2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧
静かな砂丘に月のぼり 娘のように老婆は眠る 藍色の夜空に紫の雲ながれ やや欠けた月は髑髏(どくろ)のよう 置き去りにされた古き戦車の 車輪に結ばれし老婆の髪 あてなき旅の途中か 貧しき群衆が視界を横切る 先頭に立つ老僧の法衣は破れ その眼は人形のよう…
四面体における各面の内接円は 対頂点を光源とする内接球の影とは限らない。なぜなら球の影のほとんどは 楕円になるから。さらに物理的に 光源は幅のない点ではあり得ず また必ずしも 光が直進するとは限らない。(そういう具合に僕たちは しばしば君たちを…
召されるべき子らは すみやかに召されるべきであろう。もし召されぬまま大人になれば やがてかれらの子孫が生まれてしまう。それらのうちの多くは やはり召されるべき者に違いない。召されるべき子らが召されぬため 召されるべき者が増えてしまう。召される…
スナップ写真の撮影において シャッターチャンスを逃すことは多い。考えてみると 逃したチャンスはそれだけではないはずだ。気づくチャンス、知るチャンス、考えるチャンス 改めるチャンス、始めるチャンス、作るチャンス ・・・・いくらでもある。ある小さなチ…
画家のアトリエ、汚れたままのパレット。さびしそうに放り出された絵の具と絵筆。未完成な肖像画、その背景は暗い海と空。水平線はゆがんでぼやけている。雲もないのに星は見えない。月日はとうに画布からこぼれ落ちたらしい。背景と人物が微妙に重なる。黄…
雪の斜面に男がひとり立っている。黒い帽子、黒いサングラス、黒い防寒服のいでたち。その両手には紅白の旗が握られている。男から見て右手側より女子スキー選手たちが現れ ストックを突きながら左手側へと滑ってゆく。彼女たちが男の前を通り過ぎる時、男は…
花火見物の帰りであろうか。浴衣姿の君と歩きながら僕は夜空を指さし、説明している。「あれは乳首座。 なぜなら、ふたつある」君は無邪気に笑う。「それじゃ、あそこの三つ星は?」小さく三角形に並ぶ星を示す君。パンティー座と陰毛座が浮かんだものの残念…
小学校に入学した頃、実家にテレビが流れ着いた。丸みのあるブラウン管の白黒テレビ。小さな画面を拡大して観るためのフレネルレンズがあった。当時はNHKの他に民放一つ、計3チャンネルしかなかった。切り替えはグリップ式のダイヤルだった。おそらくその前…
指を舐めていたら 指先が融けてしまった。 いけない、いけない。 指を舐めてはいけなかったんだ。歩いていたら 脚が折れてしまった。 いけない、いけない。 歩いてはいけなかったんだ。考えていたら 頭が痛くなってしまった。 いけない、いけない。 考えては…
県立図書館に本を返却して さて新たに借りようとして、愕然とした。読める本、読みたい本がまったくない。これまでにもなかったわけではないが こんなに気乗りしないのは初めて。おそらく年齢のせいだろう。理解や考察を楽しめない。好奇心が続かない。外国…
いろんなこと考えすぎて とうとう頭が壊れちゃった。手の指さえ数えられない。これでは使いものにならない。両手を使わなくても むずかしい計算だってできたのに。 もう考えようともしないだろう。 生と死はどう違うのか。 始まりと終わりはどう違うのか。な…
始まらない まだ始まらない まだまだ始まらない いつになっても始まらない 物語が始まらない 物語? そう 物語 なぜ始まらない? 始めないから 始まらない なぜ始めない? それは あなたへ問いたい 私へ? そう あなたへ 意味 わかんない この物語は あなた…
ひとり雪原を歩いていた。目印になるものは何もなかった。山も人家も見えず、一本の木さえない。陽の位置すらつかめぬ灰色の空。まったく何もない世界。色すらない。「おーい、誰かいないかー!」返事はなかった。木霊すら帰って来ない。ひとりぼっち。風す…
昼寝していたら電話の呼び出し音に起こされた。せっかく楽しい夢をみていたのに・・・・ ふらふら立ち上がり、よろよろ居間へたどり着き いやいや受話器を持ち上げる。「はい。もしもし」なにやら挨拶らしき言葉のあとに どこぞの会社のいかがわしい売込みが始ま…
通販で着せ替え人形を注文したつもりだったが 届いたのは着せ替えドレスセットだった。表示が人形の写真だったから、素直に人形と思い込んだら じつは、その人形が着ていた服だけだったのだ。そこそこ安いな、とは思っていた。よく読めば、ちゃんと「ドレス…
これから選挙へ行くところだ。まったく政治に興味はない。しかし、投票せねば殺されかねないので仕方ない。銃殺派、絞殺派、撲殺派、毒殺派から各一名、全部で四人の男女が立候補している。くすぐり派とかあれば喜んで投票するものを これでは悲しんで投票す…
山には紅葉が敷かれていた。空にはいわし雲が寝そべっている。そして、谷川には丸木橋が架かっていた。今、その丸木橋をひとりの山伏が渡ろうとしている。すると、もうひとりの山伏が反対側から現れた。どちらも道をゆずろうとしない。大人げなく、われ先に…
裁判長が判決を下した。「被告は無罪である」傍聴席からどよめきが起こる。女装した被告は満面の笑みをたたえ 不気味なしなを作って見せた。裁判長は続ける。「あきらかに被告は、いかがわしい外見と いかがわしい言動を日常としている。 しかしながら、それ…
卒業記念用のクラス別集合写真ができてきた。なかなかうまく撮れている。さすがプロの仕事。ところが、これが心霊写真だと言うのだ。いくら眺めてもわからない。体育館で撮ったのだが どこにも不自然なところはない。異様な位置の腕や脚もないし ぼやけた顔…
昔、戦争があった。多くの人々が戦い 多くの人々が苦しみ 多くの人々が亡くなった。それだけ。昔あった戦争の話。つまんない話だけど 本当にそれだけ。 元「koebu」tackさんが演じてくださった!War StoryA long time ago, A war broke out.Many people foug…
車道わきの歩道を歩いていて蝶の交通事故を目撃したことがある。春であったか、夏であったか。一匹のその白い蝶は低空をふらふらと飛びながらクルマの行き交う車道の上を何気なく渡ろうとしていた。(ああ、クルマに当たりそうだな)そう思った途端、本当に…
仙人が滝に打たれてた。毎日毎日打たれてた。なかなか立派な滝だった。なので色んなものが落ちてきた。虫、魚、ヘビ、キツネ、クマ。木の枝、石ころ、丸太、岩。さすが仙人、ビクともしない。金貨落ちても目もくれない。ある日、裸の美女が落ちてきた。「あ…
そうさ おいらは測量技師 測量するのがおいらの仕事 山の高さ 川の幅 海の広さも測ります 地球の直径 銀河の面積 なんなら宇宙の体積さえ測りましょう 無限に伸びる巻尺持って なんでも入る計量カップ下げて 恋人の愛の深さ? 浮気の罪の重さ? そういうの得…
何かを考えるためには まず、その前に その何かを意識せねばなるまい。何も意識せずに考えるなど墨のないまま絵を描こうとするようなもの。そして その何かを意識するためには その何かと その何かではない他の何かとの関係を 意識せねばなるまい。つまり そ…
雨 雨 雨雨雨 雨 雨 雨雨 雨雨 雨が降りゃ 恋 恋 来い来い来い 恋 恋 恋来い 恋来い 恋来ない 来い 来い 雨雨雨 恋 恋 来なくていいから 雨よ降れ 「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださった! Rain Starring SongRain rainRain RainRain and rainRa…
なんということもない女だった。いわゆる美人でもなんでもない。目をそらせば済む問題だった。けれど、それができなかった。その女から目をそらせないのだ。しかも、それだけではない。見るだけでは我慢できなかった。その肌に触れたくてしかたない。その女…
その広場は昔からあった。ここになくとも、必ずどこかにあった。あらゆる人種、あらゆる民族の吹き溜まり。「さあさ、皆さん、お立合い。 ご用とお急ぎでない方は 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」貧しい芸を見世物とする人たちを 貧しい芸さえない人たち…
あなたは 失敗した。取り返しのつかぬことをしてしまった。最悪な事態。決して許されぬ。言い訳など とうてい許されぬ。あなたは 耐えねばならぬ。あなたは 耐えねばならぬ。この沈黙に この耳が痛くなるほどの沈黙に じっと じっと 耐えねばならぬ。自作自…
家のない老婆を知っている。 破れた雨傘で顔を隠し 宝くじ売り場の横にしゃがんでる。そんな老婆を見ていると 宝くじを買う気しなくなる。 金持ちになろうとは思わない。 貧しくなければそれでいい。彼女にも若い頃があったろう。 美しい頃だってあったろう…
あるところに ネズミの家がありました。古くて大きくて たいそう立派な家でした。その昔、ネズミの家は 人の家でした。ある日、この家にネズミがやって来て ある日、この家から人が出て行ったのです。以来、この家は ネズミの家なのです。元旦の朝、この家に…