわけだが 反面、一緒にい…

ゲーセンのコイン

仲間と入場したそこはゲームセンターを連想させる。ただし、量販店、または食堂街かも知れぬ。空飛ばない円盤みたいな大きな円卓があった。そこの円周部分は自動予約受付装置になっている。そこのボタンを押して待つと、コインが出てきた。それを使えば、対…

頑張る彼

それなりに彼は頑張っている。そのせいかこの度、さる舞台に出演することになった。なにやら表彰も受けたようである。だが、その栄光は長く続かないだろうな。なんとなく、そう思う。無駄にアクが強い。不器用で失敗が多い。協調性もなさそう。勢いだけでや…

新任教師

どうやら私は中学校の古株の教師らしい。新学年となって新任教師をフォローする立場。しかし、残念ながら問題がある。この学校特有の問題なのか、一般にも言えるのか つまびらかでないが、ともかく普通には教えられない。能力不足とか方法論ではない。構造と…

そのうち来る

知っているが一度しか会ったことない女と ついさっきまで話をしていた気がする。それで、なんとなく予感があった。ごく近く、家の外で声がする。「はい。ただいま現地に到着しました」上司へ報告しているのか、青年の声。続いて、すぐに玄関ドアにノックの音…

いつもより急な坂道

最寄駅へと歩いているのだから、出勤の途中だろう。前方に女の子が歩いている。OLかもしれない。学生かもしれない。やや離れており、後姿だけではわからない。短いスカートが揺れ、白い脚が小刻みに動く。その女に近づかんと速足になる。いつもの急な坂道が…