Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ダンプ家ー

休日なのに出社すると、社員が二人ほどいた。 ことさら仕事があるわけではない。 ダラダラしていたら、社長もやって来た。 「おい。あれはどうなった?」 私が発案した商品企画の件だ。 「そうですね。これから考えてみます」 みたいな返事をしたのだろう。 …

迷惑撲滅運動

まずピンポンダッシュで起こされた。 犯人と特定できないものの、出勤するのか 隣人らしい男が前を通り過ぎようとしていた。「おはようございます」なんて元気に挨拶されたら 返事もできず、腹を立てたまま寝直した。まったく迷惑な行為は許さんぞ。無差別テ…

電波塔男

世界一高いかもしれない電波塔。その最先端にいる男はアナウンサーだろうか。「こうして手を触れますと、画像が乱れます」ミラーボールのように光る先端をいじりながら さも得意そうな口調で実況中継している。彼がテレビ局のアナウンサーだとすれば、案外 …

いじわるな家族

畳と床板を剥ぎ、床下の整理をしていたのだ。すると、あるべきところにあるものがなかったり 逆に、ないはずのものがあったりする。「おかしいなあ」と呟く。いつのまにか家族と掘りゴタツに入っている。 「おまえ、なにを言っているのかわからないよ」と祖…

おおむね

暴力によって得たものは 暴力によって奪われる。 知恵によって得たものは 知恵によって奪われる。 恋愛によって得たものは 恋愛によって奪われる。 つまり おおむね そういうふうにして得たものは そういうふうにして奪われる。 だから あなたは 得がたいこ…

見くびる

少年の態度が気にくわないのだった。人通りの多い通路でボールを蹴っている。それもだらしなく、投げやりに。それで、こちらへボールが転がって来た時に ぶつけるみたいな感じで蹴り返してやったのだ。ボールは少年の顔に当たるかかすめるかして 左右に仕切…

苦労人

髪の毛がチンチクリンで 髭モジャの彼は 撮影する時に わざとカメラを振ったり レンズの前面にタバコの煙を吐きながら シャッターを切ったりする。おそらく特殊効果を狙っているのであろう。まんざら気持ち わからんでもないが いつもそうするのが ちと気に…

作っております

わたくしは こうして こうやって いつものように作っております。あなたがたが仲間と楽しくお喋りしたり 一所懸命に会社の仕事をしたり 見た目おいしいそうな食事をしたり テレビ番組とか眺めて笑っておられる時に こんなふうに なにかを書いたり 変なものを…

んなこたあ

詳しいことは忘れちゃったが なんか大きなイベントが終ったあとに 「施術師シンゴの快進撃」だかなんだか そんな名前のテレビ番組かな 収録があって んなこたあ どうでもいいんだよ てな気分になっちまったんだな これが あらかじめ用意された障害を乗り越え…

いらない余り

社内の飲み会の席のようだ。やや薄暗い店内で知人たちが談笑している。いくつか転職した会社の懐かしい顔ぶれ。会話する男同士、女同士、またはカップル。上司だったある男は女の子数名に囲まれ 面白おかしく社員たちの失敗談を語っている。「そこで彼は濡れ…

入場ゲート

空港での見送りのようなのだ。顔見知りのご婦人ふたりが階段を下りて これから入場ゲートへ向かうところ。その時、私の携帯電話に呼び出し音。出てみると、知り合いの男の声がする。「おい。あの女を出国させてはならない」「いや。もう時間だから、入ってし…

込み入った古書店

古書店がおもな舞台の物語である。そんな小説を読みながら寝ていたせいか 主人公と同じように店番をしている。なにやら込み入った事件が発生したようである。なのに、すぐ隣で客とボウリングをしている。ボウリングのレーンのある古書店なのだろう。まあいい…

嘘みたい

変な女がいて困っている。 いわゆる嘘つき女なわけだが はっきり嘘つきと断言できないので困る。 先日も首がまわるみたいな話を始めて 「体罰として首をねじりましょう」などと言う。 「いや、それは危険でしょう」と言い返すと 「なんの、一回転ぐらいなら…

都会の真ん中

夜の会合

小学校の校舎と同じ構造の大きな建物。すっかり夜になっている。二階から立ち去ろうとして、端にある教室と思われる部屋の中が明るいのに気づく。まさか、こんな夜更けに誰か使っているのか。戸口から中を覗いてみる。誰もいない。照明もない。窓の月明かり…

そんなキャラ

「やるやる」と言いながら 決してやらない彼について考えていたのだ。「それでは信用を失うよ」と忠告しても 「そういうキャラだから」と改める気配もない。そこそこ人気あるから気にしないのだろう。人気が落ちたらどうするつもりか。ところがこのたび、そ…

裏で指示

後輩の女子に作業を手伝ってもらうよう 同じく後輩の男子にこっそり指示したのだった。手作りの菓子だったか寿司だったか そんなのを料理してもらう内容だったと思う。ところが、途中で彼女の姿が見えなくなる。後輩男子と一緒になって捜しまわっていると 見…

脈打つ臓器

おれは人命救助のような仕事をしていたはずだ。具体的な内容は思い出せないものの確信はある。ただし、具合が悪いので休んでいた。誰かと話していて、相手は患者だったか。他人を治療している場合ではない。フトンから出てみると服を着ていない。左横の腰と…

パターンの穴

彼もまた落ちてゆく。彼女もまた落ちてゆく。見たことあるよな聞いたよな パターンの穴に落ちてゆく。そう、上手だね。そう、ウケてるね。巷で評判だ。人気あるんだね。でもね、油断は禁物だよ。そのうち飽きるよ。飽きやすい僕なんか、もう飽きてるし。君自…

幽霊アパート

幽霊たちが借りてるアパートがあって そこはそこの持ち主、大家さんまでが幽霊だ。新しい住人への説明を終えると、お婆さん幽霊は玄関ドアの新聞受けの隙間から外へ出て行った。「やれやれ。大家が幽霊なんて物騒ね」自分らのことは棚に置き、新しい住人は顔…

女装芸人

彼はお笑い芸人。二人組の漫才コンビを組んでいたが 最近になって相方が海外へ留学してしまった。それはさておき今回、彼のプロデュースによって ピンの女芸人が舞台で大成功を収めた。彼女不在の記者会見をさっさと切り上げ、彼は 逃げるように秘密基地じみ…

消えそうなデータ

出先で眠ってしまったようなのだ。こうして目覚めた以上、帰宅せねばなるまい。なぜか牛乳パックを手に持っている。水盤の上に置こうかと思ったが 隠し場所としては不適切な気がする。それで、あたりを見まわした。場内では同僚の二人が会話している。残業し…

臨死体験

徹夜明けでも眠気なし。意識さえわたり、寝たまま瞑想していた。すると、不意に気づいた。「おれは死んでいるのだ!」恐怖のあまり、顔面がゆがんだ。不気味な気配を感じる。必死に逃れようとしたところで その気配は消えた。結局、なんともなかったわけだが…

彼女のコード

彼にとって別れてしまった彼女は もう永遠に会えないほどの存在である。ただし、彼女の作品を得る手段はわずかながら残されていた。そのためにはコードとでも呼ぶのか 長い数字や記号の羅列を正確に示さなければならない。しかしながら、彼にはそのコードが…

感動的な言葉

その女の人は笑顔で言うのだった。「あれはしなくてもいいから、これはしてね」予想はしていたものの、感動的な言葉だった。少なくとも、感動しながら聞いた。しかしながら、具体的に何が感動的だったのか 忘れてしまって、もう思い出せない。 自作自演。 A …

丸いマーク

巷で賢いと評される代表みたいな人物が 講演または公開授業のようなことをやっている。彼が今まさに喋らんとするそのセリフの直前に 丸い記号のようなマークを飛ばして邪魔をする。「スコーン」であったか「ズコーン」であったか ともかく同時にさような発音…

くそったれ

振り向いた時か、着替えた時か。それとも起きた時だったか。とにかく何気なく何事かした拍子に 目の前にある白いテーブルを汚してしまったのだ。こげ茶色の食べ物がこぼれた感じ。その汚れはさっと拭いて片づけたが さて着替えようとした時に服の汚れに気づ…

決定的証拠

なんとか就職したものの、じつはそれには裏があって 知らないうちに悪者にされていたようなのだ。この会社にこのまま在籍していたら、犯罪者になるか 最悪の場合、殺されてしまうかもしれない。そんな不安があるから強引に早退して その会社を紹介してくれた…

従兄のスポーツカー

法事でもあったのだろう。実家に従兄がいて、これから帰るところ。「どうもご苦労様でした」みたいな挨拶をして 目上の人に失礼な言い方かな、などと心配する。たとえ気づいても言わない人ではある。そんな彼を玄関まで見送る。庭にはスポーツカーが置いてあ…

劇中人物

おれたちは演劇をやろうとしている。最初は劇の内容を煮詰める予定だったが なぜか通し稽古をすることになった。その劇は暗黙の了解のうちに始まってしまい 観衆もいないのに本気モードになる。そも舞台ではなく、ごく一般的な住宅の中。いわば映画の中の登…