Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

腐ったリンゴ

目の前に大きな木箱がある。採れたてのリンゴがたくさん入っている。それは私のものではない。人物は特定できないものの、他人のものだ。この中に私のリンゴが一個、紛れ込んでしまった。それが議論されるほどの大問題になった。この木箱はもう売り物になら…

賢い買い物

箪笥(たんす)のような手提(さ)げバッグのようなものを買う。下半分を交換できるタイプ。下半分はどうせ外すことになる。あらかじめそうするとわかっているなら最初から上半分だけのものを買うべきだったか。いいや、これでいいのだ。これが賢い買い方だ…

物と人

物をぞんざいに扱う人は人もぞんざいに扱うと思ってまずまちがいない。物や人に限らず、おそらく考え方やイメージやルールに対してもそうだろう。ゴミの出し方ひとつで、人は知れる。 Things and PeopleThere is no doubt that people who handle things car…

変な本

変な本を読んでいる。正確には、ページを折って切り欠いたような本。飛び出す絵本が飛び出さずに我慢してる感じ。それを作っているのか、読もうとしているのか。とにかくページをめくりながら試行錯誤している。何事かなさんとする態度は好ましい。読むだけ…

ぬいぐるみ小屋

山道を平らにしたような細くて曲がりくねった道を歩いていた。ところどころに物置小屋が建っている。あふれんばかりに詰め込まれたぬいぐるみ。着ぐるみを着た女の子たちの小屋もあった。「ヘイ。いかすね、お兄さん」同じく着ぐるみを着た野郎どもの小屋も…

お笑いの限界

若きお笑い芸人が修行している。修行しながら彼は考える。ああ言えばこう言う。ああすればこうする。これではせせこましい格闘技だ。同じことばかり喋っていたら飽きられる。観客を喜ばせ続けるためにはまずイメージを豊かにせねばなるまい。彼は空中に浮か…

戦争が始まる

我が国が他国と戦争を始めたようなのだ。ただし、これから始まるのか、すでに始まっているのか、微妙なところ。寄宿舎の着替え室のロッカーの前でそれについて同僚たちと話し合ってしている。「まさか戦争が始まるとは思ってもいなかったよ」「おれもさ。そ…

罠に用心

デパートのような高校だ。デパートなのに高校だ、と言うべきか。近所の女子中学生が数名パンケーキを食べにやって来た。「ここ、おいしいのよね」なんとも誇らしい気分。階段を飛び下りるか迷っていたら踊り場のテーブルに碁盤が置いてあった。近所の大学生…

犬毛の手

ペットショップだろうか。たくさんの犬がいる。それらを丸くして背を撫でる。犬どもの毛が手に移る。人の手への犬の毛の移植だ。これを集団でやっている。おれの後ろにいた奴がその犬毛の手でおれの尻を撫でた。妙に気持ちよくて変な声を出してしまった。 Do…

コンサートへの誘い

放課後の校舎にて。小学生、またはせいぜい中学生の気分。近く、無料コンサートが開催されるそうな。それで同級生から声をかけられる。「おまえ、ひとりで行くのか?」「誘ってやろうか?」よくわからないので返事もできない。 「それ、いつやるの?」「今度…

タイトル戦

文章によるバトルがあるそうだ。二人の対戦者は一枚の原稿用紙を挟んで向き合う。深く礼をして共同制作が始まる。一方が原稿用紙に万年筆で一行書き込む。続いて他方が同様に一行書き込む。これを交互に繰り返す。一行書くたびにAIソフトの評価値が動く。書…

人形集め

なにやら人形を集める催(もよお)しに参加している。運動会の借り物競走みたいな感じ。特技を見せ、その対価として人形を受け取る。手品とかアクロバットとか話芸とか、そんなの。集めた人形を持ってビルの屋上へ走る。屋上の上にも屋上があり、階段の迷路…

油絵を描く

寄宿舎の階段の途中で変なものを拾った。片手で持てるほどの骨格標本の部品みたいなもの。それを通りかかった先輩に見せると「どうしたんだ、これは」と驚いた様子。とりあえず、彫刻などが置いてある美術室へ運ぶ。女子生徒が油絵を描いていた。近日中にグ…

九連環

仲間のひとりが不良グループに殺された。足の悪い男で、ふくらはぎにピンポン玉が通るほどの穴。その穴に紐と棒をくぐらせて知恵の輪にしていた。仲間の悲しみと怒りが渦巻く。俺たちは不良グループに復讐するつもりだ。「おまらの骨で九連環(チャイニーズリング)…

エゴ商品

地球にやさしいエコ商品とかいうのを見ると いかにも永久機関のように見えるエセ装置を思い出す。不自然でしょ。自然の法則に反してるでしょ。手間暇かけた太陽光発電システムとか これから発電するためにどんだけ電気を使ったんだ。エコカーとかエコバッグ…

グランドキャニオン

大河流れる大峡谷を見下ろしている。「これがグランドキャニオンか」なんとなく違う気がする。少なくとも地質年代は違うだろう。帰宅してからテレビを観る。ある有名人が駅前で傘を差し、楽しそうに歌いながら天気予報をしていた。彼が美術品の横流しをして…

なんの競技だ

ある競技がバスの中で行われていた。未知の何かを言い当てるゲームのようだ。その少年は鬼神のごとく勝ち続ける。取り巻きどもが天才、神童とほめそやす。そこへ運送会社の大型トラックが現れた。すでに荷台には荷物が満載。それなのに、さらにバスを上に載…

乗り換え電車

駅のホームで電車を待っていた。ところが、問題発生。ここから発車する電車は途中で乗り換えがある。今回、事情により通常の乗り換えができなくなった。車両を四つに解体し、向きを変えて合体させる。よくわからない特殊な技術が必要とされるらしい。乗務員…

赤い吹き出物

なにもないところに下りの山道が現れた。なので、これは夢だとわかった。それで、久しぶりに滑空してみようと思った。迷わず前方の空中へ飛び込む。実際、少しだけ滑空できた。だが、すぐに着地。これでは楽しめない。やはりリアリティが足りないようだ。麓…

壁の展示

等間隔に小さな穴のあいた壁の前で記念撮影。私の他に有名人の姿がちらほら。彼らは壁の穴に紐(ひも)を通して自(みずか)らを縛り 壁に展示された商品に見せようとしている。自重によって首や腰が紐で凹(へこ)むほど。私も真似せんとするが苦しくて続け…

ガラスのコップ

雑貨店でガラスのコップを眺めていた。日本人に成りすました中国人の女が言う。「これは商品ではありません」女の手がコップを覆い隠す。その時、コッブが抜型になったような気がした。コップの飲み口が円形の刃になっていて女の手を円形に抜いてしまうのだ…

一枚の写真

できたての写真を丹念に眺めていた。風景、鳥獣、草木、虫、その他。なかなかうまく撮れているもの。ピンボケでわけのわからないもの。全部で200枚以上はあるだろう。気まぐれな撮影旅行の成果だ。「この人、きれい」一緒に見ていた娘がつぶやいた。なるほど…

内なる異物

わけのわからないもの、得体の知れないものが自分の内にある。自分のものではないものの存在をはっきりと自分の内に感じる。異物としか言いようがない。感じたことのない感じに囚われるため、それが自分のリズムを狂わせる。考えるはずのない考えが浮かび、…

宛名書き

郵便局で宛名を書いている。伯父から現金を預かり、それを見知らぬ親類へ書留で郵送するため。相手は病気かなにかで現金が必要らしい。伯父から預かった現金を実家へ送り、それに母が現金を追加して親類へ送るそうだ。それなら、ここで自分が現金を加えて直…

石の地蔵

村のはずれも吹雪である。石の地蔵が二つ並んで立っていた。どちらも布を巻きつけただけの青紫の衣。腰あたりまで積雪に埋もれている。ふたつの地蔵はよく似ている。なんとも言えない表情。くぼんだ目の暗さが印象に残る。布の巻き方の違いによるのか右が男…

輪投げ

「ほら、棒が立ってるでしょ」「うん。長くて太い棒ね」「そして、ここに輪があるでしょ」「うん。軽くて小さな輪ね」「この輪をあの棒に投げるの」「どうやって?」「よく見ていてね。こうやるの」「わあ。入っちゃった」「うまいもんでしょ」「すごい。や…

悪い夢

まるで悪い夢のようね、と女は思った。眠っていたところを男に襲われたのだ。寝室は暗く、男の顔さえ見えなかった。あるいは寝室ではなかったのかもしれない。寝室には内鍵をかけておいたはず。少なくともそこはベッドの上ではなかった。男の筋肉は硬くて強…

レーティング

武道系の養成機関において訓練の日々。投げ技を主体としたグループに所属している。模擬試合において先輩との対戦。丁々発止の組み手争い。たまたま技が決まる。伝説の達人を投げ飛ばしてしまった。いい気になってはいけない。まだまだレーティングは低いま…