Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ポリ袋の中の思い出

彼はたくさんの思い出を持っている。役に立ちそうもないものばかりなので 他人が見たら呆れるしかない。それぞれポリ袋に入れてあり それぞれラベルまで貼ってある。ラベルにはタイトルが記(しる)されてある。たとえば・・・・小石が一個入っていて 「修学旅行に…

迷信

霊柩車が黒猫を轢(ひ)くと車中の仏(ほとけ)が生き返る。水中に潜って呼吸を止めているとあまり長生きできない。貧乏人に情けをかけると借金を申し込まれる。朝、クモを見て殺さないと夜、クモの巣が張られている。同一人物が出会ったら先に目をそらした方が…

地下室の惨劇

「地下室への入口よ」廊下廊下廊下廊下廊下 階段 階段 階段 階段 階段 階段「暗いから、気をつけて」 踊り場 階段 階段 階段 血 階段血 階段 死 体 階段床床床血血血血床床床「きゃああああああ!」「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださった! 「no…

泡の割れる

~~~~~~~~~~~~~~\ぱちん/~~~~~~~~~~~~~~~ ○ ぷ く ○ ぷ く ○ ぷ く ○ ぷ く ○ に ん ぎ ょ ひ め「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださった!Bubbles Break~~~~~~~~~~~~~~\Splat/~~~~~~~~~…

夜よ明けるな

約束されていたかのように夕暮れが訪れ 初めて君を迎えた部屋は静かに暗くなる。ふたり、とりとめのない話を いつまでも話し続けようとしていた。笑うと嬉しくて、嬉しいから笑い ふたり、薬も酒も飲まずに酔っていた。まるでふたり 重なった夢を見ているよ…

眼がかゆい

春はあけぼの、かゆい季節。眼がかゆくてかゆくて、やりきれない。花粉アレルギー反応。いわゆる、花粉症。まぶたの上から、こすったってダメ。洗眼しても、なおらない。かゆい、かゆい。痛い、つらい。本当に情けない。泣きたくなる。なみだで濡れても、症…

Snow Dance

降る雪 降る雪 降る 降る 降るよ たくさんの 雪 雪 雪 雪 白くて 小さな 天から届く お手紙よ 文字は結晶 六角 三角 こな雪 わた雪 ぼたん雪 真っ赤な ホッペに くっついた 舞う雪 舞う雪 舞う 舞う 舞うよ 子犬も 舞うよ 子供も 舞うよ みんな みんな みん…

うつろな心

わかってもらいたい人に わかってもらえないのは とてもつらく とても哀しい。人と人とが互いに わかり合える部分は 気持ちや考えの ほんの表面的な ほんの一部に過ぎない ということ せめてそれくらいは 君と わかり合いたい。「note」yayaさんが演じてくだ…

お願いがあるの

ねえ、あんた。いいかしら。お願いがあるの。ううん。なんてことないの。ごく簡単なこと。あのね。その前に、確認ね。世界は今だけだって、知ってた? 知らなかったの。でも、そうなんだよ。たとえば、「後悔」は 過ぎ去ったことを悔やむ、今の気持ち。それ…

つれない素振り

おいらが橋の下へ潜り込むと、そこには先客がいた。見覚えのない女だった。「お邪魔するよ」とりあえず挨拶しておく。「まったくだね」迷惑そうな声。薄暗くてはっきりとは見えないが女は取り込み中のようだ。「何してんだい?」つい尋ねてしまう。「詮索し…

君のいる場所

僕は、どこへでも行ける。灼熱のアラスカ 草木生い茂るサハラ砂漠 遥かなる馬頭星雲の鼻面だろうが 未発掘の古代ファラオの棺の中だろうが 僕が想像しうる場所であるなら どこへでも行くことができる。ただし、君のいる場所を除いて。君がどこにいるか、僕は…

転がる想い

なにがなんだかわけがわかんなくなって 僕は背を丸めて考え込んでしまって 足とひざを抱えたら ますます丸くなってしまって そのうち僕は まん丸なボールになっていて たまたま坂道にいたものだから そのまま坂道を転がり始めてしまって ボールだから ときど…

どこまでも続く道

広い道に出た。曲がりくねって先が見えない。ちょっと散歩のつもりがすっかり道に迷ってしまった。なぜか長靴を履いている。空は今、見事に晴れているのだから 出る時、雨でも降っていたのだろうか。それにしては傘を持ってない。どうも思い出せないのだけれ…

臨月

あっ、動いた! 蹴ったのかな。それとも、殴ったのかな。案外、頭突きだったりして。なんにせよ、なかなか元気そうで 母親としては喜ばしいことだ。でも、いったい誰の子なんだろう? 父親がはっきりしないのだ。だいたいの形がわかればわかるはずなのに 先…

ワニの背中

水を飲んでいたらワニに噛みつかれた。あの巨大な洗濯バサミのような顎においらの頭が丸ごと挟まれてしまったのだ。まったく油断していた。想像さえしていなかった。そのまま水中に引きずり込まれ、死ぬほど水を飲まされた。さらに上下左右に激しく振りやが…

話し相手

いつの間にか年を取ってしまい 家族も友人も親しい知人もいなくなってしまった。ひとりで寂しいような気もするな、と思っていたら とうとう飼い猫が喋り出した。「おいらが話し相手になってやるよ」おやおや、これはいけない、と思った。記憶力が弱まり、月…

浴槽の沈没

仕事を終え、疲れて家に帰り 風呂に入ったら、浴槽が沈没した。「おーい、助けてくれー!」妻が浴室に入ってきた。「あなた、どうしたの?」「見てわからんのか」「わからないわ」なるほど。言われてみると、そうかもしれない。だが、納得してはいけない。お…

なんにもしない夜

今夜は静かだ。なんにもする気がしない。テレビはつまらない。パソコンは面倒臭い。本を読む気にもなれない。音楽を聴く気にもなれない。そもそも考えるのが億劫だ。眠りたい。・・・・いや。眠りたくもない。なんにもしたくないのだ。動きたくない。息もしたく…

また来てね

ひとりで世界中を旅していた頃 僕はある女の子と出会った。僕たちは深く知り合うことになり 一緒に寝たりさえした。「また来てね」「うん。そのうちね」別れ際、そんな口約束をした。けれど、時は流れ そのうち僕は旅をやめてしまった。いや、そうではない。…

ミツバチの巣

ミツバチの働きバチはメスである。主に花粉と蜂蜜を食べて育ち、働きバチとなる。働きバチの頭部から分泌されるローヤルゼリー これのみで育てられたメスは女王バチとなる。オスは、巣の中では餌(えさ)をもらう以外特に何もしない。ある晴れた日、オスは交尾…

世界超能力コンテスト

ある国際的な秘密結社主催による世界超能力コンテストが秘密裏に開催された。このコンテストにおける「超能力」とは通常の人間には実行できない特殊能力を意味する。科学的に説明できない超自然的な能力とは限らない。たとえば、世界一足の速い人も超能力者…

約束の場所

約束の時間に 約束の場所に着いたら 「約束が違うわ」と言われた。「約束通りだよ」と言うと 「約束通りの人じゃないじゃないの」と言い返された。「約束が違うよ」と言うと 「違う約束よ」と言い返された。ああ。約束なんかするんじゃなかった。元「koebu」…

良心的な殺し屋

俺は殺し屋。しがない稼業、とは思わない。ターゲットは依頼者本人のみ。つまり、本人からの嘱託(しょくたく)殺人だけを専門に請け負い 自殺幇助、承諾殺人の自殺関与・同意殺人罪に相当する。その未遂も含め、自殺は処罰されないにも関わらず なぜか自殺関…

化粧台

私の目の前には化粧台がある。なかなか立派な代物。実際、高かった。風水によると 「きちんとした化粧台でメイクをしないとブスになる」のだそうだ。通勤途中の電車内は勿論 洗面所なんかで立ったままチャチャっとやってはいけない。電車は乗り物。洗面所は…

異境の空

この星の空には鳥がいない。まったく一羽もいない。その空の下、この地上には トカゲみたいな爬虫類タイプの動物がいる。一角獣みたいな哺乳類としか思えない動物もいる。さらに、海なのか湖なのかわからないが 水中にはサカナらしきものが泳いでいる。けれ…

一緒に行こう

「ふふふ。とうとう見つけたぞ」「ああ。とうとう見つかっちゃった」「さあ。おれと一緒に行こう」「いやよ。行かない」「どうして?」「あんたと一緒に行くのがいやだからに決まってるでしょ」「こらこら。わがまま言うんじゃない」「なによ。そっちこそ、…

引きずる

私には見えるのです。あなた方が、その背後に、足枷(あしかせ)のように ずるずるずるずる引きずるものを。たとえば、ほら。あそこを歩いてらっしゃる あの顔色の悪い猫背の男の人。あの人は、なんというか なんだかとても古びた箪笥(たんす)のようなものを …

雨もよい

ありふれた男女の別れ話である。「別れよう」ついに言ってしまった。「そうね」彼女も予想していたのだろう。一緒に店を出る。見上げれば 今にも降りそうな空模様。「これ返すわ」彼女が差し出す。それは僕の小指。「いいのかい?」「私が持っていても仕方な…

許してあげない

私はあなたを許しません。あなたにとってそれは信じられない事かもしれませんが どうしても私には許せないのです。私が顔を汚してしまった時 あなたは私の顔を拭いてくれましたね。別に立派な事をしたつもりはなく あなたとしては至極当然の事をしたまで。そ…

残された心

私の心は海の底 大きな貝の殻の中 もしも朝日が射したなら 真珠色に輝いて うっとりさせて見せようものを なかなかに 貝の殻は開かない ましてや 海の底なれば元「koebu」makotoさんが演じてくださった! Heart Left My heart is the bottom of the sea Insi…