Tome文芸館 Annex

自作読み物を紹介。動画用朗読音声を常時募集。英訳はGoogle翻訳。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

洪水

知人らと一緒に訪れた地は洪水だった。至るところが池や川のようになっている。地元の子らが腰まで水につかって登校中。やはりというか、泳いでいる子もいる。じつに楽しそうだ。おれも着衣のまま泳いでみた。流れに乗って驚くほど速く進む。これは楽しい。…

温室のトマト

若い優等生がトマト栽培の温室に招待された。ある競技大会で優勝し、その副賞のようだ。空箱を三つ渡され「これにトマトを入れなさい」つまり、上限あるものの、トマトのもぎ放題。その後、彼はトマト料理のレクチャーを受けた。すでに本来の趣旨がわからな…

当選発表

スーパーの広告チラシらしき紙面にて懸賞問題みたいな宝くじの当選発表があった。なんとなく買ったか回答したような記憶あり。どうせ当選するはずないと思い込み、忘れていた。当選№が載っているものの、肝心の控えがない。どこへしまったのか、さっぱり思い…

夜の橋

親しい誰かのクルマに同乗して夜のドライブ。「ありがとう。バイバイ」橋の上で停車。ひとり降車した。車道を越え、歩道へ渡る。橋の側面に階段を見つけた。そこから川の土手に下りて帰宅できそうだ。運転していた男もそこから下りていたな。そんな記憶が脳…

ヒマワリの種

食用ヒマワリの種を試しに買ってみた。海外では定番のおやつらしいので。すぐに失敗に気づく。残りは捨ててしまおうかとさえ思った。まず、殻から取り出しにくい上に身が少ない。また、さして旨(うま)くもない。それでも親指の爪で殻を割る方法を苦労して…

本と本の間

社員からアルバイトへ降格された。仕事のミスか自分で望んだか、思い出せない。定刻になったが残業せよとの指示あり。場所を移動する。広い工場の床一面に整然と本が置かれてある。発送手配の作業をしているのだろう。パートタイムだった女が正社員になって…

熱変化ゲーム

ゲーム会社で合宿しているような気分。熱によって変化するゲームとしないゲームがある。変化するゲームは冷やすことによって安定する。で、冷凍のゲームセットを保冷箱に詰める。それらをエレベーターの中に敷き詰める。その上に乗り、同僚の3人と共に階下…

人を縫う

ぼろクズのような老婆がもの申す。「やれやれ。人を縫うのは大変じゃ」かたわらには、頼まれもののあちこち傷んだ人の山。 Sewing a PersonAn old woman like a rag."Yeah. It's hard to sew people."Beside her, a mountain of people who were injured her…

ナマケモノ

砂浜で一匹のナマケモノを拾った。子守りでもするように胸の前で抱えてみる。おお、なかなか愛らしい。哺乳綱(ほにゅうこう)異節上目(いせつじょうもく)有毛目(ゆうもうもく)ナマケモノ亜目(あもく) の総称。手に爪が三本あるので、ミユビナマケモノ…

末期的な漫画家

コマ漫画を制作している。ただし、手描きしているような感じはない。ペンを使わなくてもできあがる時代になったのだ。しかも、ネット上の複数の誰かと共同制作。AIによる自動化技術も進み、コマ割りから背景描写まで簡単な選択だけで済む。タッチやムードも…

未熟な配分

これから麻雀(マージャン)みたいなゲームを始めようとしている。小さなカードを積み重ねた牌(パイ)に相当するものが卓上にある。この牌の群を敵味方に選んで配分しなければならない。牌を形成するカードは滑りやすいので注意が必要。数名の対戦者との共…

用がない

事件が解決して昼飯にするつもりだった。関係者らと一緒にエレベーターに乗り込む。ある男から声をかけられた。「あんた、じつに手際よかったね」なんとなく気に入られた様子。エレベーターを出たら見覚えない風景。先ほどの男はパチンコ店に入ってしまった…

体温を上げる方法

体温が上がると血行がよくなり、免疫力が高まる。風邪で発熱しても、薬で解熱などしてはならないわけだ。歩いたりスクワットしたり運動せよと指示される。厚着や入浴方法、食事などにも気を使え、と。それはそうであろう。しかし、なにかと面倒である。そこ…

立ち向かえない

下校時刻でないとすれば登校時刻だろう。大勢の中高生たちがこちらへ向かってくる。すると、おれは校門を背にして通学路にいるらしい。なぜか、この立ち向かう姿勢を守らねばならぬ。おれは指導教師ではない。学生服を着ているので学生に違いない。学生たち…

忘れたバッグ

どこぞの会社事務所。これから接待の飲み会へ出かけようとしている。営業男は分厚い英和辞典を抱えている。得意先から問われた場合を想定しての用心らしい。ご苦労なことである。細長いビルの狭い階段を下りるようなので荷物の多い彼のバッグのひとつを持っ…

妖怪の動き

部屋の中を不自然にさまよう妖怪ども。その動きや出現頻度は数式で制御されている。人間ながら妖怪じみた才能のふたりの男が その様子を液晶モニターで別室から見物している。「わはは。この動き、傑作だな」「いかにも、私壊れます、という感じですね」つら…

おしゃべり女

おしゃべりな年配女が我が家にやって来た。「どうもすみませんね。よんどころない事情ありまして」言いわけタラタラ、食事を始める。「あなたほどの人がこんな食事でいいのですか」おれの皿にまで文句を言う。「これでいいのです」見れば偏食に違いないが、…

プロレスごっこ

久しぶりに再会した尻軽女とプロレスごっこを始めた。投げたり、絞めたり、固めたり、なかなか楽しい。なのに外野席からクレームが入る。「そんなに楽しいことばかりしていてはいけません」「うるさいな。誰だ、おまえは? ふん。誰でもいいが、余計なお世話…

お客様へ

お客様へ申し上げます。いい加減にしてくださいませ。我々にも限度というものがございます。お立場を笠に着ての強要はご遠慮ください。お立場をなくされた場合、大変恥ずかしい想いをいたします。我々は好き好んでお客様を接待しているわけではございません…

チーム監督

女子チームによる団体戦が行われるそうだ。トーナメント方式で、それぞれに男の監督がつく。打ち合わせやら特訓やら談笑やら、親睦が深まり、監督に対しては、傍目(はため)にも羨ましい限りだ。ただし、えこひいき、仲間割れ、不倫疑惑など いかにも起こり…

タイム急便

過去の時空へ物質を送れるようになった。それが「タイム急便」である。未来の時空へ送ることはこれまでもできた。タイムカプセルやいつまでも残る作品などがそう。タイム急便はその逆。タイムカプセルや古い作品の中から新品が出てくる。古い映画の白黒画面…

ふざけんな

交差点近くの歩道上でのこと。組関係者が弁護士を間に入れて交渉を開始。「あなたに横断歩道を渡る資格はありません」とかなんとか、あまりに理不尽な主張をほざく。「ふざけんじゃねえよ!」生まれてこの方、これほどの怒声を発した記憶はない。己の怒りの…

わずらわしい

天下の副総理が出演する画面を視聴中。国民的なクイズ番組のようだ。大きなコインのような円柱状の装置がある。一種のパズルになっているらしい。その円盤上を二つの光源が動きまわる。せわしなく複雑な軌跡。司会者が出演者たちに問う。「二つの光が最も近…

提案の果て

営業会議があり、開発チームとして参加。いくつかの提案が採用された。キャッチコピーとその文字色が好評だった。上司にも褒められ、ちょっと嬉しい。定刻となり、帰宅することになった。資料とともに仕事を持ち帰らねばならない。こうして優柔不断な日本人…

タイトルバッジ

ふたりの女がこれから一戦を交える。いわゆるタイトルマッチ。直前、主催者よりバッジが両者に与えられた。開催地の特産品を意味するマーク入り。覇者はそのマークに対して弱みがあるようだ。挑戦者は逆に強みとなるらしい。それはともかく、おれは流行(は…

ボトル扇子

ペットボトルの中に入った一本の扇子。これが毎年ある男の住まいに届く。差出人は心当たりない女の名前。扇面には手書き文字。たとえば、今年。「人が作った小魚が焼けている」それはどうやら恋文のつもりらしい。だが、あまりにも遊離した表現のためか 相手…

碁敵

ここは自宅。これから碁敵(ごがたき)が来る。まだ一度も勝てたことのない相手。おれたちは院生のようだ。将棋の奨励会員みたいなもの。電話が鳴った。すぐに出たが、内容は忘れた。玄関のドアを開ける。男が壁を背に待っていた。見覚えない顔だが、彼が碁…

プールの掃除

遊園地の一部であろうか。高低差のあるプールがいくつもある施設。一番下にあるプールは水がほとんど抜けている。ここを掃除するのがおれに与えられた仕事。モーターボートのスクリューにホースをつけたみたいな道具をプールの底に下ろす。洗浄のために使う…

暴力の接近

台風が関東に接近していた。窓の外の騒音に触発されたのだろう。不良マンガの実写版みたいな雰囲気。運とハッタリだけで成り上がった主人公。徒党を組んで敵対するチームに殴り込み。暴力シーンのすさまじさ。現体制を破壊したいという抑えがたい気持ちは現…

ほぼ無意味

自転車になる椅子と机セットを手作りした。完成品を友人に見せびらかして自慢する。「どうだ。動くんだぞ。すごいだろ」彼は朗読の邪魔をされて不満顔だ。お互い、ほぼ無意味なことをしているな。 Almost MeaninglessI made a handmade chair and desk set t…