Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

空の上

空の上には神さまがおられて ウトウトと昼寝を始められた。空の下には恐竜が生まれ そこそこ繁栄していたが そのうち絶滅した。しばらくして人類が生まれ なかなか繁栄した。けれども 神さまが昼寝から目覚めた頃には 人類は絶滅していた。「ああ、よく眠っ…

せめてはならぬ

せねばならぬと せめてはならぬ せねばならぬと せめるほど させねばならぬか なるまいか させずにすむなら させぬですます させぬですめば せめはせぬ 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった!元「koebu」宏美(ろみりん)さんが演じてくださっ…

山神の笛

山頂の城跡で笛を吹いていたら 山の神が姿を現した。「なかなか良き音じゃ」なんだか昔話みたいだな、と思った。「フルートという名の異国の横笛です」「もっと吹いてくれぬか」私は喜んで吹き続けた。山の神も喜んで聴き続けてくれた。「おかげで、楽しかっ…

急ぎ足

「おはようございます」「それどころじゃない」担任の教師が急ぎ足で通り過ぎた。同級生たちも急ぎ足でやって来た。「どうしたんだ?」「どうしたもこうしたもない」やはり通り過ぎようとする。「教えろよ」「学校が崩壊するんだ」おれも合流して急ぎ足にな…

胸騒ぎ

わたくしは水玉模様の日傘を差して砂漠におります。時折(ときお)りに移り変わる蜃気楼(しんきろう)の景色を眺めながら どうしようもないくらいに今、胸騒ぎがしております。巨大な砂時計の底に置き去りにされたみたいな こんな己(おのれ)の他に誰もいない世…

秘密

秘密は、人に知られぬゆえに秘密。その秘密知りたる者、生き続ける事かなわじ。「ああ、どうしよう」「どうしたの?」「あたし、大変なこと、知っちゃったの」「どんなこと?」「そんなの言えない」「どうして?」「だって、言ったら、大変なことになっちゃ…

友だちなんかいらない

妹には友だちがいない。それこそひとりもいない。「どうして友だちを作らないんだ?」そう尋ねたことがある。「他にすることがあるから」それが妹の返事だった。けれども、妹は忙しくなにかしてる様子はない。寝転んでいなければ部屋の中を歩きまわるくらい…

琴の爪弾き

振り乱れ 揺り乱れ 切れなば切れよ 血も見せよ 細く鋭く 絶え絶えに 糸もしとどに 琴の爪弾き元「koebu」yayaさんが演じてくださった! Koto Claw Playing Disturbance Disturbance It's cut if it's cut Show me the blood Thin and sharp Constantly The t…

誰のため

「あなたのため」で始まって 「あなたのせい」で終わった恋は 本当に「あなたのため」であったのか? 本当に「あなたのせい」であったのか? 「わたしのため」ではなかったか? 「わたしのせい」ではなかったか? 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてく…

横長のピアノ

そのピアノは横に長いのだった。つまり、鍵盤の音域がとても広い。そのため、低音部は低すぎて音が聞こえない。高音部は高すぎて、やはり音が聞こえない。人間の耳に聞こえない音域まで鳴るのである。なんでまたそんなピアノを製造したのか 理由は不明である…

もう会えないかもしれない

「それじゃ、元気でね」彼女の細長く形良い背中は 少し離れて恋人だった男の無骨な背中と並んで さびれるばかりの駅前通り商店街の歩道の向こうへ 小さくなって消えようとしていた。彼らが別れることになると言及された結末は それほど僕の慰めにはならなか…

やっちまえ!

そうだよ。やっちまえばいいんだ。恐れることはない。もし ためらうなら 始めもせずに終わってしまった結末を 受け入れられるかどうか とりあえず 考えてみるんだな。そうだよ。やっちまえよ。やらなきゃ やられるばかりだぜ。元「koebu」GOD@怪演隊さんが演…

桜の木の下

桜の木の下で 右の頬にキスしたら そこに桜の花びら 一枚くっついて 左の頬にもキスしたら やっぱりそこにもくっついて おもしろいので 唇にもキスしようとしたら 君に殴られた。僕の目尻のあたりにも 桜の花びらが一枚 きっと くっついて いると思う。 「ゆ…

煙の底

あの頃、僕たちは煙の底で蠢(うごめ)いていた。彼らが振動させる濁った空気を鼓膜に受けながら それとは別のなにかを聴こうとしていた。あるいは現実に存在しないのかもしれないけれど どこかにあって欲しいと切実に願うもの。わかったようなわからないよう…

悔い改めよ

「やめなさい。悔い改めよ」この期(ご)におよんで神父は説教を始めた。「ああ、悔い改めるさ。 あんたを神のもとへ送ってからな」おれは神父の胸にナイフを突き刺した。「おれを許すか?」おれは神父に問うた。「たとえ私が許しても、神は許すまい」神父は絶…

甘い囁き

その囁きを甘いと感じるのはその意味を疑わぬことが即ち満たされぬ願望を満たすことになるから。 「愛しているよ」 ただの言葉。 「愛しているわ」 ただの返事。労せずして得られるものほど失われやすい。 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった…

奇妙な恋人

僕の恋人と呼べないかもしれない彼女は 暗くて狭い洞窟に棲んでいる。言葉を話せないので 人間とも呼べないかもしれない。ただし、なんとなく気持ちはわかる。なにか考えているらしいことも推測できる。けれど、推測できると僕が思い込んでるだけで じつは僕…

岐路に立ちて

さて、わかれ道だ。右は「険しけれど面白き道」 左は「穏やかなれど退屈な道」 そのように道案内の立て札にある。ただし、実際に表示通りかどうかは不明。なんらかの罠である可能性は否定できない。ある種のいたずらでないとも限らない。それに、かなり古い…

気の進まぬ行進

この行進から抜け出したい。けれども、その方法がわからぬ。少し離れるくらいなら誰でも試みるが 疲弊して引き返すのがオチだ。なにしろ見渡す限りどこまでも砂漠が広がり 水も食料も、一かけらの希望すら見つからないのだ。こんな不毛の土地ゆえ行進が始ま…

君を置いて

旅に出ようと思う 君を置いて 布団かぶって寝てしまおう 君を置いて どうして時は流れるのか 君を置いて なにも残らない 君を置いて みんな逝ってしまった 君を置いて「ゆっくり生きる」はる(haru)さんが動画にしてくださった!元「koebu」すっとんきょー…

悲しみの降る

忘れぬうちに 傘持たば 忘れし頃に 悲しみの 降る 降る 降る 降る 今日も降る 昨日も降って おったげな 元「koebu」田辺千鶴さんが演じてくださった! Sadness Falls If I have an umbrella before I forget it, Sadness will fall when I forget it. It's r…

誰が決めた

なにかを決めてしまう ということは もうそれについて考えない ということ。そりゃそうだ。決めてしまったら さらに考えても仕方ない。世の中、決まりだらけ。 考えても仕方ないことだらけ。バカにもなろう。 逃げたくもなろう。だけど そんなこと 誰が決め…

騙されるな

それがAであることと それがAであると示すこととは まったく別のこと。それがAであると示すことによって そう示されたBがまるでAであるかのように扱われるのは なんとも心外である。心が悪魔なら天使の装いをするかもしれない。たとえば詐欺師が善良な人を演…

踊り明かそう

夢中になって踊っているうちに しらじらと夜が明けてしまった。「わあ、どういうことだ」ここは外人墓地ではないか。パチンコ屋の駐車場だとばかり思っていたのに。それに、仲間はどうしたのだ。見まわしても誰もいない。さびしい外人墓地にひとりっきり。ス…

今がすべて

未来は来ない。 今が変わるだけ。過去は去らず ここに残る。あと先考える前に この現状を見つめよう。今やるべきを 今やろう。元「koebu」清華さんが演じてくださった! Now Is Everything The future will not come. Only change now. The past never goes …

ダメよ。

あら、ダメよ。まだまだ我慢して。あせっちゃ、ダメ。まあ、いやな目。そんな顔、しないの。ほんとに、もう。ねえ、いい? よーく考えてよ。モノゴトには、裏と表があるの。みんな、そうよ。聞こえる声が、いつもホンネとは限らないわ。そりゃ、信じるのは簡…

おやすみの前に

おやすみの前に どこへでも行けるから ひとりでいても さびしくなんかない。おやすみの前に なんでもできるから 今日の反省なんかしないし 明日の計画だって立てやしない。おやすみの前に なんにでもなれるから 神さまへのお祈りなんか 捧げたりするもんか。…

別れの言い訳

どんなに愛(いと)しくても いつまでも一緒にいられるものではない。また仮に いつまでも一緒にいられるとしても 互(たが)いの愛しい気持ちは どうしても変わらざるを得ない。その気持ちの変化は 昔の気持ちの裏切りであるかもしれないけれど 今の気持ちの偽(…

なにもない

そうです。なにもありません。まったくなんにもないのです。 あしからず