Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

秘められたメッセージ

そう。それはまるで映画を観ているような感じなのだ。私は映画館の観客なのか、あるいは その映画の登場人物なのか、判然としない。いわゆる洋画。素敵なおじさま風の白髪の老人と 快活で魅力的な若い女。ふたりはあたかも恋人のように振る舞い 実際、夫婦か…

好きなもの

昔、いろんなものが好きだった。たくさんありすぎて数えきれないほど。なのに、いつの間にか、それらは輝きを弱め、消えかけ、忘れられている。そして今、ほとんど失われてしまった。たとえ、あまり好きでないとしても あれこれ手を加えるうちに いくらか好…

日報の提出

ふと思い出したのだが ある会社の社員だった時、ある日から急に 作業報告書のような日報を書くことを強制され それを週末に上司に提出しなければならなくなった。最初はきちんと書いて提出していた。そのうち面倒になり、提出が遅れるようになった。いつか怒…

予知夢

こうして私は毎日ブログを更新しているわけだけれども 面白いとも思えない記事は残したくないので またマナーとして残すべきではないと考えるので 毎日、試行錯誤しながら、苦心して編み出している。かつて考えたアイデアのメモを参考にしたり すでに退会し…

電動ドリル

電動ドリルで あなたの額に穴あけて あなたの その まちがいだらけの考えを グリグリ ググリと ほじくり出して みたきもの ハゲタカや ハゲワシは そのハゲ頭を 死体に突っ込むところまで ハゲあがっている のだそうです そのように ハゲタカや ハゲワシが …

静電気対策

もうすぐ乾いた季節がやってくる。静電気が溜まりやすい体質なので 正直なところ怖いし、うんざりする。髪はもちろん、すべての体毛が逆立つ。若い女の子に必ず笑われる。ものに触れるたびに強烈な電撃を受ける。握手したら気絶したOLもいた。暗闇では体の表…

よくわからない

どこかの港の桟橋みたいなところ。僕たちは敵味方に分かれ 集団で球技らしきゲームをして遊ぼうとしている。しかしながら、その肝心なゲームのルールが いまいちよくわからない。そもそも球技にしてはボールが見当たらない。どうやら競技者のうち特定の誰か…

橋の下

朝から冷たい雨が降っていた。橋の下から出る気になれなかった。まだ新聞紙や段ボールに包まれていたかった。腹の虫がうるさく鳴いていた。もう土手の草は食いたくなかった。ノラ猫でもやってこないものか。「おじさん。なにやってるの?」女の子だ。赤い長…

キャラ箱

改札を通り抜けた記憶もないが そこは駅ビルの中央通路のような場所。なかなかにぎやかである。人の流れを避けるような片隅に 小さな簡易トイレみたいな直方体の箱があった。便意もないのになぜか これ幸いとばかりにその中に入ってしまう。その箱の材質はや…

ケンカの勝ち方

ケンカの勝ち方の基本は 負けないこと。勝てるかもしれないとしても 負けるかもしれないなら 闘わぬことである。負けないためには まず、自分の弱みをなくす。なくせない弱みがあるなら、守る。守れない弱みがあるなら そこを攻められて負けてしまう。 なら…

天下の奇書

昔、変な仕事をしていた。製薬会社の社員のフリして大学の医学図書館へ潜入し 指定された医学雑誌の論文をコピーする、というもの。AIDSなども、ニュースで話題になる前に 外国の医学雑誌の論文タイトルで初めて知った。奇形児とか末期の梅毒患者の顔写真と…

高層ビル

深夜の高層ビル。ひとり暗い廊下に立っていると 私の名を呼びながら女が近づいてくる。彼女の声に似ている。姿も似ている。だが、確信が持てない。「あの目が悪いものですから・・・・」そのまま女は通り過ぎ、廊下の奥の闇へ歩み去る。すると誰だ? 彼女ではな…

空き家

静かな昼下がり。でも、蝉は鳴いていた。憶えている。あの日、通りに人影はなかった。塀を乗り越えるのは造作もないことだった。庭は背の高い雑草にすっかり占領されていた。施錠された玄関、木造二階建ての古い家。数年前から空き家なのだった。どの窓も開…

実体コピー

PC、マイク、カメラなどがあれば 文字、音声、映像のコピーは簡単にできる。近頃では準備と手間は掛かるものの 特殊な立体コピーさえ可能になってきた。そこで、想像してみる。完璧な原子レベルでの立体コピーが可能となり 対象のハードもソフトも含めた実体…

つまらん呪い

どうやら私は呪われているようなのだ。しかも、つまらん呪いなのだ。それがどんなに興味深い内容だとしても 私がかかわると、とたんに興味が失せてしまう。すぐに私は退屈してしまう。もうつまらん、と思ってしまう。他の人たちは好奇心やら集中力が持続して…

奇妙な体位

その体位はとても奇妙なので 普通の人には思い浮かびもしない。また、仮に想像できたとしても 普通の人にはおそらく実行できまい。その体位がどれくらい奇妙かと言うと まず言葉では説明できないくらいである。おそらく物理的に無理があるのだろう。色々と込…

粘土の恋人

とても美しい恋人がいる。誕生日にプレゼントするため 彼女そっくりの人形を作るつもり。きっと彼女は喜んでくれるはず。「どうして、そんな目で私を見るの?」「だって、君がきれいだから」驚かせるため、本人には秘密。こっそり制作を続けた。誕生日の前夜…

やさしさ批判

そろそろ やっつけねばならない と思っている やさしさを やさしさを無批判によしとする風潮を やっつけねばならない それこそテッテ的に やっつけねばならない そう思っている それはまた なぜ と問うなら 甘えるな 頼るな それこそ気づけ 自分で考えろ と…

異臭通り

だんだん臭いがひどくなってきた。鼻は鈍感な方だが、それでも耐え難い。歩道に寝転ぶ人々の姿が目につく。水を撒かれているのに平気で眠っている。ひとりの男の腕に大きな醜い傷があった。腐っているらしく蠅がたかっている。あるいは死体かもしれない。ま…

マットとブルマー

君は美人で、賢くて クラスでも学年でも一番モテて 上級生と付き合っている という噂まであった。自信も勇気もない僕は何もできず ただ憧れているだけだった。ある時、陸上大会があるとかで その練習だろうか たまたま君と体育館で二人きりになった。マット…

Web演説

みなさん。我々は価値観が大きく変わる不安定な時代に生きております。技術の加速度的な発達と普及により 社会と生活は大きく様変わりしました。世界人口は半世紀で倍以上に増え 現在は70億人を超えておるそうです。修正しつつも古き良き時代の判断基準に従…

連鎖のすり切れ

アメーバ アメンボ アメフラシ ジメジメしてたら ミジメになって 熊笹 熊猫 熊ん蜂 刺されて 掻いたら 骨そげた 春雨 春巻 ハルマゲドン 食べられないのは どれでしょう? 会社 社会科 介護保険 福祉を受けたきゃ 滞納するな すき身 抜き身 マグロの叩き 魚…

通せんぼ

いや、だめだね。あんたは、ここを通すわけにいかないよ。うん、だめ。まったくだめ。あんた、全然なってないもん。通せるはずないよ。そりゃ、もっと変な奴はいるよ。逆に、もっと立派な方とかね。でも、そんなの関係ないんだな、これが。ハハ、笑っちゃう…

甘い刑罰

犯罪者の処遇において 懲役刑とか禁固刑とかあるが たとえ強制労働あるとしても 衣食住まで税金で賄うのはいかがなものか。不景気な娑婆の従順な納税者と比べても 明らかに犯罪者に甘いのではなかろうか。衣食住が保証される刑務所に入りたいがため 通り魔殺…

台風の夜

台風が上陸するという この夜に 市内全域に避難勧告が発令された この時に わたくしは 出かけなければなりません。狭くとも安らかで 生ぬるき棲み家を抜け出し 暴風雨を突っ切って ぬばたまの闇を ひとり黙々と 歩んでゆかねばなりません。まったく本当に そ…

巨乳の惑星

進化と呼ぶべきか、あるいは退化なのか 珍しいヒト型知的生命体が生息する惑星がある。女性ばかりか男性まで乳房が大きく、つまり いわゆる巨乳の、しかも巨乳ばかりの惑星なのである。もしもこの星へ、胸部発育不全な、つまり いわゆる貧乳の、ごく普通の地…

ペンギンの群

凍りついたペンギンの群を連想させる 直立する巨岩だらけの奇形の大地 洗われずに捨てられた絵筆のように 空は汚れた色のまま低く項垂れている 絶滅したはずの翼竜が一匹 まだらの雲を縫うように飛翔を続ける 時代に肉を喰われ 残された残骸 それは未来のあ…

意識宇宙論

次元をひとつ落として 宇宙が球体の表面であるとする。そのように想定すれば 宇宙の端はなくなり、宇宙の中心も意味をなさなくなる。で、この宇宙を超越した球体の正体は何であるか? 「超宇宙」とでも呼ぶしかなかろうが どうも「意識」と同義語ではないか…

君はいない

ふと 目覚めて ぼんやりして 君を抱こうとして 君がいないことに気づく。そうか。もう君はいないのか。そうだ。もう君はいないのだ。君はいない。君を抱けない。僕は君を抱けない。もう僕は君を抱けない。そうさ。僕が君を殺してしまったから。 「ゆっくり生…

液晶の池

どんなに風が吹いても 液晶の池に波は立たない。まれに波紋がひろがることはあっても ただ、そのように見えるだけ。液晶の池の水面は「画面」と呼ばれる。「スクリーン」または「ディスプレイ」などと称する場合もある。おおむね四角、縦長か横長の長方形が…