2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
この村を出よう、と男の子は思った。この村はおかしい。祭りになると村人たちの気が触れる。夜明け前から祭り囃子(ばやし)が村に響き渡る。老若男女、犬猫牛も鶏も踊り出す。酔っ払い、裸で案山子(かかし)と踊り出す。手を取りあって林に入る若い衆と娘…
仙人になり、霞(かすみ)を食べて暮らしたかった。だが、仙人になる方法がわからない。それに、町には霞も漂ってない。昔、退職して絵の個展を開いたりしていた頃。しばらく働く必要はない。だが、絵や文章が売れる見込みはない。やがて貯金がなくなるはず…
死んでしまった。殺すつもりなかったのに。ちょっといたずらしたかっただけ。ちょっといじめてみたかっただけ。我慢できなかったんだ。あんまりかわいらしくて。あんまりあどけなくて。もう動かない。もう息さえしない。あんなに暴れたくせに。あんなに泣き…
何事かについて僕は悩んでいた。僕は窓辺の机に頬杖を突き、開いた窓から外の景色を眺めていた。草木の生い茂る田舎らしい風景。あるいは本当に田舎なのかも。制服の女子生徒たちが大声で笑いながらにぎやかに目の前を通る。彼女たちが中学生なのか高校生な…
子を産んで 母になっても ままならぬ あの手 この手の いやがらせ 浮世の風の 冷たさや ああ 冷たさや選ぶ余裕 なかりせば いっちゃん始めに 運の尽き 好きになったが 悪いかえ ああ そうかもね そうかもね I Can Not ExpectEven if I have a baby and becom…
連合国軍との合同演習らしい。ジェット戦闘機が次々と頭上を通過する。正面から背後へ、らせん状に渦を巻きながら。高度な操縦技術を誇示したいのか。地面すれすれの危険飛行だ。さらには巡航ミサイルまで飛んできた。やはり、らせん状に渦を巻きながら。断…
裸の女が往来を歩いてる。なのに、誰ひとり見向きもしない。なぜなら、ここは裸族の地。皆がみな裸だから。ところかまわず抱き合う恋人たち。今まさに窓辺で出産する妊婦。それを裸の子どもが見つめる。「もっと近くで見ていいのよ」教育上、よろしいことで…
体育館のような広いスペース。災害時の緊急避難場所を連想させる。ここで俺は仲間たちと一緒に共同生活をしている。場違いにも、世界的な歌姫が現れた。そして、なぜか皆の前で俺に対する好意を宣言する。彼女は寝転んでいた俺のすぐ隣に来て寝転ぶ。「来ち…
情報過多時代において注意すべきは何を試聴するかでなく、何を試聴しないか。目の前に提示された文字を活字中毒者のように貪(むさぼ)ってはならない。まず処理能力が追いつかない。時間の無駄。ひいては人生の浪費。意識的に選択し、余計な情報は遮断する…
あなたに謹んでお尋ねいたします。あなたの夢の舞台に登場するという私はあなたに対して、どのような態度でどのように振る舞うのでしょうか?まさか失礼なことはしてないでしょうね?なにせ、夢の中のことですから しかも、あなたの夢なのですから 夢見心地…
欲望を子ども扱いしてはならん。なだめすかしたり殺したりするでなく有効に生かすべきである。満たされぬ欲望はすぐに消えない。抑圧され、形をゆがめときに邪悪な姿に変身してしまう。悪意、ヒステリー、弱者いじめ、暴力など。いかに欲望を手なずけるかそ…
テレビ番組の収録に立ち会っている。いわゆるバラエティ。頭の回転が速いと評判の若いタレントが司会だ。軽薄を旨とするレギュラーたちが騒いでいる。場のにぎやかさを維持する方針のようだ。神童とも天才とも噂される少年がゲスト。彼の登場を匂わす前振り…
美大生のノリで、なにやら造形活動にいそしむ。それらしき研究発表なども行われた様子。気のおけない仲間たちと別れ、後輩の男と帰る途中、道端に見覚えあるオブジェを見つけた。その途端、仲間たちの意図が知れた。「なんだ、おまえたちは。ふざけるんじゃ…
男の子たちがプールで泳いでいる。いや、これから泳ぐところだ。プールの端に並び、飛び込みスタートするばかり。この状況において提案があった。「泳法に合わせて飛び込みもアレンジしよう」背泳ぎは背面で、横泳ぎは横向きで。彼らはすぐに実演してみせる…
実家の居間で寝転んでいる。眠りたいが眠れない。家族の誰かが近づいてくる気配。起きようとするも体が動かない。まぶたも開かない。おい、待てよ。さっきまで自宅の寝間にいたはず。すると、これは夢か。どちらでもかまわないが自分がどこにいるのかわから…
町内で祭りが行われるという。その準備のため、子どもらが虫を捕まえんとする。「青い虫だぞ。青い虫がいいんだ」植木屋の親父が指示を出す。男の子が一匹の青い蝶を追い始めた。だが、なかなか捕獲は難しい。おいらも手伝おうか、という気分になる。あいに…
デッキ(甲板)とでも呼ぶのか都市にある駅前の中空広場を連想させる場所。平日の昼下がり。制服を着た女子中高生たちが散在している。彼女たちは寸劇を披露したり コーラスで童謡を歌ったりしている。はて、知り合いとばかり思っていた女は別れた途端に知ら…
駐車場で元同級生らとお喋り。ある男が事故を起こしたらしい。歩行困難な様子。それについては同情する。だが、どうしようもない。彼らと別れ、自転車に乗って小学校へ。教室に侵入し、こっそり授業を受けるつもり。懐かしい女教師に出会う。ぎこちなく挨拶…
得ることによって失うものがある。それはともかく、連れションをしてる。しかも、囲碁の第一人者と。彼は碁盤に、おいらは将棋盤に。(どうやら将棋の第一人者のつもりらしい)おっと、小便の勢いで駒が押し流された。これは大変。その盤で実際に対戦してい…
友人宅に立ち寄る。勝手に部屋を使わせてもらっている。区切られた菓子箱のようなトレーの上に惣菜とでも呼ぶべき食べ物が載っている。食材組み合わせ実験という名の料理のつもり。これを食べ過ぎたため、微妙な問題が発生。今後は出入り禁止になると友人か…
ステージらしくないステージの上。たくさんの衝立が並び、客席は見えない。体育館で行う学芸会の楽屋なのかも。ギターを抱えている。当然、演奏しなければならないはず。歌おうとしても声が十分に出ない。なにより音程がわからない。共演者の音程に合わせよ…
高校または大学の文化祭だろうか。お喋りしたり、食事したり、それらしき青少年が大勢うろついている。知り合いはいない。催し物も居場所もないので出ようと思う。さて、出口はどこだ?脱衣所みたいなタイル張りの部屋に迷い込んだ。床が濡れてる。他に何も…
なにやら物音がする。不審に思いながら部屋に入る。曇りガラスのアルミサッシ窓の外に黒い影が動いているのが見える。カラスだ。カラスが数羽、外の窓枠の手前に並んでいる。しかも、窓がほんの少し開いているではないか。きゃつらに入られたら大変だ。急い…
ここがホテルだということはわかる。仕事で出張とかしてる気分だ。なぜか兄も一緒にいる。すると、親類の法事関係かも。先ほどまで続けていた作業の関係で最小単位の硬貨をたくさん持っている。これをロビーに持参すると喜ばれる。兄が断言するのだから、そ…
確か浅草のどこかを歩いていたはず。ところが、そのうち迷子になってしまった。見覚えない街並みが続く。(さて、困った)駅舎らしき建物があった。けれど、どこにも駅名表示がない。人に尋ねても、知らないのか教えてくれない。これでは進行方向すら決めら…
ヨーロッパ中世風な街の佇(たたず)まい。石造りの城塞の中と思われる。司祭であろうか、賢者を装う老人が登場。話題の女を呼び寄せた、と宣(のたま)う。古来より伝統ある競技団体の役員選出において不正を働いたと噂される美女である。個人的に信じがた…
我々Japanese、大和民族は陸海空の不安を前提として行動せにゃならん。地震は起こり、津波は襲い、台風は通る。とても戦って勝てる相手ではない。また、移ろう季節の目まぐるしさよ。衣食住にそれなり工夫するは当然なり。しかるに昨今、文明開化とやら、と…
男がうつぶせに倒れている。場所は不明だが、路地裏のようだ。毒による失神または死亡であろう。毒の名前は「ミドリ」だったか「ミヤマ」だったか、それが動物または植物の名前の一部。しかし本来なら「ミカサ」だったか「ミクイ」だったか、とにかく別の名…
最初、自転車に乗っていたはず。詳しくは思い出せない。で、帰り道、垣根の陰にリスを見つけた。仲睦まじそうな二匹。なぜか我が手の内にエアガンが一丁。その銃身を一匹のリスへ向け、トリガーを引く。リアクションなし。弾丸、または圧縮空気がなかったか…
眠っていたら物音がする。パチパチと爆ぜるような音。なんだろう。ふと思い出す。放火する、と事前予告があったのだ。あわてて起床する。ベランダ側の掃き出し窓を開ける。当然、理事長である俺のところを狙うはず。ところが、火の気はない。爆ぜる音は階上…