「お願いがあるの」
かわいらしい少女でした。
「はい。なんでしょうか」
「いじめて」
天使のようにほほえむのです。
「あたしをいじめて欲しいの」
僕は返事に困りました。
「それはまた、どうして？」
「どうしても」
「どうしても、と言われても」
「あたし、いじめられたいの」
「いじめられたいの、と言われても」
「困ったわ」
「困りましたね」
少女は今にも泣きそうです。
「いじわる！」
うしろ姿がさびしそうでした。
すごく悪いことをしてしまったような気がしました。
「わかりました」
僕は覚悟を決めました。
「やってみましょう」
すると、天使が振り返りました。
「ほんと？」
白い翼さえ見えたような気がしました。
「うれしい！」
でも、僕には彼女をいじめる自信など
これっぽっちもないのでした。
Bullying
"I have a request."
It was a pretty girl.
"Um, what is it?"
"Bull me."
She smiles like an angel.
"I want you to bully me."
I was having trouble answering.
"Why is that?"
"No way."
"No matter what you say."
"I want you to bully me."
"Even if you say you want to be bullied."
"I am troubled."
"I was in trouble too."
The girl is about to cry.
"You can play around!"
Her back looked lonely.
I felt like I had done something very bad.
"I understand."
I decided to prepare.
"I will try."
Then the angel turned around.
"Really?"
I felt like I could see even the white wings.
"I'm glad!"
But I didn't have the confidence to bully her.
