2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧
あたし 飾るのきらい。 だって 飾らなきゃいけないような 悪いこと あたし なんにもしてない。 元「koebu」nyapipi///aprileさんが演じてくださった!yayaさんとイーグルフェロモンさんの動画を紹介! I Hate DecoratingI do not like to decorate.Because I…
病院のベッドに僕が寝ていた時 僕の真上、天井のすぐ下に看護婦さんがいて 吊り下げ扇風機みたいにくるくる回転していた。「あの、そんなふうにまわり続けていたら そのうち目がまわりませんか?」かすれた声で僕が尋ねてみると 透き通るような白衣を着た看…
しずく姫の命は短い。朝、葉の露がこぼれる。しずく姫の生まれた瞬間。陽の祝福をキラリと受ける。きれいな瞳。愛くるしい笑み。すぐに地面に落ちて消える。ほんのまばたきする間。しずく姫はもういない。淡き夢の、しずく姫。 「ゆっくり生きる」はるさんが…
オープンカーで風を切っていた。助手席ではサングラスの女が脚を組み ロングヘアーが吹き流しになっていた。「けどまあ、晴れてよかったな」声をかけたのに、女は返事をしない。「おまえ、まだ怒っているのか?」それでも返事がない。横を見ると、サングラス…
砂浜で おさな子が 砂の城を こしらえている どうせ 波にすくわれ すぐに 崩れてしまうのに それでも 夢中になって 砂の城を こしらえている いつまでも いつまでも おもしろそうに はるさんが演じてくださった!元「koebu」nyapipi///aprileさんが演じてく…
遊園地でアルバイトをしていた。その日は、回転ボートの担当になった。回転ボートとは、池の上を旋回するだけのボート。こんなものでも子どもたちは喜んでくれる。担当は、切符を受け取り、客を入場させる。小さな子どもなら、抱えてボートに乗せてやる。愛…
ある日、頭に花瓶が落ちてきた。割れたのは、頭か花瓶かわからない。それからなのだ。今日の次の日も今日になったのは。目覚めたら 頭も花瓶も割れてなかった。そりゃそうだ。なにしろ まだ今日の朝なんだから。明日はどこへ行ってしまったのか。一日中さが…
朝から晩まであくび姫 医者に診せても止まらない 眠っていてもあくび姫 夜見る夢さえ退屈なのよ 昔、ある国のお城に あくびばかりしている姫がいました。毎日が退屈で退屈で あくびが止まらないのでした。そんなある日、ある旅の男が城にやってきました。「…
僕たちは戦場にいた。敵も味方も関係なかった。僕たちはみんな傷ついていた。どこもかしこも傷だらけだった。なのに医者ひとり、薬ひとつなかった。とりあえず血を止める必要があった。とりあえず手探りで止血点を見つけた。血が止まれば傷口を舐められる。…
その婦人はいつも雨傘をさしていた。毎日毎日、雨が降っていてもいなくても。晴れた日は日傘のつもりなのだろうか。近所の人たちはみんな気にしていたらしい。ある晴れた日のこと ぼくの弟が婦人に教えてあげたのだ。「おばさん、雨は降っていませんよ」びっ…
蛇(へび)の寝姿に見えるところから 村人ら、この川を蛇寝川(へびねがわ)と呼べり。尻尾(しっぽ)は遠く、山の麓(ふもと)へ消え 脱ぎし万年雪の皮、白く霞(かす)む。頭(かしら)は遥か、海原まで届き 顎(あご)はずして鯨(くじら)の腹に喰らいつく。稲穂(いなほ)…
ある朝、鶏が玉子を一個産みました。割ると、中からルビーが出てきました。「あら、楽しみにしてたのに」料理好きのお母さんはがっかりです。次の朝、玉子から出てきたのは砂金でした。「こんなおかしな鶏は捨ててきなさい!」お父さんは怒ってしまいました…
僕は彼女が好きだったけど 彼女が僕に好意があるとは思えなかった。彼女に告白する勇気のなかった僕は 僕が彼女を好きだという噂を流したんだ。火のないところに煙は立たないというけど 煙が立ってから火がつくことだってある。僕が彼女を好きだという噂を聞…
登校の途中、女の人に呼び止められた。「ねえ、私の家にお寄りなさいな」僕は返事に詰まってしまった。「ねえ、いいでしょ」「僕、学校へ行くんだ」「あら、そんなの大丈夫よ」「でも、遅刻すると先生に怒られる」「だったら、私が連絡しておくわ」「でも、…
この女は何者なんだろう。「君、誰?」「私、本を読んでいるの」まるで質問の答えになっていない。頭がいかれているのだろうか。そうかもしれない。そうでないかも。ふたりの間に、なにが始まって なにが終わったというのだろう。それとも、なにも始まってい…
ここは厳しき法廷。傍聴席は牛や馬で満員。中央の裁判長席には赤鼻の猿。柵に囲まれた陪審員席には羊の群。証言台に立つのは学生服を着た少年。床には手足を縛られた少女が倒れている。「被告は、いわゆる美少女です」狐の検察官が発言する。「それがどうか…
生きるために 食べるとしても 食べるために 生きたくはない。君のために 生きるとしても 君のために 死にたくはない。元「koebu」ちび妖精さんが演じてくださった!元「koebu」Akiraさんが演じてくださった!For What PurposeEven if I eat to liveI do not …
ある暑い夏の昼下がりのことでした。私は縁側で裸のまま昼寝をしていました。まるで風というものがないのでした。とても寝苦しかったことを覚えています。うつらうつらとまどろみかけた時 蝉の鳴き声のような猫の鳴き声を聞きました。あるいは、猫の鳴き声の…
あなたがたによくよく言っておく。どのような窮地に陥ったとしてもあなたがたは神をあてにしてはならない。なぜなら、あなたがたを救えるのはあなたがたでしかないからである。つねに神はあなたがたとともにありあなたがたが生きているということがそのなに…
彼は哲人である。(なぜ私は私なのか?)今、彼は悩んでいる。(たとえば、なぜ私は彼女でないのか?)悩みは深刻らしい。 (しかし、もし私が彼女なら)散歩しながら考え込んでいる。(彼女は私になってしまう)ところで、彼には恋人がいない。(すると、や…
牛よ 牛 牧場の牛よ おまえの脇腹の模様は あの空の雲そっくりだ 遠く厩舎を離れ その小さな目で なにを見るのか おまえが飲み込んだ草は おまえの胃と口との間を なん度も往復するだろう だから 牛よ 牧場の中の牛よ あの錆びた有刺鉄線の柵は おまえの地平…
果てしなく広がる宇宙を海にたとえれば その古い時計台は離れ小島に建っている。小島には時計台守りの老人が住んでおり この老人の他に住人はいない。時計台のネジを巻くのが老人の仕事だが 老体にとってあまり楽な仕事ではない。それでも毎日、老人は時計台…
僕がどうしようもない缶詰だった頃 君はピッカピカの缶切りだった 僕の汚れたブリキのフタを開けたから 銀色の君の刃先が汚れてしまったね その君の刃先の汚れを取ろうとして 拭った僕の手がまた汚れていたっけ 君と別れてから 僕は僕を見失い あれからもう …
授業中、教室に波が押し寄せてきた。床はすっかり水浸しになった。正面の黒板にまで波の飛沫がかかり 無数の小さな黒い点々がついた。「じつにけしからん!」教師はチョークを波に投げつけた。「ここは浜辺じゃないんだぞ」教壇はすっかり四角な小島になって…
ぼくたちは それぞれ なにかを もとめて こんな とおいところまで きてしまった けれど おろかな こどもが にじを おいかけても いくら おいかけても どうしたって おいつけない ように やっと たどりついても あんなに もとめた とおいところは ここではな…
少女の首を絞めている。 もちろん軽く、冗談みたいに。「ううん。もっときつく絞めて」聞き覚えのある声。 でも、誰の声か思い出せない。突然、背景の白っぽい壁紙が破れ 厚化粧の子どもが次々と現われる。男の子も女の子もいる。みんなかわいい、と思う。ま…
眠れない夜ポタポタポタとしずくが落ちる。ふと大切なこと思い出せそうな気がして言葉に置き換えようとあせっているうちに跡形もなく消えてしまった。しずくの音だけポタポタポタと耳に残る。 元「koebu」nyapipi///aprileさんが演じてくださった!Suno AIが…
玄関の扉が開いた。「ようこそ、いらっしゃいませ。 どうぞこちらへ」女に案内され、奥へ進む。長い廊下の左右の壁に絵が飾ってある。絵はともかく、額縁は立派なものだと思う。「外套をお預かりいたします」女に外套を手渡したところで廊下に裸で立っている…
わたし、いつまでも踊るつもり。いつまでもって、いつまでなんだろ。なにが悲しくて、こんな救われないことこんなむなしいこと、続けるんだろ。ああ、また思い出してしまう。忘れたい。忘れられない。どうしても消え去ってくれない記憶。だから、だから、踊…
大都会。立体交差の高速道路。その上をラクダの商隊が進んでいる。長い行列を作り、整然と歩み続ける。クルマにとっては大変な迷惑だ。ドライバーが怒鳴っても通じない。どうやら言葉が理解できないらしい。砂漠の民であることは確実である。耳が毛だらけ。…